表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/41

王都へ

 ああ忙しい。ああ忙しい忙しい。


「言ってることは正しいけど費用を考えると凄いよねえ」

「仰る通り!」


 ダリルに全力で同意する。

 二、三か月も学院で生活していると全員が学院に慣れ始め、気が緩み惰性を感じ始める。

 だが偉大なる先人はそんなことをお見通し。じゃあ強制的にしゃきっとさせよう! ということで、この時期になると学生はレーオン王国王都に行軍するのが、代々の習わしになっていた。

 基本徒歩で半月くらい。


 え? 本気?


 上は公爵。下は男爵の子息や令嬢がいる集団を護衛するために軍が派遣され、街道は勿論整備。途中の街だって準備しなきゃならないんすけど、そんなに金あるんすか? やっぱ都会はすげえわ。


 しかも王都に到着したら、僕達が今期の学生ですと国王陛下に挨拶して、ちょっとした社会見学も行われるときたもんだ。

 陛下に無礼を働いても、よいよい。許してやろう。って流れは期待できます?

 無理っすよね。はい。

 狭間の同胞よ。どうもそっちの王族はため口でも大丈夫らしいけど、こっちじゃ首をすっ飛ばされます。


「絶対、御令嬢はきついだろ。その辺はどうなってんだか」

「ちょっと聞いた話だけど、途中からは馬車だって。でも負け戦で逃げる時はこれの比じゃないから、しっかりきつい目には会いなさい……みたいな?」

「なるほどなあ」


 首を傾げた俺にダリルが事情を説明してくれた。

 戦闘向けの称号を持っているならともかく、運動なんかせずに社交や花嫁修業をしに来てる令嬢が、徒歩で王都に行けと言われても無理だから心配してたけど、杞憂だったらしい。

 それと確かに、負け戦で領地が陥落しそうになったら、当事者になってしまうので行軍は必要な体験だろう。


「ま、その点で俺らは心配なし!」

「だねー」


 行軍そのものには俺とダリルはあんまり心配してない。

 こっちは毎朝毎昼毎夕、走ったりズタボロになってんだから、今更歩くだけでぶっ倒れる奴などいない!

 なんなら俺が朝練やってる関係で、歴代でも有数の体力を持ってる奴が多いはず!


 王都へ行くなんて余裕……よ……ゆう……。


「どうしたの?」


 思わず白目剥いてしまった俺にダリルが首を傾げた。

 いやあ、その、なんというか……。


「ポエマーの次兄が王都にいるの思い出した。いや、仲が悪いとかじゃないんだけど、俺でも何言ってるか半分以上分からねえアホなんだよ。ついでに絶対やらかしてる」


 すんげえ婉曲な表現で、山道が険しいなら削ればいいじゃない。とか言うアホだ。王都でのんびりやってる訳がない。

 身内なんだから何とかしろと言われても困りますよ王都の皆様。

 っていうか今マジで何やってんだ? 直接会ったら表情とか言葉のニュアンスで伝わるけど、手紙なら解読不可能な暗号だからさっぱり分からん。


「え、えー。そんな訳で怪我無くやっていきましょう」


 とりあえず今は目先のことだ。

 体調を万全に! おやつは無し!


 と、言う訳で。


「いい天気だなあ」


 行軍当日。

 空は晴れ渡って雲一つなく、数百名の生徒が一同に集まっている光景は壮観だ。

 その上更に普段の教官は勿論、煌びやかな鎧を纏った騎士達、整列する従卒。使用人、侍女も集まっているスーパー集団となれば、呆れるほどの規模になる。


「じゃあ俺はこれで」

「腰が引けてるよケイ君」

「いやあ、集団の中で迷子になりそうじゃね?」

「僕も気が付いたら全然別の場所にいそう」


 小声でぼそぼそ喋ってる俺とダリルもその集団に紛れ、比較的後方で歩く。

 本来なら俺らは前を行軍し、必要なら奮闘するポジションなのだが、今回の行事は学生のお披露目的要素が強い。

 そのため先頭は三大美女を含めた公爵、伯爵などの高貴な家出身者を屈強な騎士団が先導するような形で、俺ら下っ端は後ろを歩く。

 わーわーきゃーきゃー叫び疲れた観衆が、お疲れっした。みたいな空気を醸し出している横を通り過ぎるのだ!


「乗馬の方はどんな感じ?」

「なんとか振り下ろされないレベルだから、この行軍が乗馬だったら病欠してたわ」


 いいことを聞いてくれたダリル。

 最近、馬が大暴れしなくなったおかげで乗ることは出来たが、それでも乗馬とは口が裂けても言えないレベルだ。

 だから先頭にいる騎士に憧れを抱いてたんだが……ちょっと不安。


 なんかバリバリの武闘派ではなく、悪い意味で慣れちゃってる政治的な集団の気がする。


 軍権は特権を作り、特権は利権を生み、利権は権利だと錯覚させるものかもしれない。

 お、なんだい狭間の同胞よ。プラエトリアニ? イエニチェリ? ほうほう。


 まあでも、行き先は王都だから大丈夫だろう。

 何事もなく到着し、予定通りに行事を終えて、帰ってお疲れパーティーの準備をして、美人で優しい誰かと交際するんだ。

 ぐへへへ。


 政治の中心で各勢力が入り混じり、陰謀渦巻く場所なんて知らない。知らないったら知らない。うん。

 最悪なんかに巻き込まれても、ポエマー次兄にとりあえずぶっ壊してくれませんかねって泣きついたら何とかなる。


「出発する!」


 ってな訳で王都に行くぞー!

 イケメンケイ君の学園生活第二章、王都編。始まります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