探し出す者たち
イライジャ兄上との食事&お喋りは続く。
これがロジャー兄上なら、俺が一方的に喋りまくるトークショーになるところだが、今はポエムを解読しながらのやり取りだ。
「祈りし者達も極一部も騒がしい」
「光の灯教が?」
「世界救済の光を探しているらしい」
「それ、神じゃないっすか。極一部ってどの辺です?」
「天空だね」
「ふぁっ⁉ 教皇周辺⁉」
思わず飲んでた水を吹き出しそうになった!
うちは貧乏だから、お高いワインなんて飲めないのだ。
いやそれよりなんでいきなり教皇周辺が動いてんだよ! そこは順番的に考えて枢機卿とかが暗躍するところだろ⁉
「なんでそんなことに⁉」
「闇の中に包まれている。あるいはそれこそ、光の中……我々の知らないところで大きな力が観測されたのだろう。そうでなければ動くとは思えない者達が、隠しているつもりでも焦りが浮かび上がるほどに慌てる筈がない」
「つまり神の降臨は自体は結構確度が高い?」
「もしくはそれに匹敵し、類する存在がね」
「どんだけ騒ぎが漏れてる感じです?」
「次の王冠と一部強者は察知している筈」
「ちなみになんで兄上はそれを?」
「見ていれば分かるよ」
「あ、はい」
ロジャー兄上が分かりやすい強さなら、イライジャ兄上は得体が知れない強さだ。
俺みたいに、たまーに狭間の同胞が答えを漏らすんじゃなくて、理解できない観察力で正解に辿り着く。
幼少時の兄上が、人間の理解を越えたポエムを口にしてたのはこのためだ。
故にこそ俺の解読力を必要としない程に分かりやすくなってるのは奇跡である。
そんでもって、おお怖い。
必死こいて見つけ出した光の灯の神が、定命の視線じゃ全く別の存在なのに、気が付かないというパターンも考えられる。
しかも間違えた存在が悪党でも、超すんげー力を持っていたらそこに神の片鱗を勝手に作り、光の灯全てが歪んでしまうことがあるかもなあ。
逆に笑えるほどアホで扱いやすい存在を神と誤認するなら、世界にとっては救いになるかもしれないが。
教会の代表ですー。お客様の中に、世界を照らすような姿で人間寄りのお人好し神様はいませんかー?
しーん。
あ、ちょっとわかったぞ! 触手ちゃん達は神に擬態して信仰パワーを得ようとしているかも!
人間の俺に邪魔されて情けないな! わはははははは!
しかし元々の神は罪を背負っていないのか?
いいや背負っている。間違いなく。絶対に。
罪を生み出した罪が。
人が真に神の創造物なら、かつての統一戦争で、今の日常で、暗闇で、世界で罪を生み出している原因は神に一端がある。
つまり神とは無限の罪の化身だから、教会はそいつを探してる! なんて言ったらヤバいから口には出さん!
「それに王都も少々騒がしくなるね」
「い、陰謀が渦巻いてる……!」
「王都に三つの星がいるんだ。我慢しろという方が無理さ」
「気を付けた方がいい組織ってあります?」
「全てが大渦の中だ」
「早く帰ろう……」
かなり面倒臭そうなイライジャ兄上が肩を竦める。
そうっすよね。政治の中心地に、最も偉大な称号が集まってんだから、いろんな組織がアホみたいに活発化するだろう。
ま、イケメンボーイのケイ君は単なる一学生なので、偉い人の考えは分からんのです。
最悪が起こってもイライジャ兄上に泣きついたら、物理的な問題はでえじょうぶだ。
政治的な問題は知らん。存在しない。うん。
「イライジャ様……」
「うん?」
おっと。扉の向こうから使用人のじっちゃんの声が聞こえてきた。
なんかすんげえ戸惑ってる声だけどなんかあったんか?
「失礼いたします。市場に買い物をしに行っていた者が身なりのいい人間に、末弟のケイ様は婚約者がいるのかと尋ねられたらしく……」
「ごほっ⁉」
「兄上ー⁉」
冷静沈着で浮世離れしてるポエマーがむせた! 俺でも初めて見るレア映像とかどうなってんだ!
いやまだだ! 話の流れ的にどうしてもレアさんの実家を思い浮かべるけど、多分どっかの男爵家令嬢が婿養子を探してるだけだ!
「兄上、きっと僕の婿養子先が見つかったんですよ! 祝福してください!」
「ごほっごほっ。そ、それなら公式の使者や家紋入りの封蝋手紙を送ってくる。し、しかし、こうも直接動くか。ごほっ!」
多分、公的な手紙を残せない。使者も送れない立場……つまり当主ではなくその息子!
じゃあレアさんを邪魔に思ってる人間しか心当たりが無いんですけどー!
ポ、ポエマーをここまで慌てさせるとは、レアさんの兄貴、恐るべし!
多分俺らが想像してたより、よっぽどレアさんの兄貴が焦ってるんだろうなあ。
「私もまだまだ青いな……」
なんか自分を卑下してるけどアンタ、天上も天上の画策に気が付いてたし、なんならこの事態はあり得ないとは思いつつも予想できてたじゃん!
ちょっとレアさんの兄貴が、崖から転げ落ちてるレベルで爆走してるだけっすよ!
「何かきっかけがあったか……次の王冠とお会いしたかい?」
「ロジャー兄上と殴り合ってよく生きてましたねと言ったら、超機嫌よく爆笑しながら帰られました」
「兄弟揃ってお気に入りと映ったか……」
「兄上?」
「いや、やはりおかしい……誰かがいる」
スーっとポエマーの気配が鋭くなっていく。
どうも把握しているレアさんの兄貴と、今の行動にはかなり齟齬があるらしい。
つまり入れ知恵してる奴がいる!
まあ、そういうのは王都の館を預かってるポエマーのお仕事なので頑張ってください。
適性あり過ぎてヤバいネタを掴んでるけど、適材適所の範疇でしょ。多分。
「では自分はこれで!」
「ああ。また次の時間の流れで会おう」
飯も食い終わった。久しぶりのポエムも聞けた。
ならば俺は帰って走り込みだー!




