てんしのぱんつ
クリスマスおめでとうございます。
なにかいいクリスマスプレゼントができないかなと思ってお話をひとつ書きました。もしよろこんでいただけたらとてもうれしいです。
みなさんはてんしさまをしっていますか?
てんしさまはてんごくでかみさまにおつかえし、わたくしたちにんげんをやさしくみまもってくれています。
ではどのようなおすがたをしていらっしゃるのでしょうか。
きょうかいにいったときにかべやてんじょうにえがかれたかいがやすてんどぐらす、びじゅつかんにてんじされているかいがやえほんなどでみたことがあるひともいるのではないでしょうか。ごほんにんにおあいしたひとはさすがにいませんよね。
どんなふくをきておられましたか?ゆったりとしたしろいふくをきていらっしゃったりしますよね、でもなかにはまっぱだかでぱんつもはいていないこどものてんしさまがおられるのをみたことはありませんか。なぜぱんつをはいていないのでしょうか。
じつはわたしはそのひみつをしってしまったのです。だれかにいいたくていいたくてたまらないのでここにかくことにします。
なぜぱんつをはいていないてんしさまがいらっしゃるのか?それにはこんなわけがあったのです。このおはなしをよんでくださればきっとわかるとおもいますよ。でははじめましょう。
きょうはとってもよいてんき。くものうえではてんしのてんちゃんがおせんたくをしています。
てんちゃんとってもよいこども、せっせせっせとせんたくします。せんたくものは、はんけち13まい、しゃつが9まい、くつした12そく、そしてぱんつが1まいです。よくもこんなにたまったものです。いつもはまりあさまがおせんたくをしてくれるのですがたまにはおてつだいをしなくちゃとがんばっているのでした。
いっしょけんめいにはたらいてやっとぜんぶあらいおわりました。さあて、こんどはほすのですが、てんちゃんはせがひくいのでおおきなかしのきのえだにかけてあるものほしざおにはてがとどきません。どんなにてをのばしてもぜんぜんとどきそうにないものほしざおをしばらくみておりましたが、てんちゃんはまったくもってこまったようすはありませんでした。なぜなら、そう、てんちゃんはてんしだからです。てんちゃんのせなかにはそれはちいさなしろいつばさがはえておりました、そのつばさをぱたぱたとはばたかせるとすうぅとてんちゃんはうかびあがります。これでものほしざおにとどきます。せんたくものをいちまいいずつていねいにほしてゆきます。あめのしんぱいはいりません、なぜってここはてんごくだからです。てんごくはくものうえにあるのでいつもおひさまきらきらいいてんき、あめなんかまったくふることがありません。たとえちじょうがおおあめでもてんごくにはひとつぶもあめがふることはないのです。そしてついにさいごの一まい、ぱんつをほしてとうとうおせんたくがおわりました。
「やったぞ、おせんたくをやりとげたぞ」
てんちゃんがんばったね、とほめるようにそよかぜさんがふいてきました。てんちゃんはうれしくなってくるくるとこおどりしましたが、つかれがでたのかきゅうにねむたくなってしまいました。ものほしざおのかかっているかしのきのねもとにもたれかかってすわるとすぐにあたまがこっくりこっくりとしはじめました。やわらかなそよかぜがてんちゃんのあたまのうえのわっかのあなからふきこんできてふんわりとしたかみのけをまるでこもりうたをうたうようにやさしくなぜてくれました。てんごくはいつもはるでいちばんここちのよいひよりがいちねんじゅうつづくのです。てんちゃんはすっかりあんしんしてこころおだやかにぐっすりとねむりこんでしまいました。
でも、てんちゃんがねむっているあいだにそよかぜさんがせんたくものにちょっといたずらをししてしまいました。すこしつめたいかぜがふいてせなかがぞくっとしたてんちゃんがめをさますと、いままさにてんちゃんのぱんつがそよかぜさんにふきあげられたかとおもうとひらひらとまいおちてゆきました。そしてなんとまんのわるいことか、そこにはちょうどくものきれめがあって、それにむけてひらひらとおちてゆくとくものきれめへとてんちゃんのぱんつはきえてゆきました。
てんちゃんはびっくりしてとびおきるとあわててぱんつをつかまえようとしましたがもうあとのまつりです。ぱんつはくものきれめからわたくしたちのすむげかいへひらひらとまいおちてゆき、もうすっかりちいさくなっていました、それはまるでしろいうめのはなのちいさなはなびらがまいおちるようでした。
「たいへんだぁ」
てんちゃんはおおあわてです。だってかみさまにしられたらおおめだまをくらうにきまってます。いそいでまわりのくもをかきあつめるとおべんとうばこにつめこみました。てんごくのくもはわたがしでできているのです。そのわたがしをてんちゃんはおべんとうにもっていくことにしたのでした。いつもまわりにわたがしがあるなんててんごくってとってもべんりですね。
これでおなかがすいてもだいじょうぶ、おべんとうをもってじゅんびばんたんです。てんちゃんはさっそくげかいへぱんつをさがしにゆくことにしました。てんごくのそとにでたことのないてんちゃんにとってそれはだいぼうけんのはじまりです。
