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第1話 全ての始まり

このお話はスレッドで冗談として出たコメントを、私が本気として解釈した結果生まれたお話です。

本来は、別のお話を書く予定でしたがそれはまたの機会とさせていただきます。

10話以内に完結させる予定ですので、短編より少し長いものとお考えください。

昔々ある所にニチャン王国という名の国がありました。


その国では、『掲示板』なるものが大流行しており、王国中の人間が活用しておりました。勿論王家の人間も例外ではありません。むしろ王家の人間は重度のネラーであり、その中でも姫は歴代の王の中でも重度のネラーとして有名でした。


特に姫が好んで閲覧していたのは小説家になろうのスレです。毎日のように日間のレビューを書き、新着レスの表示をクリックする生活を続けていましたが、そんな姫の生活をあまりよく思わない人間がいました。


その人物こそググ=レカス王の側近であるトー・チャンと呼ばれる男です。穏健な宰相『カー・チャン』とは違い、王宮で働く人間の中で最も厳しく誠実な男です。


何十年も前に、前国王が海の向こうにある国から一家そろって引き抜いた、等と言われており家族そろって王族に仕えています。今もレカス国王に仕え全幅の信頼を受けている為に、王国内の発言力は侮れません。


ですが、そのように言われているだけであって、本当の事は前国王とレカス王、トー・チャン、カー・チャン、そしてその息子であるタカシしか知りません。


そのような爛れた生活をする姫を快く思わないチャン宰相は姫に一言申すために部屋を訪れました。軽くノックを数回し、ドアの向こうにいる姫に話しかけました。


「姫様、少々よろしいでしょうか?」

「トー・チャン?いいわよ、入りさない」

「失礼します」


トー・チャンは王族の家臣として最低限の礼儀を忘れぬよう心に留め、ゆっくりと扉を開けました。しかし扉が開いたのはほんの数センチ、姫の部屋にはチェーンなど付いていないので、途中で何かに引っかかったようです。


「姫様!! ドアが開かないので少し手を貸していただけますか!? 」


トー・チャンは声を張り上げつつ、数センチの隙間から姫の部屋を盗み見ました。

するとそこには恐ろしい世界が広がっていました。太陽は真上まで昇ったというのに妙に暗い室内、カーテンの隙間から僅かに入ってくる光が照らすのは、エロゲーの箱ととても薄い本で作られた2つの塔。そしてジャージ姿でパソコンに向かう我が国のお姫様。


もし姫の母君が御存命ならばこの事態に嘆かれた事でしょう。などとチャンは考えていましたが、実を言うと死んだ姫の母も似たような生活を送っていましたが、その事実は姫の母気味とレカス王のみが知る事実です。


「今は手が離せないのよ、もう少し頑張ってみて」


姫は興味がなさそうにいいました。


「では姫様、パソコンで遊んでばかりいないで勉学に励むか、又はお外でお散歩は如何でしょうか?乗馬なども楽しいかと……」


チャンは扉越しに進言しますが、どっぷりとネットの世界にハマっている姫は一向に聞き入れようとしません。


「嫌よ、にじファンの二次創作禁止騒動でお祭り状態だし、今は何だか知らないけど作品を晒す作者がいっぱい出てきているのよ?そんな事している暇はないわ」


それだけ言うと姫は再び自分の世界に籠ってしまいました。


「姫?ここを開けてくだされ!!」

「トー・チャンはうるさいわねぇ……ヘッドホンはどこだったかな?」


姫は机の引き出しからヘッドホンを取り出し装着するとパソコンにつなぎ、大音量で電波ソングを聞き始めました。

完全に話を聞く気はないようです。


トー・チャンは諦めたように数歩後ずさると、ふらふらと何処かに行ってしまいました。

姫はと言うと、チャンの事はすぐさま記憶のかなたに消え去り、パソコンのディスプレイを死んだ魚のような目で見ていました。


「まずは今日の日間のレビューしなくちゃ、えっと……なのはで神様転生のside使いでニコポナデポ……未だにこんなのが一位なのね……」


姫は文句を言いつつも全22話を読み切り、レビューを書き始めました。慣れた様子でいつものように内容をまとめ、レビューを書き込みます。

数分ほど待ち新着レスの表示をクリック、レビューの反応を楽しみにしつつスレッドを見ると、そこには悲しい事実が待ちうけていました。


「嘘……でしょ? 」


なんと姫がレビューした作品が被っていたのです。しかもレビューの内容はほぼ同じだったのです。

それだけなら何の問題もなかったのですが、この次が問題です。

姫はレビューの最後に必ず『今回も俺のスコップが危なかった……』と一言添えるのですが、この時ばかりは違いました。


姫はうっかりタイプミスしてしまい、『今回も俺のスコッピが危なかった……』と書き込みをしてしまったのです。


こうなってからにはさあ大変、スレッドはwwwのコメントで溢れかえり、姫は笑いの的となりました。

普通の人であれば多少の恥ずかしい思いをしつつも、ちょwwwヤメロwwwと言ったコメントをするか、無視すれば良かったのでしょうが、姫は蝶よ花よと育てられた王族の人間であり、非常にプライドが高い人種です。初めて馬鹿にされた姫は怒りのあまり一つのコメントを書き込んでしまいました。


