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夢解  作者:
12/22

夢でもいいから・・

「紗江さんも、一安心でしょうね」

 ミウミが紗江の墓石に手向けた花は、百合だ。

「あぁ」淑も手を合わせた。

「章吾さん、仕事にも復帰したみたいです。元気になって、本当によかった」

 ミウミの笑顔は、何の屈託もない。彼女の笑顔を見ると、わけもなく安心する。

「先生には、心に決めた人とかいないんですか?」

「いねぇよ」

 鼻で笑いながら答えた。

「憧れますよね、運命の人とか」

 そうでもない。と言う代わりに、淑は首をかしげた。

「紗江さん、章吾さんはもう大丈夫ですからねぇ!見守ってあげてください!」

「墓石に話し掛けるなんて、変わってるな?」

 呟いた淑に、ミウミは膨れっ面を向けた。

「紗江さんはちゃんと聞いててくれますよ」

「はいはい・・」力のない返事を返した。

 人は、死んだら終わりだ。幽霊なんて、俺は信じない。一度失ったら、戻ってくることなんてないんだ。

「お前、死んだ奴で会いたい奴いるか?」

「そうですねぇ・・祖父に会いたいです。たまに、夢にも出てきますよ」

 夢ねぇ・・それも、ミウミが抱く妄想だろう。

「先生は?」

「いねぇよ」

 即答した。

 夢でもいいから、会いたいと願った。けれども、現れることはなかった。

 思えば俺は、アイツが死んでから夢なんて見なくなった。

「先生?」

 不覚にも涙が零れそうになったから、慌てて背を向けた。

「帰るぞ」

「は・・はい」


 そのことに、ミウミは気づいただろうか・・。 

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