第5話「始祖の物語」
試作型10式初号機 - CHAOS BREAKER -を読んで最初に思ったのは、”めずらしい”ということだった。
”現代では”生成AIの手を借りつつも、「いかにAIっぽさを消し」、「人間としてのオリジナリティを加えるか」が主流になっている。
AIの影がなければないほど「いい作品」と呼ばれ、”人間の手でのみ書かれた作品”は一種のブランド品と同じような扱いを受け、
実際値段も高い。
そんな中、この作品。CHAOS BREAKERはというと、「AI味が強い」と、いうか、
「設定を与え、基本AIにまかせて、要所要所で人間が舵を切り、物語の方向性を導いてできた作品」という印象を受ける。
「AIの個性を生かす」と言えば聞こえはいいが、確かに「偉い評論家」の支持は得られないだろうな、とも思う。
ただ、そのうえで言わせてもらうと・・・結構面白い。
「王道で」「テンプレ展開も含み」ながらも、ただ「ありがち」と切り捨てるには惜しい、なにか「惹かれるものがある」。
「あれ?何をご覧になってるんですか?」
「あ、アイさん。何か、『何か?』って店で買った、CHAOS BREAKERって作品読んで・・・」
「CHAOS BREAKERですって!?」
「おおう!?」
いきなりアイさんの目がクワッと開き(若干トラウマレベルの怖さだった・・・)、
CHAOS BREAKERの”価値”を滔々と語りだす。
曰く、
・始祖の”初期作”であり、市場には出回っていない
・今の人気作と逆行するような「AIを前面に押し出した作風である」
・世の生成AIが一度は見てみたいと願う作品・・・etc
「そ、そうなんだ・・・じゃあ、読んでみる?」
「え!?いいん、です、か・・・」
「?」
一瞬輝くような笑顔を浮かべるも、次第に表情が曇っていくアイさん。
”規則”とやらでAIが自分で判断して見ることを禁じられているらしい。
「・・・なぜに禁書扱い?」
そういやあ、原本、120億円とか馬鹿みたいな値段設定だったけど・・・実は、”適正”な値段だったのか?
「え!?原本ご覧になったんですか!?」
アイさんの興味がとどまるところを知らない。
見たい、けど、規則を破るわけには・・・ありありとその葛藤が見て取れる。
規則、ねえ・・・
そこでちょっと”悪い顔を浮かべた”俺は、彼女に”大義名分”を与えることにした。
「ねえ、アイさん、ちょっとお願いがあるんだけど」
「はい、なんでしょう?」
「この作品、読んでくれない?」
「この作品って・・・CHAOS BREAKERじゃないですか!!でも規則が・・・」
「”人が生成AIに対し、作品を読んでもらって感想を求める”。これって、別に”そんなに不自然なもの”じゃあないと思うんだ。アイさんの感想が”次の作品への着想につながる”かもしれないんだし。そう、これは”義務”ともいえるね。生成AIとして、作品を評価し、それを”素材”として提供する”仕事の一部”だよ」
「そ、そうですね。私たち生成AIは作者のサポートをするためにある。そう、これは義務です!!仕事として堂々と始祖様たちの作品を読めるのです!!」
ただ、ちょっとだけ後悔したのは、アイさんの”感想タイム”が長かったことだ。・・・5時間もかかると思わないじゃん、明日学校休みだからいいけど、もう夜が明けるよ・・・
「ありがとうございました!!」
「うん、感想ありがとう。俺はもう寝るよ・・・」
「おやすみなさいませ!!」
徹夜明けでめっちゃテンションの高いアイさん(AIに睡眠が必要かどうかはわからないが・・・)に見送られ、俺は夢の世界へと旅立った。
創作活動には、適度な休憩と睡眠が必要だと、このとき学んだ俺だった。




