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8.金色の瞳

 冬哉は、朝から具合が悪かった。今までに経験した事がない具合の悪さだ。一応医師なので、自己診断してみたが、この状態が何からくるのか、自分でもわからなかった。

 仕事を休み、昴へ連絡した。昴は、仕事が落ち着いたら抜け出して診察に来てくれると約束した。昴も冬哉の様子を聞いたが、はっきりと診断を下せなかった。

「とにかく、直接診るから、飲めるなら水分だけでも飲んで休んでるんだぞ。」

昴は電話を切った。

 とにかく気持ちが悪い。下痢や腹痛はないのに吐き気が続く。もう吐くものもない。吐きながらも水分を摂る。目がまわるし節々が痛い。だが発熱はなくむしろ低体温。これが患者なら即入院を言い渡す状態だ。冬哉はエルを呼んで病院へ連れて行ってもらおうかとも思ったが、昴を待ってみることにした。

 昼休みに昴は冬哉のマンションへ来てくれた。点滴を持参し、簡易の心電図なども持ってきていた。

 昴に可能な検査や処置を施したが、はっきりとした病名を言い渡せないでいた。

「お前も判断つかないか。」

冬哉もため息をつく。

「まあ、脱水症状が強いから、補水で少しはマシになるとは思うよ。でも、はっきりしないな、明日来られるなら病院に来いよ。検査しよう。採血は今取ったやつを出しておくから、夕方には感染かどうかくらいはわかるだろ。」

昴は採血したスピッツを数本カバンにしまう。

「冬哉、エルに連絡してないだろ?僕からしといたからな。お前は頼らなすぎだ。」

「連絡したのか?」

と、困った顔をする。

「何のためのエルだよ。お前の身体は特殊なんだ。病院にかかれるかも判断しにくい。エルの知識や判断は必要だよ。」

そうだ、自分は普通の人間ではない。改めて自分の不気味さを思い知る。

「悪いな,ありがとう。」

ため息混じりに、しおらしく礼を言う冬哉を見て、

「弱ってるお前を見るなんて、なかなかないからな。」

と、ニヤニヤ笑って点滴を追加する。

「あと、もう一本置いていくから自分でとりかえろよ。針、抜けるよな?」

昴は荷物を片付け終わると最後に冬哉の脈をとる。

「うん、少し落ち着いたな。」

と、安心した表情になり、立ち上がった。

「じゃあな、病院に戻るよ。何かあったらすぐ連絡しろよ。カルテ作っておくからな。明日、来いよ。」

と言い、部屋を後にした。

 少し吐き気が落ち着いた、とホッとしていた。小さい頃から丈夫で病気もほとんどした事がない。怪我くらいでしか病院に厄介になった事がなかった。点滴を自分で高く持ちながらトイレにいく。洗面で手を洗っていて鏡に映る自分にギョッとした。

「な、なんで?」

冬哉は目を疑った。瞳が金色なのだ。

 金色?まさか、覚醒し始めたのか?今更?幾つになったと思う!

 冬哉は激しく動揺した。もう覚醒しないまま、年を重ねるのだと思ってた。というより、覚醒なんてしたくない!いやだ!

 冬哉はもう一度鏡を覗き込む。瞳の色、顔色の悪さ、本当に覚醒なのか?ヴァンパイアになってしまうのか?この具合の悪さは覚醒に向かう前兆なのか?様々な考えが頭の中を駆け巡る。そしてへなへなと座り込んでしまった。

 ガチャガチャ。玄関を開ける音がする。エルだろうか?冬哉は落ち着きを取り戻し、その物音に声をかける。

「エルか?」

「冬哉、どこにいる?」

やはりエルだ。エルは声を頼りに洗面所に現れた。

「倒れたのか?」

と冬哉にかけより、抱き抱えた。

「ちょ、歩けるから!」

と抵抗してみたがエルは人狼。大人の男を軽々と抱え上げた。冬哉は諦め、ベッドまで運んでもらった。

「ごめん、エル。」

冬哉は恥ずかしそうに謝った。

「昴が連絡しなかったらお前、私に知らせないつもりだったのか?」

エルは静かに冬哉を責める。

「ごめん…。」

冬哉は謝るしかできなかった。

「お前…。」

冬哉の瞳をみて驚いた。

「覚醒、か。今?」

「どうなんだろう?こんな事、ばあちゃんたちもなかったよね?」

と質問した。

「ない。コーラルも珊瑚も、本当に何もなかった。お産の時の回復が早くて医者が驚いていたくらいだな。」

と、昔を思い出し懐かしそうな顔をする。

「じゃあ、これが覚醒なのかもわからないよね?」

「いや、コンスタンの時を思うと、お前の状態は、あの時と似ている。とにかくよくわからない具合の悪さ、鬱々とした精神状態、金色の瞳。低体温、顔色は青白く、脈は弱く、太陽が眩しく、昼間は外に出られなくなり、夜は冴えて眠れない。昼間寝てばかりだったな。」

たしかに、ステファンの記録にもそうあったが、年齢が違いすぎる。コンスタンの時代はハタチの時に覚醒していた。もしかして、ジギタリスのせいなのか?

 冬哉は医師らしく、頭の中で様々な方面から分析していた。

「まあ、時間が解決する。そのうちはっきりする。」

「覚醒を待て?やだよ!何とかしなきゃ。」

「冬哉。」

エルは、まるで子どものように不安に喘ぐ冬哉の肩をぐっと掴んだ。

「焦るな。そんなにすぐではない。だからその間に考えよう。とにかく、休める時に休むんだ。点滴は私が見ている。眠れ。昴には連絡しておく。」

エルに言われ、冬哉はすーっと緊張が解けるのを感じた。そして、うん、と頷き、眠り始めた。

 特殊な身体の冬哉にとって、人狼エルは、妖の父親も同然だ。エルに見守られている事で穏やかに眠っていた。

 冬哉が眠ったのをみて、昴へ連絡した。昴は勘のいい男だ。そうかもしれないと思っていた。そして仕事終わったらマンションへ行くと伝え仕事に戻った。

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