お盆?
テシオンVSツバラの幕開けです。
ツバラは狼狽していた。ロンギヌスの槍と同等の効果を持つ剣を使っても、常闇の月を使っても、まったくノヒローはマモンに歯が立たなかった。勝てないまでもマモンにダメージを与えることができれば、自分と隠し球とも言うべきあのお方で勝利を収めることができる。そう考えていた。しかし実際はどうだ。マモンはまったくの無傷。それどころかその実力を見た魔人たちが怯えている。このままでは全体の士気に関わる。ここは自分が圧倒的な差を見せつけてテシオンと数体の幹部を葬る必要がある。しかも頼みとなるあのお方はまだ姿を現していない。
「聖属性の攻撃という奴ら最大の弱点がある以上、僕が負けることはありえない。それに本物のロンギヌスの槍もあることだし」。そう考えてテシオンを挑発する。
「ノヒローくんがやられたのは計算外だったけど、特に支障はないよ。僕が君たちを殺せばいいだけの話だからね。まずは君からだよ下級悪魔くん」
「ふん、言うことだけは一人前だな。クソ天使。お前を殺しても問題ないとゼウスさんからは言われているからな。覚悟しろよ」
ツバラはその言葉に驚きはしない。ロンギヌスの槍を勝手に持ちだしたのだから、天上界での自分の立場が悪くなっていることはわかっている。しかしそれも魔界を制圧して帰ればウヤムヤになるはずだ。
「ふん。たとえゼウス様の加護がなかったとしてもお前らくらいはどうということはない」
そうツバラが嘯いた瞬間、顔面に凄まじい衝撃を感じた。アキラがいつの間にかツバラに近寄り思い切り殴ったのだ。
「あなたのくだらない計画で久仁子ちゃんは怖い思いをした。これはそのお返しだよ」
ツバラは面食らっていた。「確かにこの人間の攻撃は聖属性だ。ちくしょう! どういうことだ」。あまりの痛さに表情が歪みながら顔を押さえる。
「じゃあテシオン、あとは任せたよ」
アキラがそう言うと、テシオンは右手を挙げて応える。
「さぁやろうか」
そう言ってテシオンがツバラに向けて加速する。ツバラは「一気にケリをつけてやる。こいつを殺したら、次はあの人間を真っ先に殺す!」と思いながらロンギヌスの槍を振るう。「捉えた!」、そう思った瞬間「カキン!」という甲高い音がする。手応えが違う。本来であればいまの攻撃で目の前の悪魔は真っ二つになっているはず。しかしなにか硬いものに当たった感触が手に残る。
「なんだ、その防具は?」
「これかい? これはデモンズシールドだよ」
「はぁ? デモンズシールドは失われていたのではないのか」
テシオンが取り出した盾、それは伝説の防具と謳われたデモンズシールドであった。パズズが探索に出かけても見つからなかった防具。ロンギヌスの槍に唯一対抗できる防具である、その盾をテシオンは手にしている。
「なぜだ! なぜそれがあるんだ」
ツバラが絶叫する。それにテシオンは笑いながら答える。
「なぜって、これずっとあたしが持ってたからな」
その答えにツバラが絶句する。タックの母親・フッサが言っていた、祖先がお世話になった悪魔。それがテシオンの親友とも言える老悪魔だった。そして老悪魔が息を引き取る際に、この盾をテシオンに託したのだ。しかしテシオンはその使い道がわからなかったので、親友の形見として肌身離さず持っていたが、アキラの料理を運ぶお盆として使っていた。
その事実にサタンたちが気づいたのはつい先ほどのこと。ホットケーキを幹部たちに運ぶ際にバアルが気づいたのだ。
「テシオン、ずいぶん変わったお盆を使っていますね」
「あぁ、これ親友の形見なんすよ」
「ちょっと見せてもらえますか?」
「いいっすよ」
「あなたこれは! これデモンズシールドじゃないですか。なにをお盆として使っているんですか!」
「デモンズシールド? なんすかそれ」
魔界幹部が総力を挙げて探していた防具が目の前でお盆として使われている。その事実に幹部たちは驚くとともに呆れていた。タックも「形はお盆に似ているといえば似ていますが、それにしてもテシオンさん……」と絶句した。サタンは「本当にあなたは規格外ですね」と腹を抱えて笑っていた。
「ということで、あんたのロンギヌスの槍は防げるってわけ」
「ふん! どうせ紛い物だろう。お前のような下級悪魔がそんな防具を持っているはずがない」
そう言うとツバラはロンギヌスの槍で連続した突きを放ってきた。
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