防具完成?
サタンたちの防具が完成したようです。
ふらふらとおぼつかない足取りでタックが製作室から出てきた。目の下に真っ黒なクマを作って疲労困憊という様子である。心配するアキラがタックに駆け寄った。
「タックさん、大丈夫ですか? とりあえずこれを飲んでください」
そう言って特製の卵スープを差し出すと、タックはひと息に飲み込む。
「あぁアキラさん、ありがとうございます。生き返りました」
アキラに礼を述べつつタックはサタンたちに向かって言う。
「みなさんの防具完成しました」
その言葉に幹部たちが色めき立つ。タックが運んできた各種防具を見ると、現状はさまざまな髪型、服装の大きな美少女フィギアにしか見えない。
「これがパズズの防具と同様に変形したり、意思疎通できたりするのですよね?」
そうベルゼブブが問うと、タックが答える前にひとつの防具が話しだす。
「私の相棒はあなたに決めた!」
ツインテールのフィギアがそう言ってベルゼブブと腕を組む。
「私はケイティ。よろしくねベルゼブブさん」
「なぜ私の名前を知っているのですか?」
「ひど〜い、覚えてないの? 天上界との戦争でいっしょに戦った仲じゃない」
その言葉を聞いてベルゼブブは思い当たることがあった。
「あなた、第一軍団の主戦力だった『紅蓮のケイティ』ですか?」
「そうだよ。久しぶり」
ケイティは先の戦争でベルゼブブとともに最前線で戦った勇敢な戦士であった。戦争終結直前に流れ弾に当たって命を落としたが、生きていればいずれ魔界の幹部に出世してもおかしくないくらいの力を秘めた存在。それだけにベルゼブブは「あと少し早く戦争が終わっていれば……」と残念に思っていたものだ。
「そうでしたか、ケイティ。またあなたと戦えること、嬉しく思いますよ。よろしくお願いします」
「あいかわらずベルゼブブさんは固いなぁ。でもよろしくね!」
次にアスモデが何の気なしに近づいたフィギアが話しだす。
「アスモデ部長。お久しぶりです」
「その声、まさかサランですか?」
「はい!」
サランは生前アスモデの下で働いていた優秀な部下であった。戦闘よりも内政で力を発揮するタイプであったが、決して戦闘力が低いわけではなかった。将来を嘱望されていたのだが、不治の病にかかってしまい短い一生を終えたのだった。
「アスモデ部長。部長とともにこうしてまた過ごせるとは夢にも思っていませんでした。よろしくお願いいたします」
生前と変わらぬ凛とした佇まい。よくできる社長秘書という感じのクール&ビューティーなフィギアに姿を変えて生まれ変わったのだ。
「あなたが死んでから本当に大変だったのですよ。とんでもない爆弾娘が現れましてね」
そう言うと、アスモデはチラリと視線をテシオンに向ける。テシオンはそれに気づかず、アキラの卵スープをすすっている。
「なるほど……お察しします」
みなまで言わずともアスモデの表情で読み取ったサラン。この辺りは生前と変わらず、アスモデとは阿吽の呼吸である。
「では私はアスモデ部長をお守りするということで」
「よろしく頼みますよ」
そして最後にサタンが残ったフィギアに近づくと、憎悪を帯びた声が聞こえた。
「サタン、久しぶりだな」
「その声はラフィーユですね」
「そうだ。生前の屈辱、忘れていないぞ」
ラフィーユは生前、サタンの右腕として活躍していた幹部であった。しかし天上界との戦争で魔界を裏切って、天上界側についたのだ。そして最終決戦とも言うべきサタンとゼウスの直接対決の場にも居合わせたのだが、サタン最大出力の魔法に巻き込まれて命を落としたのだった。
「あれは事故のようなものでしょう。ゼウスと戦っているときに周りに気を配るほど、余裕はありませんからね」
「そうだな。分不相応にあの場にいた私にも落ち度はある」
落ち着いた様子を取り戻したかのように見えたラフィーユだが、激しい口調を取り戻す。
「しかし、それでも貴様の魔法で命を落とした事実は変えようがない」
一連のやりとりを聞いていたアスモデが疑問を口にする。
「そもそもなぜあなたは魔界を裏切って天上界についたのですか?」
それに対してラフィーユはさらなる憎悪を見せる。
「私はかぼちゃ派なんだ!」
静まり返る一同。その思いは共通していた。「あぁサタン様の有能な右腕だと思っていたけど、この悪魔もちょっとアレなやつか……」。
アキラが「だから! どっちも美味しいじゃダメなんですか?」と声を上げると、ラフィーユが愕然とした表情になった。
「えと、その……。まぁそういう考え方もアリっちゃアリかもしれないわね……」
言葉を失うラフィーユにパズズが声をかける。
「ラフィーユさん、あとアイリーさんもケイティさん、サランさん。あんたたちその姿で味覚はあるとね?」
パズズの言葉にうなずくフィギアたち。
「こんな体になっているけど、五感は生前と変わらないよ」
アイリーがそう答えると、パズズがアキラの方に向き直ってお願いしてきた。
「アキラくん、悪かけどホットケーキば作ってくれんね。アキラくんのホットケーキば食べたら、ジャガイモだかぼちゃだと言い争うとがバカバカしくなるけん」
パズズの願いを快諾して、アキラはふたたびコージー城のキッチンへと向かった。
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