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第2話 対立と欲望

「星定学園には試練と対立、世界に摩擦を起こす、スピ星人オリグナが存在しています」


学級委員長遠藤マリアは淡々と告げた時、俺の中で一つの結論が確定した。

――これは絶対ろくな役目じゃない。


俺、高瀬洸一は《星定英雄譚》に所属させられ

オリグナ星、小佐田眼の暴走を止める役目を任されたらしい。


……はあ、無理だろ。

小佐田眼は見た目からして完全に危険だった。

ばきばきに仕上がった禿頭、近寄るだけで理性と体力が削られるタイプの威圧感だ。


次の瞬間――ドンッ!! 

廊下の壁が、拳一発で粉砕された。

「うわっ……!」

男子生徒たちが悲鳴を上げて、散り散りに逃げていく。

「ああ?お前ガンつけてんじゃねーよ」

「す、すみません。ぼ、僕は見てません!」

完全にアウトであり、空気が暴力へ一直線に傾いている。


「おい、小佐田」

現れたのは、真壁なるた。

スピ星人ドラグル使命は――欲望と支配。

欲望に忠実で、支配も同時に行い自分の力を否定されることを何より嫌う星人だ。


「ガンつけてんのは、テメーだろ」

「ああ?またなるたか、対立こそが正義だ。

喧嘩してナンボだろ」

「いいね。じゃあこっちも、欲望のままに行こうじゃないか」

……あ、これ完全に終わったやつだ。

俺はこの二人のトラブルを処理する係らしい。

成功確率は――0.00000000%。

見ているだけで精神エネルギーがごっそり削られていく。


「小佐田くん……」

柔らかな声が、張り詰めた殺気を裂いた。

現れたのは、楠木加那ーースピ星人プレリナ

使命は「壊れかけた心を繋ぎ直す」

小柄な体にひとつに結んだ髪に、淡いピンク色の瞳が揺らいでいる。痛みを癒し、治癒と再生をもたらす星。

《世界より先に人を守る存在》である。


「また手を怪我してますよ。今度はどうしたんですか?」

「く、楠木かなんでもねぇ、こっち来るな」

「どうしてですか。私は痛みを見て見ぬふりなんてできません」

――楠木加那が、バタンと音を立てて倒れた。

「っ!?」

俺たちは慌てて駆け寄り彼女を支えると思わず、小佐田と真壁を睨みつけた。

「お前たち、相手は女子生徒だぞ」

「なんもしてねぇよ、いつも勝手に倒れるんだよ

お前誰だ、目つきやべぇな」

小佐田の視線が俺を射抜くがすぐに逸らす。

「参戦者か?真壁と足してもいいぜ」


廊下全体を支配する馬鹿でかい声が響いた。

「どっけえええええええ!!」

神楽坂セラが馬のように迫ってくる。

「楠木加那が倒れてる、まずは保健室!勇者よ、行くぞ!」

「お、おう」

俺は楠木を抱え、神楽坂に引きずられるようにしてその場を離れた。

背後ではオリグナとドラグルの殺気が激しくぶつかり合っているのを無視した。

ああ、俺はもう世界を正解にする勇者とか以前にこの学園の空気だけで倒れそうだ。


*****


ベッドに横たわる楠木加那が、目を覚ました。


「……っ」

楠木の全身は異様だった。横たわる彼女の腕や首、脚に紫色の斑点が広がっている。それは発疹ではなく痛みそのものが形を持って浮かび上がっているようだ。


「楠木加那、あの二人を止めようとしてこんな重症を負うのか」

「…私は、痛みを無視できないんです」


神楽坂が苛立ったように息を吐く。

「そうだ、楠木加那は代わりに痛みを受け取っている。プレリナは壊れた心や身体を繋ぎ直す星人だ。けど本来ならオリグナの小佐田眼と、ドラグルの真壁なるたには、近づいてはいけない存在なんだ」

「どういうことだ?」

「二人に近づくと莫大な痛みと、エネルギーを取り込んでしまう」


神楽坂は淡々とだが重く語る。


「オリグナは対立と摩擦で生命力を維持する星。

ドラグルは欲望のままに支配する星。その両方のエネルギーは荒すぎる」

「楠木加那はプレリナ、癒しの星人にはとてもじゃないけど耐えられない」


加那はそれでも目を伏せない。


「それでも、それでも守りたいんです」

「二人のことを?」

「はい、私は二人の痛みを救いたいです」


神楽坂は、楠木に立ち入り禁止とゆう怒りを表している。


「だがな、星人の使命に逆らい続けたらいずれ

死ぬぞ、楠木加那」

「……分かっています」

楠木は、弱々しく微笑んだ。


「正直私も……どうすればいいのか分からなくなってきています。治癒する以前に私が倒れてしまうし、本当に心から救いたいのに」

「私たちが見つける、、」

「楠木加那、答えは俺たちが最善を尽くすよ。

だから今は見守っていてくれ」


少しだけ楠木の表情が和ぎ、真剣な眼差しで向き合っている。


「……そうですね。どんな形であれ、私が繋ぎ直します」


保健室を出ると、長い廊下を神楽坂と並んで歩いた。

「神楽坂」

「なんだ、勇者」

「協力してくれないか」


神楽坂はにやりと豪快に笑いここからの試練を楽しみにしているようだ。


「やっとその気になったか。もちろんだ。

世界は勇者の正解で回っているからな」

「だが、制御するんじゃない。全解放させるんだ」

「……全解放?」

「オグリナの摩擦は摩擦として起こさせる。

ドラグルの欲望は欲望のまま飛ばせる」

「正気か?勇者、ものすごく危険じゃないか」

「だからこそだ。あいつらの使命も使い方次第で栄光になる。抑え込むから壊れる」

「どうゆうことだ?」

「使命覚醒プロセス、オグリナとドラグルの居場所を準備する。アンフィックスで大活躍する場所を俺たちが用意するんだ」


神楽坂がぷはっと笑いその目は誇らしげだった。


「……っは、やっぱり高瀬くん!!

君は、勇者だな!!!」

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