「おぉい、ぼくのぱんつやーい」
かみさまにみつからないようにあまりおおごえはだせません。でもぱんつにきこえるようにとてんちゃんはよばわりました。そしてたどりついたのはほっきょくでした。
「おお、さむさむ」
ほっきょくにはじめてきたてんちゃんはふるえあがりそのあまりのさむさにびっくりしてしまいました。そこでじぶんがふくもなにもきていないまっぱだかなことにきがつきました。だって、ぱんつをさがすためのぼうけんなのですからかんじんのぱんつがないのです。
「はやくぱんつをみつけてはかなきゃ」
てんちゃんはぱんつをみつけようといっしょけんめいにめをこらしました。でもまわりはまっしろでなにもみえません。いえいえ、まわりがすっかりまっしろなこおりにかこまれていたのです。みわたしてもしろいこおりしかみえないのでなにもみえないようにさっかくしただけなのです。でもほっきょくにくるのがはじめてのてんちゃんはそんなことがわかりませんからびっくりぎょうてんしてしまいました。
「たいへんだぁ、まっくらじゃないのに、なんにもみえないぞ」
てんちゃんがあせっているとそこへあざらしぼうやのあっちゃんがやってきました。
「おうい、あざらしくん、こんにちは、ぼくはてんしのてんちゃんだよ、ぼくのしろいぱんつをみなかったかい、このあたりにおちてきたはずなんだけど」
てんちゃんはあっちゃんにたずねました。
「こんにちは、ぼくはあざらしのあっちゃんだよ。しろいぱんつだって?」
あっちゃんはまわりをみわたしながら
「ここにはしろいいろしかないんだからしろいぱんつなんてもしあったとしてもみつかりはしないよ」
となんだかこむつかしいことをいいました。
てんちゃんはあたりをみまわしました、たしかにまわりはまっしろなこおりしかありません。でもてんごくだってまわりはまっしろなくもだらけなのです、それでもぱんつをみつけだすときにこまったことはありません。こおりのうえだってぱんつはみつけられるとてんちゃんはおもいました。するとそこへしろくまのしろくんがむこうのほうからちかづいてきました。
「じゃ、さよなら」
しろくんをみるとあっちゃんはあわててどこかへいってしまいました。
そこでてんちゃんはやってきたしろくんにたずねました。
「こんにちは、しろくまくん、ぼくはてんしのてんちゃんだよ。」
「こんにちは、はじめまして、ぼくはしろくまのしろくんです。」
しろくんをみるとすこしつらそうなようすでした、てんちゃんはきになってたずねました。
「しろくんどうかしたの?なんだとってもつらそうですよ」
「そうなんだ、きのうからなにもたべてなくて、おなかがぺこぺこにへってげんきがでないんだよ」
そういってしろくんはじぶんのおなかをさすりました。するとてんちゃんはとってもすてきなことをおもいつきました。
「そうだ、それならいまからぼくといっしょにおべんとうをたべませんか。ぼくはてんごくからおべんとうをもってきたんだ。たっぷりあるからいっしょにたべましょう」
そういっててんちゃんはもってきたおべんとうをひろげました。そこにはおいしそうなわたがしがふんわりぎっしりつめこまれています。
「いいのかい、じゃあえんりょなく、いただきまぁす」
しろくんはてんちゃんのおべんとうをむしゃむしゃとすごいいきおいでたべはじめました。
「うまい、うまい、こんなおいしいものをたべるのははじめてだよ」
そして、あっというまにたべてしまいました、おべんとうばこはすっからかんです。
「あ、ごめん、きがついたらぜんぶたべちゃってたよ」
「ううん、だいじょうぶだよ、ずいぶんとおなかがすいていたんだね」
「そうなんだ、なんせまるいちにちいじょうなにもたべていなかったんだ、ほんとうにたすかったよ、ありがとう、ごちそうさまでした」
「おそまつさまです、きみのやくにたつことができてぼくもうれしいよ」
「ところで、こんなところにてんしさまがいらっしゃるなんてめずらしいね、なにかあったのかい」
「うんそうなんだ、ぼくのしろいぱんつをしらないかい、せんたくしてほしていたときにそよかぜさんにとばされてこのへんにおちたんだけど。とってもしろいんだ。ここのこおりよりもしろいからきっとわかるとおもうんだよ」
「それならさっきまっこうくじらのまっちゃんがのみこんでいったのがそうじゃないかなぁ。そらからちいさいのがひらひらとおちてきたのでまっちゃんがおもわずぱくりとのみこんじゃったんだよ」
「これはこまったぞ、ぱんつをのみこんじゃうなんて。おちていったぱんつをちょっとひろってもどるだけのつもりだったのに、たいへんなことになってきたぞ」
さあ、たいへんなことになっててんちゃんはすっかりこまってしまいました。ぱんつはまっちゃんのおなかのなかです。てんちゃんはぱんつをとりもどしててんごくにぶじかえることができるのでしょうか。
「しろくん、まっちゃんはどこにいるんだろう。おしえてくれないかい」
とてんちゃんがきくと
