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悪魔が来たりてお母さん?  作者: ももらら
天使? ボコってやるぜ!
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すべてわかっていた?

すべてお見通しだったのです。

「ふん。そんなのハッタリにもならないよ。降伏しないというなら道はひとつ。君たちには滅んでもらうから」

 そう悪態をつくツバラ。ノヒローとタヤンは頭が痛かった。本来の計画では幹部を一人ずつ殺して徐々に追い込む。最後に残ったサタンを襲撃する予定だった。しかし戦闘狂のツバラは「そんなまどろっこしいことしなくても大丈夫でしょう」と言うや、魔人を引き連れてアジトから飛び出したのだ。「マモンのときもそうだったが、こと戦闘となるとこいつは……」と思ったものの止める術が見つからず、今の状況を生みだしていた。

「よし! 魔人ども。悪魔たちに君たちの力を見せてあげな」

 そうツバラが発したとき、後方で凄まじい衝撃音がして数体の魔人が吹っ飛んだ。「何だ? 何が起こったんだ?」。そう思いツバラが振り返ったとき、そこにはいるはずがない者の姿があった。


 マモンである。


「ツバラ、貴様の手の内はもうわかっているぞ」

「マモン! なぜ君が」

 殺したはずのマモンが以前と変わらない姿で仁王立ちしている。状況が飲み込めないツバラたち。

「そもそも私たちがあなたがたの計画に気づいていなかった。本当にそう思っていたのですか?」

 サタンが小馬鹿にしたように吐き捨てる。気づけばヒデキはサタンたちの側に移動していた。

「石井ヒデキ! 貴様裏切ったのか?」

 激昂したノヒローが叫んだが、ヒデキは冷静に返す。

「裏切る? そもそも俺がお前らの味方だといつ言った?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ことはタヤンがヒデキに魔人になることを提案した前に遡る。アキラが庭の掃除をしているときに奇妙なクモをみつけたのだ。

「テシオン、これなんだかわかる? 新種のクモかな?」

「どれどれ」

 テシオンはサタンと並んで違和感に気づく才に長けている。ひと目でそのクモが人間界に存在しないはずのものであることを見抜いた。「これは魔界のものでもないな。微かに聖属性が漂っている。天上界の生物のようだな」。果たしてこのクモを放ったのが、敵か味方か。判断がつかなかったので、いったん泳がせることにした。家に入りアキラにも事情を説明する。アキラは「天上界のクモ? それを僕の家によこしてどうするっていうの」と困惑していたが、テシオンの言うとおりにすることを約束してくれた。

 その数日後である。ヒデキがアキラを訪ねてきたのだ。

「アキラ、久しぶり」。

「ヒデくん、どうしたの? うちに来るなんて珍しいね」

「ここにテシオンという悪魔がいるだろう? 会わせてくれないか?」

「どうしてテシオンのことを!」

 アキラはテシオンとヒデキが契約を交わしたことを知らなかったので、ヒデキがテシオンを知っていることに心底驚いた。そうしているとテシオンが奥から顔を出す。

「アキラ、お客さんか?」

 そしてヒデキの顔を見て嫌そうな表情を浮かべる。

「何しにきた?」

「すまない。助けてほしい」

 タヤンから魔人になることを提案されたこと。魔界の転覆に協力するように言われたことなど包み隠さず話すヒデキ。話を聞いてテシオンは「だから庭にあのクモがいたのか。タヤンだけではなく天上界も一枚噛んでいるということだな」と察しがついた。

「俺だってバカじゃない。あいつらは俺を捨て駒にするつもりだということくらいわかる。でも提案を断れば消されることも予想がつく。どうしたらいいのか教えてほしい」

 涙を浮かべて困っているヒデキを見て、アキラが怒りの声を上げる。

「テシオン、ひどいよ。ヒデくん、そこまで悪いことした? 契約のこともそうだし、今回のこともそう。そこまで追い込まれないといけないようなことはしてないでしょう」

 アキラの言葉を聞いてヒデキが泣きだす。

「俺、アキラにあんな酷いことをしたのに……。それでもアキラは俺のために怒ってくれるのか。すまない、アキラ。俺がバカだった。本当にごめんなさい」

「アキラ、君は本当に優しいな」

 そう言うと、テシオンは「ちょっと待ってろ」と言い残してサタンに連絡を取った。現状の説明をするとサタンたちも魔界の一部で怪しい動きを察知しており、「これですべてが繋がりましたね」と納得がいったようであった。

 サタン、アキラ、ヒデキとの話し合いで決まったことは以下のとおり。


●ヒデキは提案を飲んだフリをしてタヤンたちに帯同する

●斥候クモはあえて泳がせて、自分たちは気づいていないように振る舞う

●クモの形跡を辿って、逆に魔界側の斥候動物を放つ

●タヤン以外の悪魔、さらに言えば天上界も絡んでいるはずなので敵方の陣容がわかるまで極力ふだんどおり生活する


 そうした行動により、サタンたちはツバラサイドに見せていい情報しか与えていない。逆にツバラたちの行動はパズズが放ったイナゴやベルゼブブのハエ、テシオンのハチにより丸裸となっていた。要するにサタンたちの掌の上だったのだ。

 マモンが狙われていることも事前にわかっていたので、マモンは呼び出しの際に分身体を寄こしていた。その事実にノヒローたちは戦慄する。「本体ではなく、分身体なのにあの強さだったのか!」。

 分身体は本体の十分の一以下の力しか持っていない。それであの強さだったのだから、いま姿を現しているマモン本体が信じがたい力を有していることは、バカでもわかること。

「ふざけたことを!」

 怒りで震えるツバラ。

「アキラがああいう目に遭わされたのは、こっちの落ち度でもあるがな」

 そう言うとテシオンはツバラ以上の怒りを見せる。

「あたしたちだけじゃなく、アキラや久仁子ちゃんにまで害を成そうとしたのは絶対に許さんぞ、クソ天使!」

 一気にテシオンの魔力が解放される。その圧倒的な姿にその場に居合わせた全員が息を呑むのであった。

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