風車ですか?
マモンVSノヒロー、決着です。
信じられない速さでノヒローがパンチを繰り出す。マモンはあえてガードしないでそれを受ける。常闇の月を使った悪魔がどれくらい能力が上がるのかを確認したかったのだ。まともに喰らったマモンが大きく仰け反るが、倒れるには至らない。マモンの意図を知らないツバラは喜んでいる。
「マモンくん、余裕こいていたら大変なことになったね〜」
マモンはツバラを一瞥するが、わざと受けているので特段気にする様子もない。その態度がツバラは気に入らない。
「強がっちゃって。それで魔界の次期頭首なの? みっともない」
ツバラの言葉にまったく反応せず、次の攻撃に備える。ノヒローがまたもすごい速度の蹴りを放つ。今度はガードするマモン。「確かにパワーは格段に上がっているな。では防御力、耐久性はどうか」。それを検証すべくマモンが殴り返す。
パンチはまともに側頭部にヒットしたが、ノヒローは多少グラつくぐらいで倒れることはなかった。「うむ。なかなかのものだな」。確認作業を終えて距離を取るマモンに対してノヒローが間合いを詰めてくる。常闇の月を使用しているため、ガードは一切無視してひたすら攻撃を繰りだしてくる。破壊衝動のみで動く獣と化しているのだ。
ノヒローの攻撃をときに躱し、ときにガードするマモン。しかしそのうち数発はまともに喰らっている。その度にマモンの表情が苦痛に歪む。その様子をツバラは嬉しそうに眺めているが、アキラには違和感があった。「確かに攻撃は重そうだし、なかなかのスピードだけど……」。人間であるアキラに魔法での攻防のことはわからない。しかし肉弾戦となると、空手を得意としているだけに理解できる。そのアキラが思う。「マモンさんなら、あれくらいの攻撃は全部躱すこともガードすることもできるはずなのに」と。当然その違和感はサタンや幹部たち、テシオンも気づいていた。しかし彼らはマモンの行動が当然と言わんばかりの顔をしている。
そのうちマモンが大きく弾き飛ばされて地面に這いつくばる。そのマモンに向かってノヒローは踏みつけて攻撃を加える。マモンの表情が苦しそうに見える。倒れたマモンを引きずり起こすと、ノヒローは放り投げる。無造作に投げられたマモンの体が離れた場所に、大きな音とともに着地する。アキラの目にはマモンが痙攣しているようにも見える。しかしやはり違和感は拭えない。確かにそうとうのダメージがあってもおかしくないノヒローの攻撃であるが、先ほどまでのマモンを見ていると「本当に効いているのかな?」と思えて仕方ないのである。そのときヒデキがアキラに尋ねてきた。
「おい、アキラ。マモンさん大丈夫なのかな? ノヒローが変な球を飲み込んでから一方的に攻められているけど」
「う〜ん。ちょっとおかしいんだよね。ノヒローの攻撃がすごいのは間違いないけど、マモンさんがあそこまで一方的にやられるのは……」
「でもヤバいんじゃないか?」
「大丈夫だとは思うんだけど……」
男子高校生がそうした会話を交わしていると、いつの間にかコージー城の屋上や窓から戦いを見ていた悪魔たちから声が上がる。
「マーモーン、マーモーン」
応援するかのようなマモンコール。それに応えるようにマモンが立ち上がると、迫ってきたノヒローの後頭部に飛び蹴りを放つ。「あれって延髄斬り?」。アキラは某カリスマレスラーの得意技を思いだした。「まだまだ元気じゃん」とも思った。
マモンは手を叩きながら「シャイシャイシャイ」と城で見ている悪魔たちにコールを煽っている。次の瞬間、ノヒローの背後に回り体を両腕でホールドしたマモンが「おいしょ!」という声とともに、ノヒローを後方に投げる。見事なブリッジで支えられたジャーマンスプレックスホールドであった。そのあまりの急角度、そして速さに獣と化したノヒローといえど起き上がれなくなるほどのダメージを与える。
立ち上がれないノヒローの体が、燃え尽きた灰のように風に煽られてサラサラと崩壊していく。その様子を見てマモンは「どうですか? お客さーん」と叫ぶ。コージー城は拍手喝采である。
戦闘を終えたマモンがアキラの元に駆け寄る。
「どうでしたか? アキラくん。私、勝ちましたよ。カッコよかったですか?」
「途中ヒヤヒヤしましたが、カッコよかったですよ」
アキラの言葉に喜びを隠せないマモン。
「では竜田揚げは?」
「もちろん作ります! 期待していてください」
それを聞いて、勝ったときとは比べ物にならないくらい大喜びのマモン。アキラは素朴な疑問を口にする。
「マモンさん。本当はもっと楽に勝てましたよね? 途中からわざと攻撃を受けていたように見えました。なぜですか?」
アキラの問いにマモンが声を張り上げる。
「いいですか、アキラくん。相手の力を最大限に引きだして、それ以上の力で倒す。これこそ風車の理論なのです」
「出た! 悪魔さんたちの燃える闘魂イズム」
「お客さんを沸かせてナンボですからね」
誇らしげなマモンに呆れつつも、無事に勝利したことに安堵するアキラなのだった。
いよいよ次はテシオンの出番です。
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