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番外編④ 僕の姉様

ルビアナの弟目線

 僕の名前はエド・アルトガル。

 アルトガル家の長男である。とはいっても正妻であるレイニー母様の子供ではなく、僕は父親の愛人であった母さんから生まれた不義の子なんだけれど。

 僕はそもそも、昔は自分の父親についてきちんと把握していなかった。

 母さんと二人暮らしをしていた。時々やってくるおじさんが父親だとは知っていたけれど、来るのは時々で、僕には関心も何もないような感じだった。貴族とかそんなものにかかわらずに生きていくと思っていた生活が変わったのは、五歳の時に母さんがなくなってからだ。

 母さんが死んで、どうしたらいいかわからなかった。放心状態になって、何を頼ればいいんだろうってわからなくて。そんな状況で父親は僕を引き取るといった。

 正直今まで僕に関心がなかった父親に引き取られる事には何とも言えない気分になった。しかもそこで父親が貴族だったこと、そして家庭があるのに母さんに手を出したこと、母さんが愛人で自分が不義の子だってはじめて知った。

 その時の気持ちといったら、何とも言い難いものだった。僕にとって父親は家族ではなく、たった一人の家族で会った母さんを失った喪失感といったらどうしようもないほどだった。

 ただ、悲しかった。母さんがいないことが。そして伯爵家に引き取られるということで、今までの生活もすべて失わなければならない事実に。父親に引き取られ、これまで親しくしていた人たちとも別れなければいけなかった。

 そしてその先で出会ったのが、父親の正妻であるレイニー・アルトガルと義姉である姉様―――ルビアナ・アルトガルとミカ・アルトガルだった。

 レイニーさんは、僕を嫌っていた。当たり前だろう。僕は浮気相手の子だから。そして同じ年のミカはそれに便乗して僕に意地悪をしてきた。そして使用人たちだって、あまり実家によらない父親よりもレイニーさんたちを慕っているのか、僕を良い目で見ていなかった。

 だけど、ルビアナ・アルトガルだけは、姉様だけは僕に優しかった。

 「エドね、よろしくね」「私の事は姉様でも、お姉様でもいいよ」「ふふ、弟ができて嬉しい」「あのね。お母様もミカの事嫌わないで。ちょっとお父様がああだから、お母様も悲しんでいるだけだから」「お母様優しいから。ミカもいい子だから。ちょっと整理がつくまで、待って」って。そんな風に笑いかけていた。

 姉様はレイニーさんに、僕と仲良くしてはダメだって言われても「エドは悪くないから。悪いのはお父様だよ」って笑顔で言い返していた。姉様はいつも楽しそうだった。姉様は、レイニーさんとミカが僕に意地悪する分だけ、僕を可愛がってくれた。

 姉様がいなかったらここにいてはいけないんじゃないかって、そんな思いに駆られていたと思う。姉様は、母さんが死んで居場所を失っていた僕にここにいていいんだよって笑ってくれた。

 レイニーさんはそんな姉様の態度に思うところがあったのか、「ごめんなさい」って言ってくれた。そしてそのあとは、「貴方も私の子供」ってそういって可愛がってくれた。姉様が言っていたようにレイニーさんは、父親が僕っていう愛人の子を連れてきて動揺してああいう態度になってしまっていたようだった。

 ミカは姉様の事大好きでたまらないのか、「お姉様を取らないで」って僕におこってきた。プライドが高そうなミカがそれだけ姉様を慕っていることからも、姉様が優しくて、良い姉なのだとわかった。僕も姉様と一緒に居たいからミカとは口喧嘩をした。そのうち、ミカとは喧嘩はするけど互いに認め合える関係みたいになっていた。

 ミカは僕にキツイ言葉だっていったりするけれども、僕が愛人の子だって色々言われた時、怒ってくれた。

 「私の弟に何をしているの」って。なんだかんだでミカは姉様の妹なのだと思った。優しくて家族を大事にしている姉様がいるからミカも、こうして愛人の子供だった僕を家族と認めてくれた。

 嬉しかった。

 母さんはなくなってしまって家族がいなくなったって思っていたけれど、確かに家族がいるっていう事実が。

 家族のために頑張ろうって思った。僕は一応長男だから家を継ぐことになったし、一生懸命、頑張りたいと思った。

 姉様は姉弟が仲良いってことを示すために、僕とミカにべったりだった。いや、うぬぼれじゃなければ姉様は僕とミカが大好きだ。可愛い可愛いっていつもいってくる。そういう態度だったから学園でも僕らが仲良し姉弟として知られていて、なんだかんだで平民として生活していた僕も貴族の学園に受け入れられて嬉しかった。

 姉様のおかげだった。そもそも姉様がいなければレイニーさんもミカも、僕に家族として接してくれるようにはならなかったかもしれない。姉様がいたから。姉様が、僕を弟として受け入れてくれて笑いかけてくれたから。だから僕は新しい家もさびしくなくて、姉様がそうして存在してくれたから僕の今はある。

 だから、僕は姉様が大好きだ。ミカもレイニーさんも好きだけど、一番大好きで感謝している家族は姉様だ。

 そんな姉様が学園内でも有名人なフィルベルト・アシュターと仲良くなって惚れられた時にはびっくりしたけど姉様だからと思った。優しくてなんだかんだで面白い姉様が人に好かれるのは当たり前である。姉様は綺麗だし。

 僕とミカもフィルベルト君とは仲良くなって、この人なら姉様を幸せにしてくれると思って応援していた。まぁ、姉様鈍感で全然気づいてなかったけど。

 まぁ、それからよくわかんない子がやってきてごたごたした後姉様とフィルベルト君は付き合いだしたんだけど。

 フィルベルト君は普通にかっこよくて憧れるから、そんな人が義兄になると思うと嬉しくて、姉様が幸せそうなのが嬉しくて。

 結婚式が楽しみだなーなんて、もう今から思っていたりする。



 とりあえず、僕は姉様が大好きだ。




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