第38話 侵食される王都
城壁の向こうから、異様な足音が聞こえてきた。
何十人分もの、重く引きずるような音。それが、不規則に、しかし確実に近づいてくる。城門の見張り台から兵士が叫んだ。
「た、大変だ! 民衆が……民衆が襲ってくる!」
その声は恐怖に震えていた。俺は城壁へ駆け上がり、下を見下ろした瞬間、息が止まった。
数十人の人々が、揺れながら王宮へ向かって歩いてくる。いや、「歩く」というより「引きずられている」ようだった。足は地面を這い、腕はだらりと垂れ下がり、首は不自然な角度で揺れている。人間の動きではない、操り人形のような、死体のような。
だが、最も恐ろしいのは、その目だった。
完全に虚ろで、焦点が合っていない。瞳孔は開ききり、白目は濁り、まるで死体のようだ。しかし、胸は上下し、口からは浅い呼吸音が漏れている。生きている、確かに生きている。だが、中身が、魂が、ない。抜け殻、傀儡。
紫の瘴気が、彼らの体から立ち昇っている。腐った肉のような、吐き気を催す悪臭が風に乗って届いた。死の匂い、絶望の匂い。
理解より先に、吐き気が襲った。思わず口を押さえる。隣にいた兵士が、堪えきれずに嘔吐した。胃液の匂い、恐怖の匂い。
「攻撃するな! 剣を収めろ!」
セリア隊長の声が城壁に響き渡った。その声は力強いが、どこか必死さが滲んでいる。
「彼らは操られているだけだ! あれは、俺たちが守るべき民だ! 絶対に傷つけるな!」
兵士たちが動揺している。剣を握る手が震え、誰もが恐怖と責任の狭間で立ち竦んでいる。守るべき民か、襲ってくる敵か。判断が、できない。
だが、民衆は止まらない。
よろめきながら、転びながら、それでも立ち上がり、前へ前へと進んでくる。その目には何の感情もない。痛みも、恐怖も、何も。ただ、命令されたように、王宮へ、王宮へと。操られた人形、意志のない傀儡。
そして、ついに城門へ殺到した。
素手で、門を叩き始めた。
拳が門に叩きつけられ、鈍い音が響く。一度、二度、三度。止まらない。拳の皮が剥け、血が滲む。骨が見え始めても、止まらない。痛みを感じない、苦しみを知らない。
ある男は、頭を門に打ち付けている。額が裂け、血が顔を伝う。それでも止まらない。頭蓋骨が割れる音が聞こえ始めても。
ある女は、両手の指の骨が折れて曲がっているのに、それでも叩き続けている。白い骨が皮膚を突き破り、血と肉が混ざり合っている。それでも、止まらない。
「やめろ……やめてくれ……!」
城壁の上で、若い兵士が叫んだ。その声は悲痛で、涙に濡れていた。目の前にいるのは、昨日まで笑顔で挨拶してくれた隣人かもしれない。共に祭りで酒を飲んだ友人かもしれない。
そして、民衆の手から、紫の瘴気が溢れ出した。
不気味な音と共に、瘴気が門に這い上がる。触れた鉄が、目に見えて錆び始めた。木の部分は黒く腐り、崩れていく。まるで数百年が一瞬で過ぎたかのように、門が朽ちていく。時間が歪み、物質が崩壊する。瘴気による侵食、破壊の力。
「こ、このままでは、門が持たない!」
◇
玉座の間に戻ると、王が苦渋の表情で立ち尽くしていた。
その顔は蒼白で、額には脂汗が浮かんでいる。両手で玉座の肘掛けを握りしめ、その指は白く変色するほど力が込められていた。爪が肘掛けに食い込み、木が軋んでいる。
「陛下……」アリシア王女が、父である王に縋るように声をかける。
王は答えられなかった。ただ、唇を噛みしめ、目を閉じている。その瞼の奥で、何かが激しく葛藤しているのが見て取れた。
民を傷つけるか、それとも、王宮を、いや、娘を見捨てるか。
