解放せよ
「酷い顔です、先生・・」
ミウミは目を伏せながら、うなされる和美の手を握った。
「行くぞ」
和美の左手を握った淑は、深く深呼吸した。
「苦しみの夢から、依頼人カズミを解放せよ」
淑がそう呟いた瞬間、二人は和美の横で気を失ったように倒れた。
二人が和美の夢へと突入した。
「不気味ですね・・」
霧に包まれる空間、ミウミは思わず両腕を抱く。
「いた」淑の目は、池の前にたたずむ和美が映った。
淑は、急にエンジンを入れたバイクのように飛び出す。ミウミも、慌ててその後を追う。
「・・しゅ・・く・・さん」
和美が、体を震わせながら走ってきた淑を見つめる。
見れば、和美の手を水面から現れた黒髪の女が握って離さない。
「た、助けて・・・淑・・さん」
搾り出すような彼女の声を聞いても、淑はその場に立ったまま。動こうとはしない。
「先生!何してるんですか!」
見兼ねたミウミも、声を荒げる。
「和美、本当にそいつのこと、知らないか?」
「し、知らないわよ!誰なの?!何であたしを苦しめるの?!」
パニック状態に陥っている。
「こいつは、あんたを苦しめたいわけじゃない。聞いてもらいたいんだよ」
淑の言葉が、少しだけ和美を冷静にする。恐れず、その目を女に向けた。
「聞いてやんな。ちゃんと聞けば、この夢からは解放される」
ミウミもいまいち状況が掴めないのか、首を傾げた。
「あ、あたしに、何か言いたいの?」
その声に、黒髪の女はニッコリと笑う。
「先生?」ミウミが淑を見る。
「黙って見てろ・・」
黒髪の女が、その手を和美の額にあてた。