「う~ん、まっちゃんはおきのほうへおよいでいっちゃったからなぁ、ぼくにはわからないや」
というへんじがかえってきました。どうやらしろくんにはまっちゃんのゆくえがわからないようです。
さあ、こんどはまっこうくじらのまっちゃんをさがさなくてはいけません。だれかまっちゃんをしらないかとさがしているとえとぴりかのえっちゃんとであいました。えっちゃんはとてもきれいなとりです。そらからみつけられないかとおもってたずねました。
「こんにちは、ぼくはてんしのてんちゃんだよ。えとぴりかさん、まっこうくじらのまっちゃんをしりませんか?」
「こんにちは、わたしはえとぴりかのえっちゃんです。まっちゃんならみなみのうみにかえったんじゃないかなぁ」
とおしえてくれました。そこでてんちゃんはこんどはずんずんみなみへむかってとびました。
「なんだかあつくなってきたなぁ」
みなみにゆくにつれてだんだんとあったかくなってきました。さむいほっきょくからきたてんちゃんはもうあせだくです。でもあついからといってきているふくをぬぐことはできません、なぜならもともとてんちゃんはまっぱだかだったからです。それでもしばらくするとあつさにもなれてきました。しらないあいだにもうせきどうのちかくまできていたのです。どこまでいってもまっちゃんがみつからないのでてんちゃんがこまっていると、とおくにおよいでいるくろいかげがみえました。
「あっ、まっちゃんだ」
やっとまっちゃんをみつけたとおもいてんちゃんはさけびました。そして、どこかへいってしまうまえにおいつかなければとせなかのつばさをおもいきりはばたかせて、おおいそぎでとんでゆきました。でもいくらちかづいてもくろいかげはおおきくなりません。
「おかしいぞ、まっちゃんはとてもでかいってきいたのに、あのかげったらちかづいてもちいさいまんまだぞ」
てんちゃんがふしぎにおもっているうちについにそのかげにおいつきました。かげはうみにもぐったりうかびあがったりしてとってもはやくおよいでいたのですが、そらをとんできたてんちゃんのほうがはやかったのでした。ちかづいてみるとそれはいるかのいるちゃんでした。
「こんにちは、いるかさん、ぼくはてんしのてんちゃんだよ。まっこうくじらのまっちゃんをさがしてるんだけどしりませんか。ぼくのぱんつをのみこんだままどこかへおよいでいっちゃったんです」
てんちゃんはきちんとあいさつをしてからいるちゃんにたずねました。
「こんにちは、ぼくはいるかのいるちゃんだよ。それならぼくがしっているよ。まっちゃんがそのぱんつをのみこんだときぼくもいっしょにいたんだもの」
そしているちゃんはそのときのようすをはなしてくれました。
「ぼくたちがあそんでいるとそらからとってもきれいなしろいものがひらひらとおちてきたんだ。くいしんぼうのまっちゃんはみずのなかからじゃんぷしてそれをぱくっとたべちゃったんだよ」
さあ、たいへんです、てんちゃんのしろいぱんつはやっぱりまっちゃんのおなかのなかです。いったいとうしたらよいのでしょうか。
「とにかくまっちゃんにあいにいかなくちゃ、ねぇ、まっちゃんがどこにいるかおしえてくれませんか」
もういちどいるちゃんにたずねました。
「まっちゃんならくじらがあつまるくじらのうみにかえっていったよ」
まっちゃんはくじらのうみにいるみたいです。いるちゃんからくじらのうみのばしょをおしえてもらうとてんちゃんはまっちゃんにあうためにしゅっぱつしました。でも、まっちゃんのいるくじらのうみはとぉってもとおいところにあります。てんちゃんはせなかのつばさをひっしにはばたかせてとびつづけました。もうくたくたではばたくこともできないとおもったときやっとくじらのうみにたどりつきました。
「やっとたどりついたぞ、でもくじらさんがたくさんいるなあ、だれがまっちゃんなんだろう」
てんちゃんはやっとくじらのうみにたどりついてほっとしましたが、くじらがたくさんいるためだれがまっちゃんかわかりません。
「おおい、まっちゃんはいませんかぁ、だれかまっちゃんをしりませんかぁ」
おおごえでさけびながらてんちゃんはくじらのうえをとびまわりました、するととつぜんおおきなしおがかいめんからふきあがりました。くじらはときどきせなかからふんすいのようにしおをふくのです。そしてそのしおをふいたくじらがぽっかりとうかびあがってこういいました
「こんにちは、ぼくがまっちゃんだよ、なにかごようですか?」
それはさがしていたまっちゃんでした
「こんにちは、まっちゃん、ぼくはてんしのてんちゃんだよ」
てんちゃんはあいさつをするとさっそくだいじなようけんをはなしました
「きみがのみこんだしろいひらひらしたものはじつはぼくのぱんつなんだよ、おねがいだからかえしてくれませんか。それをもってかえらないとかみさまにぼくはしかられてしまうんだ。」
それをきくとまっちゃんはきのどくにおもいました、そしてこたえました
「うん、ほっきょくのうみをおよいでいたとき、たしかにしろいふわふわしたものをのみこんじゃったよ。あれはきみのぱんつだったの?でももうないんだ」
「えっ、どういうこと?それじゃぁ、ぼくのぱんつはいったいどこにあるの?」
