依頼人 風見章吾
元気にしているかね、淑。ミウミをいじめてはいないだろうね?
今回ファックスを送ったのは、依頼人から苦情が殺到していることを伝えようと思ってね。私が紹介した夢解の人から、もう大分経つのに何の連絡もないってね・・キミのことだから大方、面倒くさくて依頼を放り投げてるんだろ?
キミは腕がいいのに、動かないのがネックだ。働きたまえ淑!キミに、良い言葉をあげよう。
働かざる者食うべからず。
以上
野辺
「っんな言葉いらねぇよ!クソ教授!!!」
丸まったファックス原稿が、壁にぶち当たる。こうして、淑の事務所はどんどん汚れていくのだ。
「せめてゴミ箱に入れてくださいよ・・」
ミウミのため息は、今日も止まらない。
「大体、ここのことを勝手に紹介しやがって・・名誉棄損で訴えてやるよ!」
「広めてくれてるんですから、名誉なんて傷つけられてませんよ!」
ミウミの意見は最もだ。
「じゃあ、精神的ダメージを受けたとして訴えてやるよ」
ダメージを受けるような精神なんて持ってないくせに・・
「とにかく先生!さっさと働いてください!」
「まぁた家賃がどうのって言うんだろ?」
その言葉と同時に、ミウミは溜まりに溜まった家賃の請求書を淑に叩き付けた。
「先生、何か文句ありますか?」
「・・・すんません、働きます」
依頼人、風見章吾二十八歳。
J大学医学部を卒業。付属病院の外科に勤めるものの、現在は休職中。頭脳明晰であり、性格は温和。周りからの評判は上々。
内容は、彼が起きる時間が毎日遅いということ。彼は朝起こされるということはまずなかったが、今では家の者が起こしに行っても起きず、丸一日寝ていることもあるようだ。
単なる寝すぎで片付けたいところだが、家族は彼の寝言に心配しているようだ。