どちらを選んでも、王としては失格だ。民を守れず、家族も守れない。だが、選ばなければ、全てが失われる。二つに一つ、究極の選択。破滅か、破滅か。
その責任の重さが、王の肩に、恐ろしいほどの圧力となって圧し掛かっている。
「父上……」アリシアの声が震えた。「私は……私は構いません。民を……」
「黙りなさい、アリシア」
王の声は、かすれていた。それでも、父としての強さを振り絞るように、彼は娘を見つめた。声が震え、目が潤んでいる。
「お前を失うくらいなら……私は……」
その時だった。
「私に、やらせてください!」
か細いが、しかし強い決意を秘めた声が、玉座の間に響いた。
リナだった。
小さな体を震わせながら、それでも、前に進み出る。その足は震えている。顔は青ざめ、唇は血の気を失っている。それでも、その瞳には、迷いがなかった。決意だけがあった。
「リナ……?」
理解より先に、恐怖が胸を貫いた。やめろ、と叫びたかった。危険すぎる。あの瘴気に触れたら、命が、奪われる。
リナは両手を胸の前で組み、目を閉じた。その唇が、何かを囁いている。精霊への祈り、力を貸してほしいという、切実な願い。言葉が途切れ途切れになっている、震えている。
すると、彼女の体から、淡い金色の光が滲み出し始めた。
最初は小さな光だった。だが、それはすぐに広がり、彼女の全身を包み込む。そして、波紋のように、いや、慈愛に満ちた風のように、城門へ向かって流れていった。温かな光、希望の光。
金色の光が、城門を叩き続ける民衆を包み込む。
紫の瘴気と、金の光が、激しくぶつかり合った。
耳を刺すような鋭い音が響き、火花のような音が響く。光と闇が押し合い、せめぎ合い、互いを打ち消そうとする。瘴気が少しずつ薄まっていく。民衆の動きが、わずかに緩慢になる。効いている、光が、闇を押し返している。
しかし、それだけだった。
光は広がりすぎて、力が分散している。数十人もの人間を同時に浄化するには、あまりにも力が足りない。瘴気は薄まるが、消えない。民衆は止まらない。不十分だ、足りない。
「ダメ……広すぎる……力が……!」
リナの声が、苦痛に歪んだ。
額から大量の汗が流れ落ちる。顔は真っ青で、紫色に変色し始めている。膝が震え、今にも崩れ落ちそうだ。両手は痙攣し、指先から血の気が引いている。呼吸が浅く、意識が遠のいている。
精霊の力を引き出すことは、自分の魂を削ることだ。それを、これほど広範囲に使えば。
「リナ、やめろ!」
俺は彼女に駆け寄り、その肩を掴んだ。「無理だ、このままじゃ君が……!」
「で、でも……!」
リナは俺を見上げた。その目には涙が浮かんでいる。助けたい、救いたい、諦めたくない。その想いが、溢れている。
「このままじゃ……みんなが……!」
俺は歯を食いしばった。何か方法が、必ず、何か別の方法があるはずだ。考えろ、観測しろ、見つけ出せ。
俺は必死に、瘴気の流れを観察した。
観測者の力を最大限に引き出す。視界が研ぎ澄まされ、時間の流れがスローモーションになったように感じる。紫の霧の一筋一筋が、まるで生き物のように蠢いているのが見えた。流れが見える、動きが見える。全てが、明瞭に。
渦を巻く流れ、濃淡の差、そして。
「……待てよ」
俺は何かに気づいた。
民衆全員が、同じように侵されているわけではない。瘴気の濃度に、明確な差がある。ある者は全身が紫に染まっているが、ある者は薄い霧に包まれているだけだ。違いがある、パターンがある。
そして、特に濃い瘴気を纏っている者が、五人いる。
その五人から、まるで煙のように、瘴気が広がり、周囲の人々へと伝播している。まるで、感染源のように。中心点、起点。
