ヴィーア・ノーヴィスのその後 下
ヴァルが意味不明な事を言い出して、私は今混乱している! 状況であった。
私は将来的にどういう仕事に就くかなど、決めておらず、勧誘されても困るという話を来ていたわけだが、何をどうして私が魔法師団なんていうエリート集団に入ることが決まっているのか。そもそも私はそんなもの了承した記憶は欠片もない。
驚愕の表情のまま、ヴァルを睨みつければヴァルはあっけからんとしたようにいった。
「父上と母上はヴィーの能力を知っているんだから、当たり前だろう?」
「な・に・が! 当たり前なの!?」
「ヴィーのそれだけの能力を廃らせておくなんてもったいないだろう? 安心してよ。ヴィーの両親には許可を得ているから」
「なんですとぉおおおお」
勝手に就職先が決まっていただと!? なんていう……、というか、そういえばヴァルは一応乙女ゲームで腹黒要員でもあった。
しかし私の影響もあってヴァルは孤独を抱えた系のキャラではなくなったはずだ。ヴァルは基本的にただの優しい美形に成り果てていたはずなのだが、まさか私の前で姿を現していなかっただけで、その部分がすくすくと成長していたとでもいうのか。
「父上と母上はヴィーを気に入っているから悪いようにはしないから安心しろ」
「そういう問題ではないよ! なんで勝手に私の将来決まっているのー!」
「ヴィーが放っておいたら卒業したらどこかいってしまうだろう? 俺はそれが嫌だったんでね」
そりゃそうだよ。学園でこれだけ目立ってしまったし、色々と勧誘とかうるさそうだから雲隠れしようと思っていたのに。
そういう行動は幼馴染ヴァルにはバレバレすぎることだったらしい。
でも、だからといっていつの間にか進路を決められているのはなんともまぁ、不服だ。
「それにヴィーは魔法を使うのが好きだろう? 目立ちたくないとか言いながら父上と母上の仕事に興味津々って感じだったし」
「……まぁ、それはそうだけど」
それはそうである。だって前世では魔法なんてものはなかった。前世の記憶があるからだろうか、前世ではなかった魔法というものに私は多大な興味がある。魔法を使うことは好きだ。隠密系の魔法を使うことも、楽しくて好きだ。
魔法師団なんてエリート集団の中に混ざって仕事をするなんて正直嫌だけど、魔法師団自体が嫌なわけではない。
魔法師団自体についてのみを言えば、興味がある。ヴァルの両親の事も私は尊敬している。
ヴァルは私の言葉に笑っていた。
まったく、私が目立ちたくない、でも魔法は好きだっていう思いをきちんと把握したうえで私の進路を勝手に決めている。
私の事をよく知っている幼馴染だからこそ、そういう選択をする。
それを見て、私は仕方ないなと思う。親にまで話を通されているし、私は目立つのは嫌でも魔法師団の事が嫌なわけではない。
それに何より、大切な幼馴染であるヴァルがそれを望んでいるのなら別にいいかなと思ったりもしていた。
「……いいよ、魔法師団、入ってあげる。でも途中で楽しくなかったらすぐやめるよ?」
「はは、流石ヴィー。魔法師団にそんな偉そうに入団する奴なんてほかにいないって」
「別にいいじゃんか。というか、ヴァルも魔法師団に入るんだよね?」
「ああ、卒業したら入る」
「そう」
正直エリート集団の中に一人で乗り込むのは、面倒だけれども、ヴァルがいるならまぁいいかと思った。
乙女ゲームの世界で攻略対象の一人であったヴァル。
私の影響でか、全然性格は違うようになっているけれども、貴族の令嬢たちにとって優良物件なことには変わりない。
この幼馴染は顔は私の鑑賞対象に入るぐらいの美形である。そんな美形な幼馴染を近くで観察するのも楽しいかもしれない。どうせ、私はもう目立ってしまっている。その事実はどうしようもないのだから。
でもヴァルってヒロインには全然関心なかったし、将来結婚するにしてもどういう人と結婚するのかなと興味があったりする。第一美形の子は美形なことが多いし、ヴァルの子供が生まれたら観察したら楽しそう。
え、私? 私は特に誰かと付き合うとか結婚するとか一切考えていないよ。そもそも自分の行動を制限されるのも、自由を奪われるのも嫌だしね。もし結婚するとしても私は自分がやりたいように、自分が望むままにすることを許してくれる人の元でなきゃ嫌だとは思っている。
私はノーヴィス家の跡取りってわけではないし、そもそもうちの家は貧乏男爵家でそんな対して価値もない家の娘に婚姻の話は来ないしねー。だから結婚しなくても特にいいかなーと思っている。
と、そんな甘い考えに走っていた私は知らなかった。後に魔法師団に入って、色々やらかした結果、いくつかの家から結婚の話が舞い込んでくることを。
そしてそれに対してヴァルに嘆きかけたら、いつの間にかヴァルが私の婚約者になっていることを。そのまままぁ、いいかとヴァルと結婚していくことを。
結局のところ、ルビ先輩と同様に外堀を埋められていくことを私は知らないまま、魔法師団に入団する事を決めてしまうのであった。
ヴィーはそうして副会長に外堀を埋められていきます。
フィルがルビアナの外堀を埋めていたのを見て副会長はああやればいいのかとやりました。