マモンVSノヒロー。魔法のデパート?
マモンがノヒローと対峙します。
先手必勝とばかりにノヒローが攻撃魔法を唱える。
「フレイム!」
ファイアの上位魔法であるフレイム。炎属性の魔法としては中級といったところである。マモンは特別構えることもなく、面倒くさそうに手で払う。当然この程度の魔法がマモンに通じないことはノヒローも承知している。フレイムを放つと同時にマモンとの距離を詰める。それこそが狙いであった。
マモンの懐に入ったノヒローがロンギヌスの槍と同じ能力を持った剣で下から袈裟懸けに斬りあげる。それを皮一枚で交わしたマモンはノヒローのコメカミに強烈な一撃を加える。「グゥ」と漏らしてノヒローがのけ反る。
「ふん。ロンギヌスの槍と同等の武器であっても当たらなければなんてことはない」
マモンがそう言うのを「言うはやすし。これだけ強力な武器を前にして、ふつうであれば硬直したり緊張するもの。それを軽々とやってのけるのだから侮れない」とノヒローは考える。
いったん距離を置いたノヒローは剣を構え直すと「フレイムショット」を唱える。剣の先からいくつもの炎が球となってマモンに襲いかかる。先ほどのフレイムにロンギヌスの槍の効果を乗せた魔法であり、一般的な悪魔であれば体の近くを通るだけで消滅を余儀無くされるような威力を持っている。5つの魔法弾がそれぞれ異なる方向からマモンに向かっていく。「あんなの避けられないよ。マモンさん大丈夫かな」。アキラがそう心配していると、5つの弾すべてがマモンに命中する。
「どうだ! マモン、貴様といえどもこれは堪えただろう。ここから地獄を見せてやるぞ」
ノヒローが嬉しそうに叫ぶが、爆風とともに上がった煙が霧散したとき、そこにはほぼ無傷のマモンが立っていた。
「なんだと!」
「ふむ。フレイムショットとやらはこの程度の威力か」
まるで魔法の威力を確認するためにわざと受けたといわんばかりのマモン。これにはツバラも驚きを隠せない。「ノヒローくん、ちゃんとあの剣を使っているよね? なんでそれで無傷でいられるんだ」。
困惑するノヒローとツバラにマモンが言い放つ。
「何を驚いているんだ? 当然の結果ではないか。なまくらを持った剣の達人と名刀を持った剣術素人。どちらのほうが強いと思う? 当然前者だ。いくら剣が業物であろうと、ノヒロー程度が使ったのではこれくらいの効果しか発揮できないということだ」
煽るわけでもなく冷静に淡々と話すマモン。その態度が却ってノヒローの怒りのボルテージを上げる。
「言いたい放題言いやがって。じゃあこれはどうだ」
そう言うとノヒローは天に向けて剣を掲げる。ノヒローの魔力だけではなく、周囲からも魔力が剣に収束していく。
「喰らえ! ニュクリア・ショット!」
攻撃魔法の最上位に位置する核魔法。相手を分子レベルで崩壊させる危険な魔法である。それにロンギヌスの槍の効果を乗せた、最悪の魔法とも言える弾がマモンに向かって放たれる。魔法はマモンに直撃して、大きく弾き飛ばされる。
「どうだマモン。消し飛びはしないものの、もう動けまい」
肩で息をしながらノヒローが雄叫びを上げる。
しかし……
衣服は焦げてボロボロになっているものの、マモンはまたも何事もなかったかのように起き上がる。
「なぜだ! なぜ無傷でいられる」
先ほどの歓喜の絶叫とは打って変わって、落胆で叫ぶノヒロー。
「いや、だからな。さっきの私の話を聞いていなかったのか? それともそのオツムでは理解できないのかな。そうだな……たとえば人間界の野球でいうと、スライダーという変化球を決め球にしている投手がいたとする。確かにスライダーは素晴らしい変化球だが、メジャーリーグの投手が投げるのと、中学生が投げるのでは全然違うだろう? 先ほどの貴様の魔法はいくら上級魔法といえども、せいぜい魔法中級者レベルということだ。父上であれば、そんな剣に頼らずとも私を消し去ることができる。だが貴様ではな……」
そう言うと憐憫を含んだ笑顔をノヒローに向ける。
「強がるな! 本当は効いているんだろう」
そう言うと、ノヒローは次々に魔法弾を連発する。火属性、水属性、土属性、風属性、闇属性、核魔法……バリエーション豊かな魔法。魔術にそうとう精通していないと使うことができないような魔法のオンパレードであるが、マモンはそのすべてをガードすることなく受け切った。それでも無傷である。
アキラにもあの程度の魔法ではマモンに通用しないことがわかったようで、思わず「なんか花火みたい」とボソッと感想を漏らす。テシオンがそれに目ざとく気づき爆笑する。
「おい、ノヒロー! お前の魔法は人間から見ても花火程度にしか思えないみたいだぞ」
腹を抱えて笑うテシオン。アキラとテシオンを厳しい視線で睨むノヒローだったが、目線をそちらにやった瞬間にとてつもない痛みを感じる。マモンがシンプルにノヒローを殴ったのだ。
「おい、戦闘中に相手から目を逸らすバカがどこにいる? あぁ、ここにいたな」
あまりの威力に顎が砕けたのではないか?と思えるほどのパンチ。そしてそのパンチには魔力が込められていない。それでこれだけの威力があるのだから、魔力が込められたらどうなるのか? そう考えただけでノヒローは戦慄する。
「さぁこんなもんじゃギャラリーのみなさんは満足しないぞ。まだまだやろうじゃないか」
そう言ってニヤリと笑うマモンだったが、ふとアキラに向けて声をかける。
「アキラくん! 私がカッコよく勝利したら、この間作ってくれた鶏の竜田揚げを作ってもらえますか?」
戦闘中に食事のことを気にかけるなんて、どこまで自分をバカにすれば気がすむのかとノヒローは怒りに震えるが、まだダメージが残っており立ち上がることができない。
「もちろんです! 腕によりをかけて美味しく作りますね」
アキラがそう返したのを聞いて、マモンは目を輝かせてノヒローに向けて加速する。
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