終幕…そして…
自分では犬に勝てないと悟ったリューヘーはある手段を講じる。
その手段とは?
嫌な夢をみた。あの犬をどうにかしないと近い未来正夢になるだろう。
リューヘーは部屋の隅で体育座りをして犬の恐怖に震えていた。
「どうしよう どうしよう どうし……×100」
あの犬はリューヘーより全ての面において優れている事は明らかだ。
リューヘーが勝る要素などどこにもない。
3日後に犬を追い出せる確率など50階のビルの屋上から針を
落として地面に置いたコップの中に入れるより難しいだろう。
そんなことを考えているうちにあることに気がついた。そしてひらめいた。
そもそも相手が人間ではないという事実。
「そうだ、家族が帰ってく来る前にあの犬を保健所につきだそう
家族には散歩中に逃げられてしまったとかなん
とかいってごまかせばいいや。フヒヒ」
今のリューヘーに手段を選んでいる余裕はなかった。
そしてすぐに行動に移す必要があった。しかしリューヘーは思い悩んだ。
「ほ、保健所……電話しないとだめなのか……電話なんてした事ないょ!」
生れてこのかた家族以外の人間と話した経験などほとんどないリューヘーに、
一度も会ったことのない人間とまともに会話することなどリューヘーにとって
苦痛以外のなにものでもない。
しかし、やらなければやられる。
リューヘーは覚悟を決め電話を手にとった。
電話帳で番号を調べ、一時間かけてようやく電話をかけることに成功した。
プルルル、ガチャ。
「ハイ、コチラホケンジョデス」
「は、はひ、もひもひ、あの……」
電話先の相手がまるで外国語をしゃべっているかのようで
リューヘーは怖くてしょうがなかった。
「ぼ、ぼ、僕の家で飼っている犬が狂犬病になっちゃって……ひ、ひきこもり…じゃなくてひきとってほしいんです。」
「ナルホド、キョウケンビョウデスカ、ワカリマシタ、アシタソチラニホゴシニイキマス。」
それから住所や犬について2、3言やり取りし、電話は終了したのだった。
「これで明日にはやつも終わりだ。僕は自分の手でこの楽園を死守したんだぁ!!」
電話での極度の緊張と疲れでリューヘーはそのまま床についた。
3日目、最終日。つまり家族が帰ってくる日でありそして
あの憎たらしい狂犬が保健所に連れて行かれる日だ。
保健所が来るのはお昼すぎだ。
家族が旅行から帰ってくるのは夕方頃だろう。
つまり僕が勝者となっている時であり、あの犬はもういない。
リューヘーは勝利を確信していた。
あとはここで引きこもっていればいいだけだ。
昼過ぎになりとうとうその時がやってきた。
玄関のチャイムが鳴った。窓から外を見ると白いワゴン車が止まっていた。
何も知らないあのバカ犬は素直にドアを開けたのだろう。
大きなカゴに入れられた犬の姿が見えた。
ふと、カゴの中の犬が僕の方を見た気がした。
気のせいだろうがその時犬は不適な笑みを浮かべていたようだった。
全てが収束し、家にはリューヘー一人になった。
もう邪魔するやつは誰もいない。
楽園は守られた。パソコンも嫁も、ポスターも、小説も…etc.
その後いつものように部屋の隅で体育座りをしながらフィギュアを愛でていた。
その時外でサイレンの音が聞こえた。この辺りで事件でもあったのだろうか。
サイレンの音はだんだん大きくなっていった。もうすぐそこまできている様だ。
リューヘーは窓から外を見た。そして驚愕した。
何台ものパトカーが家の前を包囲していた。ヘリも飛んでいた。
あまりの状況にリューヘーはパニックを起こし現実逃避のためベッドにもぐりこんだ。
玄関のチャイムが鳴らされ、ドアが叩かれた。
そして外から拡声器の音が聞こえた。
「リューヘーに告ぐ!ひきこもりの容疑で逮捕する!今すぐそこから出てきなさい!
君は完全に包囲されている。出てこなければこちらから突入する。繰り返す、今すぐそこからでてきなさい!」
「引きこもりの容疑?一体何の事?引きこもることが犯罪だなんておかしいじゃないか!
ぼくはただ静かにくらしたいだけなのに!!」
リューヘーは大量のフィギュアを抱え込んでベッドの中に包まって震えていた。
ケーサツが玄関のドアを破って突入してきた。
奴らが一段一段階段を上る音を聞きながら
リューヘーはなぜこんなことになったのかを考えた。
……あの犬だ。通報したのも奴の仕業だろう。
あの犬が諸悪の根源だ。あの犬のせいで全てがおしまいだ。
そうしてリューヘーは逮捕され、家にはだれもいなくなった……。
ご愛読ありがとうございました。
リューヘーシリーズは基本BADENDなので大団円を期待していた方すいません。
次回作にご期待ください。