もうないといわれててんちゃんはびっくりしてしまいました。
「それが、くじらのうみにかえるとちゅう、だんだんあったかくなってきてきぶんがよくなったのでぽかぽかのおひさまのしたでのんびりとおひるねしたんだ。そしたらねぼけたひょうしにしおをぴゅーってふきあげてしまって、そのときにきみのぱんつもいっしょにふきだしてしまったんだ」
「ええ、それはどこですか、そのあたりのうみにまだぷかぷかういているかもしれない」
「それはないかな、ぱんつをふきあげたときにちょうどそよかぜがふいてぱんつをどこかへもってっちゃたんだ」
「それはどっちのほうがくへとんでいったんですか?」
「それがきみのぱんつがどこにあるかはわからないんだ、そのときぼくねてたからね、いっしょにいたともだちがそのときのことをあとからおしえてくれたんだよ」
これはとんでもないことになってしまいました。またはじめからさがさなければなりません。にどもぱんつにいたずらするなんてそよかぜさんもちょっといじわるですねぇ。
てんちゃんがまっちゃんとおはなししていると、そこへかもめのかーたんがとんできました。
「こんにちは、まっちゃんとてんしさん。おそらのうえでいまのおはなしはきいていましたよ。それならわたしがしっていますよ。そよかぜさんにとばされたものがきになってつかまえようとおいかけていたらなんきょくまでとんでいったよ。なんきょくでさがしてごらんなさいな」
そういうとつーととんでゆきました。
「ありがとうかーたんさん」
てんちゃんはいそいでおれいをいいましたが、もうかーたんはみえなくなってしまいました。
しんせつなかーたんがおしえてくれたなんきょくまでぱんつをさがしにゆくことにしました。こんどはあつーいせきどうからさむーいなんきょくまでのたびです。はじめのうちはてんちゃんもはりきってとんでいましたが、なんきょくにちかづくにつれてだんだんさむくなってくるとせなかのつばさがかじかんでだんだんとぶのがつらくなってきました。それでもぱんつをみつけないといけないのでてんちゃんはじぶんをはげましながらとびつづけてやっとこさなんきょくにたどりつくことができました。
「なんてさむいんだ、ほっきょくよりさむいんじゃないかなぁ」
あついせきどうからきたのでよりいっそうさむくかんじました。そらからみおろすとまっしろなこおりがどこまでもはてしなくひろがっています。さあ、こんどはこのひろいなんきょくでさがします。てんちゃんはそらからだんだんおりてゆきました。
「やあ、あれはなんだ」
まっしろなこおりのうえにまあるくまっかなものがひろがっているのをみつけました。さらにおりてゆくとそのまんなかにくろいてんのようなものがみえてきました。てんちゃんはいやなかんじがしてその点に向かっておおいそぎておりてゆきました。ちかづくにつれてそれがなにかわかってきました、それはぺんぎんでしたぺんぎんがこおりのうえにうつぶせにたおれていたのです。ふだんならそんなところにねてたらおなかがひえますよとおこしてあげるのですが、あるていどちかづいたところでてんちゃんはぴたっととまってしまいました。たおれているぺんぎんのまわりをとてもたくさんのあかいいろのみずがとりかこんでいるからでした。
「ちなのかもしれない、はやくたすけなきゃ」
さあたいへんです、てんちゃんはおおいそぎでぺんぎんのそばにゆくとたすけおこしました。
「ぺんぎんさん、だいじょうぶですか、しっかりしてください」
するとぺんぎんはすぐにいきをふきかえしました。
「うううむ、ぺんちゃんは、ぺんちゃんはどこじゃ」
だきおこしたのはぺんぎんのおじいさんでした。
「ぺんちゃんってだれですか、ここにはおじいさんだけでしたよ」
するとようやくおちついたぺんぎんはなのりました
「こんにちは、てんしさん、わしはぺんぎんのむら”ぺんそん”のちょうろうのぺんじいというもんじゃ」
「こんにちは、ぼくはてんしのてんちゃんです、よろしくおねがいします」
「うんうん、しっかりあいさつできてえらいぞ、てんちゃん。わしはなぁ、ここでぺんちゃんとぶつかってひっくりかえってきぜつしてしまったんじゃよ、ぺんちゃんはちかくにおらんか」
そういってぺんじいはあたりをみわたしました。ぺんちゃんのすがたはありませんでしたが、じべたにひろがった赤い水のうえにぺんぎんのあしあとがいちわぶん、ぺんじいがたおれていたところからつづいていました。それをみつけるとぺんじいは
「どうやらぺんちゃんはたすけをよびにいったようじゃな。それにしてももったいないことをしてしもうたわい」
といってじぶんのまわりのあかいみずをひろいあげてくちにいれました。なんきょくはとてもさむく、あかいみずはこおりのうえにこぼれたのですっかりかちこちにこおっていまっていました。
「ああ、うまうま、じつにおいしい、じつにおしいことじゃ」
といいながらぺんじいはもうひとくちたべました。
「ぺんじいさん、そんなものをたべてもだいじょうぶですか、それはあなたのちではないのですか」
てんちゃんはだんだんしんぱいになってきてたずねました
