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夢解  作者:
10/22

夢で死ぬ

「大きな家ぇ・・」ミウミの開いた口が塞がらないのも無理はない。 

 立派な瓦屋根の依頼人宅は、大河ドラマにそのまま使えそうな家だ。

「依頼料、ふんだくってやろうかな・・」

 淑の呟きに、ミウミも否定はしなかった。

 インターホンを鳴らすと、着物姿の女性が現れた。

「依頼を受けました、夢解の氷壁淑です」

「お待ちしておりました。どうぞお入りください」

 丁寧な言葉に、なぜかミウミが少し緊張した。

「す、素敵なお屋敷ですね?」

「もう古くなっていますんで、恥ずかしいですわ」

 女性と話すミウミの不自然な笑みに、淑は思わず吹き出しそうになった。

 屋敷の中は、時代を感じるほど古く、置いてある骨董品の数々には相当な値がつくのだろうと思った。この空間は、まるで時間が止まっているようだ。

 客間に案内されると、高級さがあふれ出している和菓子を出された。淑は手を付けなかったが、ミウミはガキのように満面の笑みを見せながら食べている。

「依頼内容について、詳しく知りたいのですが」淑が話しを切り出した。

「はい、息子の章吾のことなんです。あの子、就職が決まってから何だかおかしくて・・ここ最近じゃ、それが酷いんです。特に、朝起こすなんてことはしたことないのに、今じゃ私が行っても全然だめなんです」

「疲れてるんじゃないんですか?」ミウミが、母親の様子を伺いながら尋ねる。

「始めは、医師として疲れているとは思っていたんですが、今は仕事も休職中ですし・・何だか私には、起きることを拒んでいるように見えるんです。前だって、何で起こしたんだって私に怒鳴ってきましたから・・」

 そんな子じゃなかった・・母親はそう言いたそうだった。

「今、いますか?」

「えぇ」心配そうな目を、母親は淑に向けた。

「そうですか・・それと、寝言が気になるようですが・・」

「は、はい・・。サエって言うんです」

 サエ?

「多分、亡くなった婚約者の名前です」

 何となく、起きない理由が淑には見えていた。

「母さん?」

 部屋のドアが開いた。

 立っていたのは、息子の章吾だ。長身で、ひ弱そうな体つきをしている。全身が真っ白で、体は、今にも倒れそうなくらい細い。

 ヤバいところまできている証拠が、淑の目に映る。

「お客さん?」

「えぇ。夢解の方たちよ」

 母親がそう言うと、章吾は血相を変えた。

「夢解って、夢に関する相談にのるとこ?」

 母親が、頷く。

「・・僕のこと相談してたの?」

「だって母さん、あなたが心配なの!サエさんの名前呼び続けているし、体もそんなに痩せちゃって・・」

「勝手なことすんなよ!!僕の体は僕が一番分かってるんだ!余計なお世話だっ」

 怒鳴り声は、近隣に響き渡る。

「・・おい、あんた本当に自分の体を分かってるのか?」

「せ、先生!」確実にキレている淑を、ミウミは必死になだめようとしている。

「僕は医者だぞ?!当然だ!」

「医者だから?関係ないね。・・断言してやるよ」

 母親も、ミウミも、この状況に動揺を隠せないでいた。

「あんたこのままじゃ、夢で死ぬぞ・・」

 

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