『引きこもってパソコンに向かってニヤニヤするしかねぇネラーどもが、人さまの上げ足とっていい気になってんじゃねぇぞ。王族舐めんなコラ』


燃料投下です。なろうスレは台風や世紀末の如く荒れに荒れ、後に『スコッピ王女の乱心』と呼ばれるようになりました。

この時、特定厨の暗躍により書き込みが姫本人によるものと判明したために、王族の代表としてググ=レカス王はネラーに謝罪、王族が謝罪するという異例の事態が起こってしまったのです。

姫は罰として半年ROMる事となり、パソコンは没収されました。これからは花嫁修業に明け暮れる毎日が続く事でしょう。


ちなみに、あだ名がスコッピ姫になってしまったのは言うまでもありません。




これにてお話は完結、なろうスレは平和を取り戻し、晒しとレビューがいつものように行われる日々が続き、姫は嫁入りの為に花嫁修業の日々を送りハッピーエンド、と思われるでしょうがお話はこれからが本番です。

これからは、スコッピ姫の苦痛と悲しみの日々を書き記していきたいと思います。




姫のあだ名がスコッピ姫と定着してから数カ月ほど経過したある日の事でした。

物覚えの良い姫は、花嫁修業をいとも簡単にこなしていき、とうとう花嫁修業も佳境を迎えておりました。

この知らせは、姫の花嫁修業指南役に任命されていたカー・チャン宰相から聞き、レカス国王は嬉しそうに顔を綻ばせます。今までネット漬の日々を送っていた姫が、やっと王族の責務を果たすべく動き始めたのです。ちょっとした騒動あったにせよ、結果としてよい方向に流れたので万々歳でしょう。


この時レカス王は一つ思いつきました。そして思い立ったが吉日と言わんばかりに、その日の務めを早々に終わらせ、宰相トー・チャンを呼びつけました。


「我が王よ、御呼びでしょうか? 」


トー・チャンはレカス国王の前で膝をつき、頭を垂れました。


「忙しい時に呼んですまなかったな、今日は久しぶりに娘と夕食を食べようと考えている。すまないがこの事を娘に伝えて置いてくれ。時間はそうだな……7時30分頃だ」


「承りました。早々に伝えて参りますのでしばしお待ちくだされ」


トー・チャンは礼をすると、王の前から去り姫の部屋へと急ぎました。

姫の部屋にはそれほど時間がかからずに到着し、いつものように数回ノックしました。


「姫様、少々よろしいでしょうか? トー・チャンでございます」

「トー・チャン? お入りなさい」


姫の許可が出たので、一言失礼します。と声をかけ部屋のドアを開けました。

するとそこには、トー・チャンが絶句するような光景が広がっていました。


開かれる事のなかったカーテンは開け放たれ部屋に明かりを取り込み、腐と負の遺産の2大巨塔は見る影もなく消え去っていました。


それだけではありません。万年ジャージ姿であった姫も今は正装であるドレスを見事に着こなしていました。髪も日の光が反射し煌めき、辺りは光り輝いているように見えます。


「おぉ……姫様……」


トー・チャンの瞳から思わず一筋の涙が流れ落ちました。濡れた皺だらけの頬を拭こうともせずにただ、涙を流し続けました。


「一体どうしたのですか? 泣くなんてあなたらしくない」


姫はほほ笑みを浮かべて言いました。姫の言葉がトー・チャンの心に響きます。きっと花嫁修業の成果なのでしょう。


「申し訳ございません、嬉しさのあまりつい……」

「変なトー・チャンですね、そんな事より何か用があってここに来たのでしょう?」


チャンは姫の言葉でここに来た理由を思いだしました。


「そうでした。レカス王が今日のご夕食は一緒に頂きたいと仰っておりました。夜の7時30分からでございます。お時間はよろしいでしょうか? 」

「分かりました、時間になりましたら向かいますので父にそうお伝えください」


姫は心の底から楽しそうに笑います。時間の取れない国王との食事は滅多に出来る事ではありません。


「承りました。それでは失礼します」


チャンはその場で一礼し、部屋のドアを開け去って行きました。

この時、姫は嬉しさのあまり小躍りをしてしまいましたが、この後に恐ろしい事実が明らかになる事は国王しか知りませんでした。


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