「そうか……!」
俺は叫んだ。
「セリア隊長! 全員を浄化する必要はない! 瘴気が特に濃い奴らがいる、そいつらが汚染源だ! そいつらを浄化すれば、他の連中も解放されるはずだ!」
セリアが、鋭い眼光で俺を見た。一瞬の躊躇もなく、彼女は理解し、決断した。戦場の勘、指揮官の判断。即座に、動く。
「全隊!」
その声は、戦場を統べる指揮官のものだった。
「陣形変更! 盾を前に、槍を後ろに! 汚染源を孤立させろ! リナ殿の力を一点集中させるぞ!」
騎士たちが一斉に動き出した。
鎧が鳴り、重い盾を構え、隊列を組み、民衆の群れの中へと突入していく。操られた民衆を傷つけないように、しかし確実に押し分け、汚染源となっている五人を分断していく。精密な動き、訓練された技術。
だが、その過程は、凄惨だった。
「うわああああっ!」
一人の騎士が、瘴気に触れて悲鳴を上げた。紫の霧が鎧の隙間から侵入し、肌に触れた瞬間、彼の体が硬直した。目が見開かれ、白目を剥き、泡を吹いて、地面に倒れる。痙攣している、意識がない。
「クソッ! 引け、引け!」
別の騎士が、倒れた仲間の足を掴んで引きずる。その騎士の手も、わずかに瘴気に触れて紫色に染まり始めている。それでも、彼は歯を食いしばり、仲間を後方へ運んだ。そして、すぐに前線へ戻っていく。任務がある、民を救う。
「リナ! 今だ! 孤立した汚染源、あの男を狙え!」
セリアの号令が響いた。
リナは、荒い息を整え、両手を前に突き出した。その手は激しく震えている。血管が浮き出て、爪が白く変色している。限界が近い、それでも、諦めない。
「精霊よ……力を……!」
彼女の体から、先ほどとは比べ物にならないほど強烈な金色の光が噴き出した。
光は一点に収束し、孤立させられた一人の男、全身が濃い紫の瘴気に包まれた汚染源へと、まるで光の槍のように突き進んだ。鋭く、速く、正確に。
光が、男を包み込んだ。
激しい音が響く。
金色の光と紫の瘴気が、まるで生き物のように絡み合い、ぶつかり合い、せめぎ合う。光が瘴気を削り、瘴気が光を飲み込もうとする。だが、リナの光は諦めない。徐々に、徐々に、紫を押し返していく。浄化の力、生命の輝き。
そして。
瘴気が、悲鳴のような音を立てて霧散した。闇が光に飲まれ、消えていく。まるで朝日に照らされた霧のように。希望の光が、絶望を消し去る。
男の体から、紫色が消えた。
虚ろだった目に、光が戻った。焦点が合い、表情が変わる。そして。
「う……あ……」
男は、糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。解放された、操りから、自由になった。
「よし! うまくいった!」セリアが叫んだ。「次だ! 次の汚染源を孤立させろ! リナ殿、準備はいいか!」
周囲の民衆からも、瘴気が薄まり始めている。汚染源が浄化されたことで、そこから広がっていた瘴気も弱まったのだ。連鎖が断たれた、感染が止まった。
「こ、ここは……?」
正気を取り戻した男が、混乱したように周囲を見回す。記憶がない、自分が何をしていたのか、わからない。両手を見て、血だらけの拳に気づき、恐怖に顔を歪める。何をしたのか、誰を傷つけたのか。
「俺は……何を……」
だが、俺はそれどころではなかった。
リナを見た瞬間、心臓が凍りついた。
彼女の顔は、死人のように蒼白だった。額だけでなく、全身から汗が噴き出している。唇は紫色に変色し、歯が鳴っている。膝が完全に笑っていて、立っているのではなく、ただ倒れないように踏ん張っているだけだ。生命力が尽きかけている。
