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第一歩

 学園に到着して数日。続々と貴族の子弟がやってきて世界は東西……じゃなかった。富める者と貧しき者で分断された。

 と、大げさに言ってはいるが真実でもある。


「偉大なる三称号を持っているのはどんな方なのだろうな」

「ほんの少しだけ見たことがある。それはもう美しくて、気絶するかと思った」

「そんなに?」

「ああ」


 流石に王族は別のところにいるため、寮において頂点は公爵の子弟だ。

 しかしその中でも更に、リッチ公爵家と一般ピーポー公爵家に分かれており、裕福な方はどうやら噂の称号持ちの顔すら知っているらしい。


 金持ちは全く侮れない存在で、場合によっては面子のせいでやたらと出費が多い伯爵家が、こっそり援助を受けている子爵家に頭を上げられない……なんてこともあるらしい。

 それ故に金持ち公爵家は、この寮においてキングオブキング。神様だ。


「おはようございます! おはようございます! おはようございます!」


 一方、俺はペコペコ頭を下げて挨拶をするゴーレムだ。

 新入りなんてどこもこんなもんだし、貴族社会で一番下っ端の俺は、とりあえず全員に挨拶すればいいから寧ろ楽だ。

 これが変に権力争いしている家なら、お前が先に頭を下げろ。いいやお前が先だ。の争いが勃発するに違いない。


「おはようございます」


 おっと。大抵は軽い感じで挨拶を返してくれるか、極稀にガン無視してくる人間のどちらかなのに、足を止めてくれた人がいるぞ。

 きらっきらな銀の短髪。垂れ目な赤色の瞳。そばかす。ちょっとだけ背の高い、暖炉の前で丸まってる大型犬を連想させる男だ。


「ダリル・ストーンです。ストーン男爵家の次男になります」

「これはご丁寧に。ウィンター家の三男、ケイです」


 のんびり穏やかな声の持ち主、ダリル・ストーン……ふむ。ストーン男爵家というのは聞いたことがないから、俺とそれ程変わらない一般男爵家なのだろう。


「素晴らしい声ですね。地元じゃモテるでしょ?」

「モテ……そうでしょうか?」

「冬に毛布にくるまった時の安心感みたいなのを感じますね」

「頼りないということは?」

「いえ。結構体ががっしりされてるなーと」


 美声……というか聞き心地のいい声を褒める。

 もし声で生計を立てることができる世なら、売れっ子間違いなしだな。

 む。狭間の向こうから変な情報が送られてきたけどいまいち読み取れねえな。ま、いっか。


「失礼。それにほら、手を見れば一発ですよ」

「あ」


 ダリル君の手を触ったら即分かる。

 何度も何度も剣を振って、まめが潰れようが気にせず鍛え上げたのだろう。掌は異様に分厚く、積み重ねた修練を感じさせた。

 岩をも粉砕するロジャー兄上の掌で、頭を掴まれた俺が言うんだから間違いない。


「仲良くしてください」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」


 よし、これでダチをゲット。残り九十九人だ。うん無理。


「いやあ、それにしても偉大な称号を持ってる人たちが同年代とはね。ダリル君は詳しく知ってる?」


 まずは当たり障りのない会話だ。

 今現在、寮はこの話題で持ちきりのため、好きな食べ物と同レベルで会話の取っ掛かりになる。


「う、うん。まあ、少しだけ」


 が、ここでケイ君はファンブル。

 え? 何その反応?

 表面上は穏やかなダリル君だが、自称コミュ力お化けっつーか兄二人が独特過ぎてそうならざるを得なかった俺は、彼があんまり話したくない……という雰囲気を醸し出したのを感じた!

 じゃあ違う話題にしよっと。


「食堂に海の魚が出てきたのは驚いたなあ。うちは山の育ちだから肉は結構食べるんだけど、魚はあんまり大きいのがいないんだ」

「あ、僕もそうなんです。お魚って骨がいっぱいあるんだってびっくりしました」


 見ていますか二言くらいしか喋らない長兄、ポエマー次兄。

 貴方方のお陰で俺はこの寮でもやっていけそうです。


 ただ、食堂で魚が出てきて驚いたのはマジ。なんか態々魔法で保存した魚が送られているらしく、肉も食ったことがない柔らかいものだった。

 あ、やべ。思い出したら腹減ってきたし、なんなら今は昼……。


「食堂へご案内いたしましょうか?」

「ご一緒します」


 ちょっとおどけてダリル君を誘うと、同意を得られたので食堂に向かう。

 食堂はご立派の一言で、多くの長机が並び花瓶やらよくわからん調度品がある。その間を使用人の皆様方が歩いているので、邪魔にならないように端っこの席に座った。

 あとは偉大なる使用人の方が、ランチを運んできてくれる。


「いや、友達ができるか不安だったけど幸先がいいなあ」

「ぼ、僕もです」


 またしても当たり障りのないことを呟きながら、男兄弟に揉まれた故の男子限定センサーを発動! 女心は全く分からん代わりに、天才ケイの脳は避けるべき話題を導き出す!

 ちょっと自信がなさそうな言動。高貴な称号を話した時の困った顔。この二点から導き出される答えは……称号なんかが理由で家族の期待がなんちゃらかんちゃら。

 つまりこの類は避けるべし!


「学院は広すぎて迷子になりそうだよねー」

「うん。僕も心配してるんだ」


 よし! このままどんどんと交友関係を広げていくのだ!

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