ミウミの失敗
「随分変わった夢だなぁ・・」
平然とした顔つきで現れた淑は、淡々とした口調で話す。
「夢見る少年ってのは、時に臨場感溢れる夢を見るもんだ」
淑の目に、気絶した空知が入る。
「安心しろミウミ。これは、俺と入った夢と何ら変わりない。ただ・・テレビゲームのしすぎってのも命取りになるんだな、夢がこんなにリアルじゃ気絶すんのも無理ない」
淑にそう言われて、ミウミは心から安心した。
「たまにはいい上司を演じようかと、お前の家に様子を見に行ったらこれだ・・全く、面倒な部下だよ」
会わせる顔がない。
「答えろミウミ。お前、この夢に入ってどうしようと思ってたんだ?」
淑の静かな怒りが、ヒシヒシと伝わってくる。
「その・・ち、力になれるかなって・・思って・・」俯いたまま、声を震わす。
「なるほどな。で、力になった結果がこれか?お前、夢の中で気を失うことがどれほど危険か、忘れたのか?」
「お、覚えてます」
気を失うと、下手をすれば一生目覚めることができなくなる可能性がある。
「半端な力で他人の夢に入ればどうなるか、忘れたのか?」
言葉がでない。
「俺たち夢職は、夢に入ったら冷静さを保つ。己が夢に惑わされた状態でいたら、誤って人を殺すことになるんだよ」
「・・はい・・」
涙が止まらない。
「自分は無力じゃないと、証明したかったのか?」
痛いところを突かれた。
「私は・・」
「もし、そのために他人の夢に入ったとしたら、お前は無力以下。最低だ」
本音は・・本心は・・そのためだ。だから、言い返せなかった。
「ミウミ」
「・・はい・・」弱々しい声。
「今回のこと、深く反省しろ」
深く頷いた。
「二人を、夢から解放するっ」
淑の力強い光が、辺りを包む。
「夢解・・」