精霊の力を、これほど強く引き出すことは、魂を、直接削り取ることだ。
一人浄化するたびに、彼女の命が縮んでいく。
「リナ! もうやめろ!」
俺は彼女に駆け寄り、その体を抱きかかえた。その体は、驚くほど軽く、冷たかった。まるで氷のように。汗でびっしょりと濡れ、震えが止まらない。命が、消えかけている。
「だ、大丈夫……」
リナは、震える唇で笑おうとした。
だが、笑えていなかった。顔が苦痛に歪み、目から涙が溢れている。体が悲鳴を上げている、魂が悲鳴を上げている。
「あと……四人……みんなを……助けないと……」
「君が死んだら意味がないだろう!」
俺は叫んでいた。感情が抑えきれない。恐怖と怒りが混ざり合い、声が震える。リナを失いたくない、こんな形で。
「もういい、俺が、俺の力を使う!」
その時だった。
王宮の地下深くから、地鳴りのような轟音が響き渡った。
建物全体が激しく揺れる。まるで巨大な地震のように。シャンデリアが左右に大きく揺れ、鎖が悲鳴を上げる。窓ガラスが震え、ヒビが入り始める。崩壊の予兆、破滅の前触れ。
「な、何だ!?」
騎士たちが、バランスを崩して壁に手をつく。
そして、玉座の間の床が、音を立てて亀裂を走らせた。
大理石が砕け、破片が飛び散る。亀裂は瞬く間に広がり、床の中央が大きく陥没する。深い闇の穴、地獄への入口。
その穴から、何かが現れた。
巨大な、紫色の触手だった。
太さは人間の胴体ほどもある。長さは、見えない。どこまで続いているのかわからない。表面は粘液に覆われ、光っている。そして、その全身から濃密な紫の瘴気が立ち昇り、触れたものを腐らせていく。生物とも無機物ともつかない異形、災厄の具現。
「なんだ、あれは!?」
兵士の一人が、恐怖に声を震わせて叫んだ。
触手は、まるで意志を持っているかのように、ゆっくりと空中でうねった。そして、鞭のように、壁へ叩きつけられた。
石の壁が、まるで紙のように砕け散った。破片が飛び散り、兵士たちが悲鳴を上げて避ける。触手が通った跡には、紫の瘴気が残り、音を立てて石を腐食させている。破壊の力、圧倒的な暴力。
「攻撃しろ! あれを止めろ!」
セリアの命令で、兵士たちが一斉に斬りかかった。
剣が、触手に叩き込まれる。
金属音が響いた。
剣が、弾かれた。触手の表面は、鋼鉄よりも硬い。刃が立たない。それどころか、触れた剣が紫色に染まり、溶け始めた。瘴気による侵食、武器すら無力化する。
「槍だ! 槍で突け!」
槍兵が突進し、全力で、槍を突き立てる。
槍の穂先が、根元から折れた。触手には、傷一つついていない。何も効かない、絶望的な硬度。
そして、触手がうねり、槍兵を薙ぎ払った。
「うわああああっ!」
兵士たちが吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。鎧が潰れ、骨が折れる音が響いた。悲鳴、鮮血、死の匂い。
「くそっ、このままでは……!」
王が、蒼白な顔で叫んだ。「全員、退避だ! 王宮を……」
その時だった。
触手が、まるで獲物を見つけたかのように、動きを止めた。
そして、アリシア王女の方へ、ゆっくりと向きを変えた。狙いを定めた、明確な殺意。
アリシアの顔から、血の気が引いた。足が竦み、動けない。恐怖が体を縛る、死が、迫る。
触手が、飛んだ。
音速で、鞭のように、明確な殺意を持って。
「殿下ァァァッ!」
セリアが、咄嗟に王女の体を突き飛ばした。そして、自分が前に出る。身を挺して、騎士として。