「ふぉっふぉっふぉ、なにをいっておるんじゃ、こんなにたいりょうにちをながしたらとうのむかしんしんじまっておるわい、これはなあ、とまとじゅーすじゃよ」
といいながらさらにもうひとくちたべました。てんちゃんはびっくりするやらあんしんするやらでめをしろくろしましたが、じぶんもあしもとにあったとまとじゅーすをぱきんとわってくちにいれました、するとそれはすううととけてしんせんなとまとのかおりがくちのなかいっぱいにひろがりました。
「ああおいしい」
「そうじゃろう、さいじょうきゅうのとまとじゅーすじゃからのう。なんきょくではやさいがとれないのでとまとじゅーすはたいせつなえいようげんなんじゃ。ひさしぶりにしんせんなとまとじゅーすがてにはいったのでむらのみんなにのませようといそいでここまでかえってきたところにはしってきたぺんちゃんとぶつかってひっくりかえってしまったんじゃ、ぺんちゃんもとんだあわてもんじゃわい。そのときとまとじゅーすがみんなこぼれてしまってなあ。」
ぺんじいをまんなかにしてまあるくひろがっていたあかいみずのしょうたいはこぼれたとまとじゅーすだったのです。
「むらのしゅうにいってあとでとまとじゅーすをひらいにきてもらおう、なんせたいせつなものじゃからな」
とまとじゅーすはすっかりかちこちにかたまってしまっているのでかんたんにひらうことができそうでした。
「ところで、こんなところまでてんちゃんはなんのためにきたのかね」
そうです、だいじなことをわすれるところでした。ここはもうちのはてといってもいいくらいにちきゅうのはしっこです。ここでぱんつをみつけることができなければもうどうしていいのかわからなくなります。そこでてんちゃんはかぜにとばされておっことしたじぶんのぱんつをさがしてたびをしていることをはなしました。ふむふむとぺんじいはおはなしをきいておりましたが、てんちゃんがはなしおわるとくちをひらきました。
「それならぺんたのうちにあるのがそうかもしれん」
といいました。やっとみつけたかもしれないとてんちゃんはおおよろびしました。でもぺんじいはむつかしそうなかおをしていました。
「ともかく、ぺんたのうちにいってみよう」
ぺんたさんのおうちにくるとぺんたさんのおくさんがねていました。ここはなんきょくです、ぺんたさんのおくさんはこおりのおうちのこおりのへやでこおりでできたベッドにねかされていました。そしてそのおなかにはてんちゃんのぱんつがかけられておりました。
「あっ、ぼくのぱんつだ」
てんちゃんはおもわずさけびました。ぱんつをかけられているぺんたのおくさんはくるしいひょうじょうでねておりました。そのよこにはおばさんぺんぎんがしんぱいそうにかんびょうしておりましたのできっとびょうきにかかってくるしんでいるんだということにきがつきました。おおごえをだしてしまったてんちゃんはしまったとおもいました。てんちゃんのことばをきくとおくさんのまくらもとでしんぱいそうにみまもっていたぺんたさんのかおはつらそうにゆがみました。
「こんにちは、てんしさん、わたしはぺんたともうします、こちらでねているのはつまのぺんみです。おねがいです、あなたのぱんつをもうすこしのあいだかしていただけないでしょうか、ほんのもうすこしのあいだだけでいいんです」
とおねがいしてきました。
「こんにちは、ぺんたさん、ぼくはてんしのてんちゃんです。このぱんつはかみさまからいただいたたいせつなものなのです、だからぼくがかってにひとにかすことはできません、かみさまにしかられてしまいますから」
てんちゃんはなんとかしてあげたいとはおもいましたが、じぶんがかってにきめることができないわけをせつめいしました。
「そうですか、かみさまにはさからうことはできません、ぱんつはおかえししなければなりません」
そういっておくさんからぱんつをはがしました。するととつぜんおくさんがくるしみだしました。ぺんたさんはおくさんからかおをそむけてぱんつをてんちゃんにさしだしました、そのめにはなみだがにじんでおります。でもてんちゃんはそれをうけとることはできませんでした。そしてなんとかしようとかんがえてぺんみさんにてんしのいやしをあたえました。てんしのいやしはびょうきやけがをなおすことができるのです。でもぺんみさんのくるしみはすこしもやわらぐことがありません。
「ぼくのみじゅくないやしではぺんみさんをすくうことができないんだ」
てんちゃんは、いままでいやしのれんしゅうをさぼっていたことをこうかいしました。てんごくのものであるてんしのぱんつをとりもどすのはたいせつなことですが、めのまえのびょうにんをくるしめてまでとりあげるのはなにかおかしいとおもいました。もっとたいせつなことがあるんじゃないか、そうしてさっきじぶんがいったことばをおもいかえしました。『かみさまにしかられてしまいますから』そうだ、しかられるのはぼくじゃないか、ぺんたさんやぺんみさんがしかられるわけじゃないんだ。そうきがつくとぺんちゃんはぺんたさんからぱんつをうけとり、もういちどおくさんにかけてあげました。するととたんにおくさんのくるしみはやわらぎ、おちついたねいきをたてはじめました。ぺんたさんやかんびょうしていたおばさん、ぺんじいもおどろいててんちゃんのほうをむきました。ぺんちゃんはにっこりとして
