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夢解  作者:
15/22

手錠

 メイがデザインしたサングラスが、今日発売される。メイはイベントとして、そのサングラスが置かれたお店の、一日店員をすることになっていた。

「うわぁ!長蛇の列!」

 ミウミが目を丸くする。

「先生、サングラス欲しかったんですね?似合いますよ、きっと」

「んなわけねぇだろ。バカ」

 淑は目を尖らせ、にこやかに笑うメイを見つめる。

「じゃやっぱり、メイさん目当てなんですかぁ?」

「アホッ。お前、事務所帰るか?」

 淑がここにいる意図が、ミウミには全く分からなかった。

「凄い人気だなぁ・・メイさんって」

 男女問わず人気があるメイ。彼女の柔らかい笑顔と優しい声が、人を引きつけるのだろう。

「・・鳴った」

「へ?」点になったミウミの目に、走り出す淑が映る。

「ちょ、先生?!」

 人混みを掻き分け、後を追う。風のように速い淑を見逃すまいと、ミウミは必死だった。

「先生?」

 やっと立ち止まったとき、二人の視線の先にいたのは太った男だ。

「夢に出てきた男が現れたら、ワン切りしてもらうよう依頼人に頼んであったんだ」

「なるほどぉ・・で、あの人に会うんですか?」

「今行っても逃げられるか、逆上するかどっちかだろう・・しばらく様子を見る」

 メイの存在に浮かれて、仕事なんてそっちのけだと思いきや、ちゃんと淑は動いている。

 やっぱり、彼は凄い。

「あの人、何なんでしょう?」

「過剰なファン。見てりゃ分かる・・他のファンと違って、あの目つきはかなりヤバい」

 虚ろな目で、メイを食い入るように見る男。確かに、尋常ではなさそうだ。

「先生、何で分かるんですか?」

「似ているような目をした奴に、会ったことがある」

 ・・あの目は、貪欲さに満ちた目だ。

 自らの欲望のためだけに動いている証拠。

「分かってないと思うから言っとくが、今回は奴の夢に入るから」

「え?」そんな展開、考えていなかったと言わんばかりに、ミウミは目をギョッとさせた。

「分かりませんよ!何であの人の?メイさんじゃないんですか?」

「依頼人は、あの男の夢に縛られてるんだ」

 その一言は、ミウミの頭に「?」マークを増やした。



「前に、二つの夢が交差していた依頼があったろ?」

「和美ちゃん!」

 淑が頷く。

「強い思いによって、ああいうことが起きた。今回もそれと似ている。男の過剰な思いが、メイの夢と男の夢を交差させてんだ。けど、違うところが一つ」

 サングラスが入った袋を大事そうに抱えながら、男は漫画喫茶へと入って行った。

「違うところって?」

「夢ん中で、依頼人を縛ってやがる。しかも、意識があってやってる」

「・・よく分かりません・・」口をへの字にしたミウミが言う。

「夢の中で自分の意識があることは、よくある。コレは夢なんだと、奴は自覚してんだ」

「じゃ、分かっててメイさんを縛ってるんですか?」

 あぁ。と淑は小さく頷いた。

「多分、手錠で依頼人をつないでるんだろうな・・」

 ・・手錠?

「手錠って、何で分かるんですか?」

「・・ちょっとな・・」

 気になる返答だった。

「あぁ・・芸能人ってのにつられて依頼を受けたが、大失敗だなぁ」

 淑はため息混じりにそう言った。

「先生?」

 ミウミにはそれが、理解できなかった・・。

「覚悟しとけミウミ。厄介なことになりそうだ・・」

 冷たい風が、二人の間を吹きぬけていった。   

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