だが、触手は、二人をまとめて捕らえた。
蛇のように巻きつく。セリアの体を、アリシアの体を、一つに縛り上げる。逃がさない、殺す。
「ぐっ……!」
セリアが苦痛に顔を歪める。鎧が、軋む音を立てている。金属が悲鳴を上げる。
「いやっ……離して……!」
アリシアが悲鳴を上げた。
締め付けが、さらに強くなる。
セリアの鎧が、耐え切れずに歪み始めた。骨が軋み、呼吸ができない。アリシアの顔が青ざめ、唇が紫色に変わっていく。窒息、死の直前。
「離せッ! 殿下を離せッ!」
兵士たちが必死に斬りかかる。
だが、剣は弾かれ、槍は折れ、魔法の炎も瘴気に飲まれて消える。何をしても、触手には傷一つつかない。絶望、無力。
締め付けが、さらに強くなった。
セリアの鎧が、ついに割れ始めた。限界が近い、二人とも、死ぬ。
俺は拳を握りしめた。
力が、震えている。使うしかないのか、残り一回になっても、消えることになっても。
使うしかないのか。時間を巻き戻す力を。
だが、使えば、残りは一回だけになる。そして、次に使えば、俺は消える。存在そのものが、消滅する。
リナと、永遠に離れ離れになる。
それでも。
「ユウ」
リナの声が、聞こえた。
俺は彼女を見た。その瞳には、恐怖があった。震えがあった。だが、それ以上に、強い決意が宿っていた。諦めない意志、共に戦う覚悟。
「一緒に……戦おう」
その声は、震えていた。唇は血の気を失い、体は限界を超えている。それでも、彼女は諦めていなかった。立っている、俺を見ている。
「私の精霊の力と……ユウの観測者の力を……合わせれば……」
二つの力を、一つに。
理解より先に、恐怖と希望が同時に胸を満たした。可能性と絶望が混ざり合う。
「待て、それじゃあ君も……!」
俺は叫んでいた。
彼女も、傷つく。消耗する。最悪の場合、死ぬ。
そんなことは、絶対に。
「いいの」
リナは、震える唇で微笑んだ。
涙が頬を伝っている。顔は蒼白で、今にも倒れそうだ。それでも、彼女は笑っていた。本当に笑っていた。
「ユウだけに……こんな重荷を……背負わせたくない」
その言葉が、胸に突き刺さった。
痛い、苦しい、心臓が握り潰されそうだ。リナ、リナ。
だが。
セリアの鎧が、さらに大きく軋んだ。
「がはっ……!」
セリアが血を吐いた。鎧の隙間から、赤い血が滴り落ちる。内臓が潰れている、骨が折れている。
「セリア……!」
アリシア王女の声は、もう声にならない。息ができない、顔は完全に青ざめ、唇は紫色に変色している。瞳孔が開き、意識が遠のいていく。あと数秒で死ぬ。
死が、目の前に迫っている。
選択の時間は、ない。
今、決めなければ。動かなければ、全てが、失われる。
俺は、歯を食いしばり、決意した。
「……分かった」
その声は、震えていた。恐怖と覚悟が、混ざり合っている。生きるか死ぬか、消えるか残るか。
「でも、リナ、これが最後になるかもしれない」
最後の力、最後の戦い。そして、最後の選択。
俺たちは、生き残れないかもしれない。
それでも。
俺は、リナの手を握った。
その手は、驚くほど冷たかった。小さく、震えている。だが、確かに、力強く握り返してくれた。温もりがある、命がある。
「大丈夫……一緒なら……怖くない」
リナが囁いた。
俺も、頷いた。
「ああ……一緒なら」
二つの力を、一つに。
時間を操る力と、精霊を操る力。
相反する二つの力が融合する時、何が起きるのか、誰も知らない。
俺たちも、知らない。
でも、もう、やるしかない。
わからない。怖い。でも、やるしかない。
これが――最後の希望。
そして、光が爆ぜた。