「かってにひとにかすのはいけないんです、だからかしていただけるようにてんごくのかみさまにおねがいしてきます」
そうしててんちゃんはぺんたさんのおうちをでました。そのうしろではぺんたさんとおばさんがふかぶかとあたまをさげておりました。
「いいのかい、ほんとうに、あんたはだいじょうぶなのかい、ずいぶんとしかられたりはしないのかい?」
ぺんじいがしんぱいしてくれました。
「もちろんだいじょうぶですよ、こっぴどくしかられるかもしれません。でもぺんみさんのくるしみにくらべればぜんぜんたいしたことではないですよ。では、ちょっといってきますね」
そういうとてんちゃんはかろやかにとびあがってすぐにしょうてんしはじめました。ちじょうではぺんじいとうちからでてきたぺんたさんがてんにのぼってゆくてんちゃんをみおくりながら、つばさをあわせて『てんちゃんがあまりしかられませんように』とおいのりをしていました。
てんちゃんはてんごくへむかってっくりとのぼってゆきました、いそぐひつようはありません、ゆっくりのほうがいいとてんちゃんはおもいました。だってぱんつはぺんみさんにところにあります、かみさまにすぐにとりもどすよういいつけられてもてんごくをおうふくするあいだはぺんみさんがぱんつをつかうことができるからです。それでもすぐにてんごくについてしまいました。てんごくのいりぐちにはてんしのなかでもいちばんえらいみかえるさまがむつかしいかおでまっておられました。てんちゃんはばつがわるかったのですが、にげるわけにはいきません、しょうじきにこれまでのことをみかえるさまにせつめいして、ぱんつをかすことをゆるしてもらうためにかみさまにあいたいとおねがいしました。するとみかえるさまは
「わかっておりますよ、かみさまがおまちです、さあすぐにまいりましょう」
といっててんちゃんをかみさまのもとへみちびきました。
てんちゃんはもういちどことのいきさつをかみさまにせつめいしましたそして
「ぼくはどんなにしかられてもかまいません、どうかぺんみさんにぱんつをかすことをおゆるしください」
とこころをこめておねがいしました。するとかみさまはおっしゃいました。
「てんちゃん、ぱんつをかえしてもらいにすぐにちじょうへひきかえしなさい」
てんちゃんはすべてののぞみがたたれたようなかおでかみさまをみました
「おねがいです、あのぱんつがないとぺんみさんはとてもくるしいのです、どうかおたすけくださいませんでしょうか」
かみさまはすこしこまったようなかおをしましたがすぐにきをとりなおしておっしゃいました
「もう、そのひつようはなくなったのじゃ」
それをきいててんちゃんのこころはおおきなおとがしたんじゃないかとおもうくらいふるえました。ぺんたさんが「もうほんのすこしのあいだでいいんです」といっていたのをおもいだしたからです。それはもうすぐぺんみさんがしんでしまうということだったのではないかしらとおもったのです。
「なにかかんちがいをしとらんか、ぺんみさんはもうすっかりよくなっているよ。げんきになったのでぱんつはもういらなくなったんじゃ」
そうかみさまがおっしゃいました。それをきいててんちゃんはあんしんしました。きょうはしんぱいになったり、しかられるかくごをきめたり、ぜつぼうしたりあんしんしたりきもちがめまぐるしくかわってたいへんないちにちです。
「それでは、すぐにかえしてもらいにいってだいじょうぶなんですね」
「うんだいじょうぶだよ」
そうしててんちゃんはおれいをいってからかみさまのまえをしりぞきました。てんごくのでぐちにむかいながらみかえるさまがせつめいしてくれました。
「ぺんみさんはつみをおかしてしまったのでびょうきになりました。ひとつひとつはちいさなつみでしたがそれがつみかさなっておもいびょうきになったのです。びょうきのくるしみはつみにたいするばつですからどのようにしてもやわらげることができなかったのですよ。でも、あなたがぺんみさんにぱんつをかしあたえそのばつとしてかみさまにしかられるかくごをしましたね。そのときあたながつみをかたがわりすることになりぺんみさんのつみがきえたのです。ぺんみさんのやまいをいやしたのはぱんつではなくあなたのおこないなのですよ」
「それでは、もうぺんみさんはだいじょうぶなのですね」
「ええ、だからすぐにいってきなさい、げんきになったぺんみさんにあってくるといい」
てんちゃんはあることをおもいついてみかえるさまにたずねました。
「みかえるさま、ぼくのぎせいのけついがぺんみさんのつみとくるしみをすくったのなら、ほかのひとのつみやくるしみもすくうことができるのですか」
