敵方、来襲?
ホットケーキパーティーです。
コージー城のキッチンでホットケーキの準備をするアキラ。さして難しくない手順のため、簡単に作れて美味しいというのがホットケーキの良いところ。材料をボウルに入れて泡立て器で混ぜている間、何度も様子を伺いにテシオンたちがやってくる。
「そんなに何度も来なくてもホットケーキは逃げませんから」
笑いながら言うアキラにふだんは冷静なベルゼブブが頭を掻きながら答える。
「邪魔してごめんなさい。あんなに美味しい料理をアキラくんがどうやって作っているのか、気になってしまって……」
「ベルゼブブさん、だったら作るところを見ますか?」
「いいのですか! 他の幹部も気になっていると思うので呼んでもいいですか? 私だけが見たとなると、後で何を言われるかわかったものではないので」
ベルゼブブに問題ない旨を伝えると、全員が連れ立ってキッチンへとやってくる。
「そんなに難しいことはやってないので、見ても面白くないと思いますよ」
そう言いながらアキラは手慣れた手つきで泡立て器で混ぜていく。その動きを見てサタンは感心していた。「ああも滑らかに手を動かせるのか。芸術的だな」。それは他の幹部たちも同じようで、アキラの調理する姿に見惚れていた。
「よし、準備OK。では焼きますよ」
そう言うと、熱したフライパンに材料を伸ばしていくアキラ。パチパチと音を立ててホットケーキが焼きあがっていく。漂う匂いに全員がよだれを我慢しながら静かに見入っている。これまで嗅いだことがない魅惑的な香りに大悪魔たちは魅せられていた。
「よし! できあがり」
アキラの言葉を皮切りに悪魔たちが騒ぐ。
「早くテーブルへ!」
「タックさんを呼んできます!」
「運ぶの手伝いますよ」
子供のようにはしゃぐその姿をアキラは優しく笑いながら見ている。そうしてタックを含む全員が食卓へ着席する。テシオンを除く全員が初めて見るホットケーキに興味津々である。
「さぁ遠慮なく食べてください」
アキラの言葉を皮切りに全員が熱々のホットケーキを頬張る。
「これは!」
アスモデが目を見開いて驚く。
「こんな甘い食べ物があったのですか! この上にかかっているのは?」
「それはメイプルシロップというものです。カエデという木から取れるものですね」
「木から? 木からこんな甘いものが」
サタンもその甘さにうっとりしながら食している。
「魔界で甘いものというと、ハチミツくらいです。それもこれほど甘くはありません。これは衝撃的な甘さ。そして美味しさです」
テシオンはいつものことと言わんばかりの顔でバクバク食べている。
そしてタックは完全に言葉を失っていた。「僕のようなできそこないの悪魔をバカにする悪魔がいないばかりか、これまで食べたこともない美味しいものを食べさせてくれる。コージー城の悪魔たち、そしてアキラさん。みんな優しいな。これは気合を入れて防具を完成させないといけないぞ!」。そう固く決意していた。
そのとき部屋にバアルとベリアルが武器を手に飛び込んできた。
「サタン様、大丈夫ですか?」
大きな声を挙げて武器を構える2人に対して、サタンはホットケーキを口いっぱいにしながら問う。
「どうしたのですか、2人とも?」
「これは……」
「おやつですよ」
2人の話によると、これまで嗅いだこともない甘い匂いが漂ってきたので、「敵方の幻惑魔法ではないか?」と考えたとのこと。知らぬ間に城の内部まで敵が侵入してきたと思って駆けつけたのだ。
「それは悪いことをしましたね。私たちはただ絶品のおやつを頂いているだけです」
サタンの言葉に拍子抜けしながらも、2人の視線はテーブルの上に注がれていた。
「サタンさん、この方たちの分も作りましょうか?」
アキラがそう言うと、サタンは「すみません、お願いできますか」と返しつつ言葉を繋ぐ。
「他の幹部たちも呼ぶので、その分も作ってもらえますか?」
「もちろん!」
サタンのお願いを快く受け入れるアキラ。かくしてコージー城で幹部たちのおやつパーティーが始まるのであった。
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