表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

番外編① とある一般生徒から見た彼ら

※初等部から学園に通う一般生徒から見たフィルとルビアナについて。

 フィルベルト・アシュター。

 ルビアナ・アルトガル。

 この由緒正しきアルハント学園において、その二人の生徒の名を知らないものはいないといえた。

 アシュター公爵家の跡取りであり、文武両道、天才、そんな言葉がよく似合う美しい男、それでいてこの学園の生徒会長を務めるカリスマ性にあふれる男、それがフィルベルト・アシュターである。アシュター様は初等部の頃よりカリスマ性を発揮し、誰よりも目立っていた人であった。

 一見自分勝手に見えるのだが、生徒の事を誰よりも考えており、それを知っているからこそ男の俺でもアシュター様には憧れる。

 そして、ルビアナ・アルトガル、ルビアナさんは初等部の頃よりアシュター様とは別の意味で有名だった。アルトガル伯爵家の長女である彼女は、一つ年下の弟と妹を驚くほどにかわいがっていた。最も有名とはいえ、弟と妹を異常に溺愛しているとささやかれていたぐらいで、ルビアナさんが今のように誰からも知られる存在になったのは中等部に上がってからだ。

 試験が行われた時、ルビアナさんはアシュター様よりも筆記試験が勝っていた。それには初等部からこの学園にいる俺たちは驚いたものである。筆記も実技も主席はアシュター様だと思い込んでいたから。

 そしてその試験の結果が張り出された日の事は正直在学生たちにとっては忘れられない事件になった。

 「俺に勝った奴はどいつだ」とルビアナさんに興味を持ったのだ。アシュター様は完璧な方で、それゆえにファンクラブまでその当時あったぐらいで、だけど女子生徒に一切関心のない人だった。だというのに、自分からルビアナさんに接触したのである。ある意味事件であった。

 それからアシュター様とルビアナさんは仲良くなった。ルビアナさんの前でのアシュター様は、普通の男だった。なんだろう、ルビアナさんの前では本当によく笑う。他の相手には近づかないのに、ルビアナさんには進んで話しかける。

 ああ、ルビアナさんの事好きなんだなって、そういうのが初等部から通う俺たちにはすぐわかった。

 ルビアナさんは優しい人だし、綺麗だ。そりゃあ、絶世の美形であるアシュター様と並ぶと見劣りはするかもしれないけれど、綺麗な顔立ちをしている。そういうルビアナさんの事良いなと思っていた生徒もいたのだが、アシュター様がルビアナさんに惚れた時点でルビアナさんに近づこうという勇者はいなくなった。

 ……ファンクラブの連中がルビアナさんに嫌がらせをしたときなんて、アシュター様は凄い切れてた。そしてルビアナさんに手を出させないようにしっかり忠告をしたらしい。それからファンクラブはルビアナさんに手を出さなくなり、むしろアシュター様の思いを実らせる! という方向に向かった。

 まぁ、あれだけアシュター様、ルビアナさんを溺愛しているし、他に目もいってないし当然といえば当然だろう。

 中等部の頃から、アシュター様とルビアナさんはそれはもう仲が良かった。ルビアナさんはいつの間にか恐れ多くもあの、アシュター様を「フィル」なんて愛称で呼ぶようになっていたし。

 「フィル、エドとミカが可愛すぎるの!」

 「あー、そうかそうか」

 「もうー、ちゃんと聞いてよ。あのね、あの二人は天使で――」

 そんな風にルビアナさんが弟と妹について話す時も、アシュター様は相槌を打っていた。中等部の頃からあの、アシュター様にそんな話題をふれるルビアナさんは凄すぎるとしか言いようがなかった。

 「ルビアナ、食堂行くぞ」

 「ん? 今日は約束があるから無理だよ」

 「……俺の誘いを断るのか」

 「また今度埋め合わせをするからさー、ごめんね」

 そんな会話も聞いたことがある。あの、アシュター様の誘いを笑って断れるルビアナさんはやっぱりすごい。

 まぁ、そんな感じでアシュター様とルビアナさんは仲良くやっているわけだが、同じクラスメイトとして観察していて思うが、ルビアナさん鈍感すぎだろ! とその一言しか言えない。

 あれだけアシュター様に話しかけられ、仲良くしていて、他にないぐらい笑いかけられて、なんで気づかないんだ! と思うほどルビアナさんは鈍感だった。何か理由があるのか知らないがアシュター様が自分を好きだなんて考えてもいないという能天気ぶりだった。というか、そんなことより弟と妹を幸せにしたいという感じだ。

 俺ら一般生徒なんて、いつアシュター様とルビアナさんがくっつくかなどとかけ事をしていた。アシュター様は尊敬できる人だし、ルビアナさんを本当に好きなのだから、くっつけばいいなーっと思っている生徒がほとんどだった。

 寧ろアシュター様の相手ならルビアナさん以外考えられないだろうというのが、ほとんどの一般生徒の総意であるといえた。

 高等部になってわけのわからない馬鹿メルト・アイルアが現れて、アシュター様とルビアナさんは忙しそうにしていた。ルビアナさんに悪女の汚名を着せるとか、馬鹿か! と思っていた。俺たちは。

 だってルビアナさんの事は俺ら、初等部から知っているし、どういう性格かわかっている。なんだかわけのわからない思い込みでアシュター様に付きまとっていたらしいし、なんだよ、こいつとなっていた。

 実践学習の時、馬鹿のせいでルビアナさんが死にかけて、正直馬鹿への殺意はマックスになっていた。

 まぁ、そのあと報告されたアシュター様とルビアナさんの交際開始宣言に、学園内はお祭り騒ぎになったわけだけど。

 その後に馬鹿が学園に謝りにきたり、あのリサ様のもとでお世話になったりしている話を聞いたけど、正直許せるものではない。が、一番迷惑こうむっているルビアナさんが許しているから俺らは何も言わなかった。

 「フィル……、ええっと近すぎない?」

 「別にいいだろ、俺ら婚約したんだし」

 「いやいや、そ、そういう問題ではなくてですね! 私の心臓がやばいから離れてよ」

 「却下」

 「うぅう、フィルの俺様!」

 ある日、食堂にやってきたらいちゃついているアシュター様とルビアナさんを見た。

 ああ、ルビアナさん顔真っ赤にしているよ。それ見てアシュター様は楽しそうにしている。

 甘い空気が漂っている。

 アシュター様があんな表情するのって本当ルビアナさんの前だけ、なんだよなと改めて思う。

 たった一人の、特別にだからこそ見せているんだと思う。

 なんか、そういうのうらやましいなぁ、俺も恋人ほしいなぁーなどとそんな思いに思わずなってしまった。





 でも、とりあえずアシュター様の恋実ってくれてよかったなとは本当に思う。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