「いいところにきがついたね、でもわたくしたちのこころにはげんかいがある、くるしんでいるひとをすくうにもかぎりがあるのです。むげんのあいとぎせいのけついがあればぜんじんるいのつみをかたがわりしてくるしみをとりのぞくことができるでしょう。それをなしとげることができたのはかみさまがてんちをおつくりになられてからたったおひとりだけですが。でもみじかなひとびと、じぶんのまわりのひとびとのくるしみをやわらげることはだれにでもできることなのですよ」
そういいおわるとふたりはてんごくのでぐちにとうちゃくしました。
「さあ、おいきなさい、あなたのなしとげたことをじぶんのめでたしかめてきなさい」
そういってみかえるさまはてんちゃんをおくりだしました。
てんちゃんはずんずんとぺんたさんのいるなんきょくへむかっておりてゆきました。
てんちゃんのつばさはかろやかにはばたきます、いまはとってもしあわせでした、じぶんのおこないがだれかのやくにたったのですから、こんなにしあわせなことってありません。
こんどはおおいそぎでとんでゆきます、まるでおっこちてゆくみたいです。だってすこしでもはやくげんきになったぺんみさんにあいたいんですもの。
「ただいま、ぺんたさん」
なんきょくのぺんそんにとうちゃくするとまっさきにぺんたさんのおうちへゆきました。
「おかえりなさい、てんちゃん」
おうちではぺんたさんとぺんみさんがでむかえてくれました。ぺんみさんはすっかりげんきになってにこにことあかるくおひさまのようにわらっています。
「げんきになったんですね、ぺんみさん、よかった」
するとぺんみさんはてんちゃんのてをとるとなみだをながしておれいをいいました
「たいへんおせわになりました、おかげですっかりよくなりました、いまはぜんぜんつらくありません、どうもありがとうございました」
そういうとぺんみさんはてんちゃんのちいさなてをりょうてにつつみこんでぎゅっとにぎりました。てんちゃんもすっかりうれしくなってぎゅっとにぎりかえしました。ぺんたさんもそこにいたかんびょうしてくれていたおばさんもぺんじいもとってもよろこんでくれました。
「ぼくのぱんつがおやくにたててこんなにうれしいことはありません。それではもうぱんつはいらなくなりましたね」
てんちゃんがそういうとみんなのかおいろがさっとくらくなりました。
「てんちゃんもうしわけありません、あのぱんつはもうすこしのあいだおかりすることはできませんでしょうか」
ぺんたさんがすまなさそうにいいました。
「じつは、おとなりのこどものぺんぞうくんがうみでおよいでいるときにシャチにおそわれておおけがをしてしまったのです。とてもいたがっていたのですが、てんちゃんのぱんつをかけてあげるといたみがやわらいでとてもらくになったんです」
そしててんちゃんをとなりのぺんぞうくんのおうちにあんないしました。そこではぺんぞうくんがこおりのべっどのうえでくるしそうにうなっていました。しゃちにかじられてぺんぞうくんのしっぽがなくなってしまっていたのです。いくらてんちゃんのぱんつでもいたみをかんぜんにとりのぞくことができないようなおおけがでした。てんちゃんはぺんたさんにむかっていがいなことをいいました。
「ひとにかりたものをまたがしするのはよくありませんよ」
「ええ、よくわかっています、でもいたみにくるしんでいるぺんぞうをそのままにしてはいられなかったのです、だからわたしはどんなばつもうけます、そのかわりあなたのぱんつをぺんぞうくんにかしてあげてください」
そういうとぺんたはふかぶかとあたまをさげました。
「だめです、ぺんたさん、いまのあなたにはぼくのぱんつをたにんにかすけんりはありません」
そういっててんちゃんはぺんぞうくんにかけられているぱんつにてをのばしました。
ぺんぞうくんのおかあさんはぺんちゃんのてをにぎってなにかをうったえるようになみだをうかべためでてんちゃんをみました。
「てんちゃん、どうもありがとうございました、あなたのぱんつのおかげですこしのあいだでもぺんぞうのいたみがやわらぎました。あなたのだいじなぱんつはおかえしします、どうぞもっていってください」
ぺんぞうくんのおとうさんはつらそうにそういうとしたをむいてしまいました。そのあしもとにはなみだがぽたぽたとおちてゆきます。おかあさんもなみだをうかべてうらめしそうにおとうさんをみていました。てんちゃんはじぶんのぱんつをつかむと「えいっ」とちからをこめててんしのいやしのぱわーをぺんぞうくんにあたえました、するとぱんつのしたでぺんぞうくんのしっぽのきずがみるみるいえていったのです。てんちゃんがぱんつをはがしたときにはけがはすっかりよくなっていました。ぺんぞうくんはぱっちりとめをひらくと、そばでないているおかあさんにだきつきました。
「おかあさん、もうだいじょうぶだよ、なかないで、もうどこもいたくもなんともないんだ」
おかあさんはとてもよろこんでぺんぞうをだきしめました。おとうさんもぺんぞうにかけよりぺんぞうくんとおかあさんをおおきなつばさでつつみこむようにだきしめました。
「ありがとうございます、てんちゃん。ほんとうにありがとう」
そこまでいうとおとうさんはしゃべることができなくなりました。ぺんぞうくんのかぞくはしばらくだきあったままでした。
「わしからもおれいをいわせてください、どうもありがとう」
ぺんじいがいいました。
ぺんぞうのけがでぺんぞうのかぞくはとてもつらいめにあいました。てんちゃんのことばはとちゅうまでぺんぞうのおとうさん、おかあさんをくるしめました。でも、さいごにはみんながよろこび、しあわせになることができました。かみさまやてんしさまのなさることにはまちがいがありません。どんなにつらいしれんでもさいごにはきっとよいけつまつになるのです。ただしいこころをもち、ただしいおこないをするひと、たにんをおもいやりしんせつにするひとにはさいごにはしゅくふくがあたえられるのです。だって、かみさまもてんしさまもみんながしあわせになってほしいとねがっておられるのですから。
「ぺんぞうくんのきずをなおしたのはあなたのおもいやりのこころとやさしいゆうきのおかげですよ。あなたにぼくのぱんつをあずけます。これからもこまったひとがいたらこのぱんつをかしてたすけてあげてください」
てんちゃんはぺんたさんにそういうともっていたぱんつをたくしました。
「でも、これはたいせつなものではないのですか、これがないとあなたはおなかがひえてかぜをひいてしまいますよ」
そういってぱんつをかえそうとしますと
「だいじょうぶです、だって、ぼくげんきですから」
そういっててんちゃんはくるりといっかいてんしてみせました。てんちゃんのくったくのないえがおにそのばにいたみんなのこころがあったかくなりました。
「わかりました、それではこれはたいせつにおあずかりします、そしてこまったひとがいたらかならずたすけるとちかいます」
そうぺんたさんがけついしますと、てんからひかりがふってきたようにまわりがぱぁっとあかるくなりました。それはちいさなひかりのはなびらとなってみんなにふりそそぎました。かみさまがただしくきよいこころをもったひとたちにしゅふくをあたえてくださったのです。
こうして、てんちゃんはけっきょくまっぱだかのまま、ぱんつもはかないでてんごくにかえることになりました。
てんごくにかえったたんちゃんがすべてをほうこくしおわると、かみさまはてんちゃんをほめてくださいました。みかえるさまはてんちゃんにいいました
「てんちゃん、こんかいたったひとりでぱんつをさがすたびをしてついにみつけることができました。よくがんばりましたね」
「いいえ、ひとりじゃありません、ゆくさきざきでいろんなひとにたすけてもらいました。ぼくひとりではけっしてこのぼうけんをやりとげることはできませんでした。こんどはたすけていただいたかたがたにおれをいうたびをしたいとおもいます」
そういうてんちゃんをかみさまはにこにこやさしいえがおでみておられました。
「それがわかればよろしい、こんどのたびでぱんつをとりかえしにゆこうといわなかったからごうかくだ」
みかえるさまもついにてんちゃんをほめてくださいました。
「ぱんつはあげたのでも、とりかえすのをあきらめたのでもありません。あれがひとびとをしあわせにするのなら、できるだけながくちじょうにあっておおぜいのひとにしあわせをわけあたえてほしいのです。いろいろなひとのてをわたって、あのぱんつはこれからもながいたびをするのです」
いつもきびしいおかおのみかえるさまもとうとうにこにこのえがおになっててんちゃんのあたまのわっかのしたにてをさしいれてそそのあまたをなぜました。
こうしててんちゃんのぱんつはいまもちじょうのどこかにあって、ひとびとにえがおをとどけています。だからてんちゃんはいまもぱんつをはいておりません。
ぱんつがなくておしりがすこしすーすーするくらいなんともありまあせん、そのぶんだれかがしあわせになるのならそのほうがなんばいもいいとてんちゃんがかんがえています。
ぱんつをはいていないてんしさまがいらっしゃるのはこういうわけがあったのです。こんどきょうかいへいったときぱんつをはいていないてんしさまをさがしてみてください、もしみつけることができたらそれはてんちゃんかもしれませんね。てんしさまはてんごくからいつもわたくしたちをみまもってくださっています、ぱんつをはいていないてんしさまはそのなかでもとくべつやさしくてしんせつですてきなてんしさまなのかもしれませんね。
どうでしたか、ぱんつをはいていないてんしのひみつがわかりましたか。おはなしのなかだけではありません、これをよんでいるみなさんもてんしさまはみまもってくださっていますよ。こんどはみなさんがだれかにしんせつにしてあげるというのはすてきなかんがえだとおもいませんか?きっとてんちゃんもよろこんでくれるにちがいありません。
これでわたしのおはなしはおしまいです。それではこんどあえるときまで、これにてさようなら。
みなさまがいつまでもしあわせでありますように。
読んでいただいた方、いかがだったでしょうか。取りとめもないお話でしたが、少しでもみなさんの心を慰めることができたのならこんなに嬉しいことはありません。
この作品はクリスマスイブに投稿しました。でも、クリスマスの間だけではなく一年中みなさんの心の中にやさしい気持ちがあったらいいなとわたしは願っています。