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人間界の料理ですか?

アキラ渾身のカツ丼が悪魔たちを魅了します。

「なにはともあれ、パズズが帰ってきたことですしタックさんも来てくれたので食事にしましょう」

 そうサタンが言うと、アキラがテーブルに器を並べ始めた。

「え! まさかアキラくんが作ってくれたと?」

 パズズが驚きながらそう言うと、テシオンが胸を張って答える。

「だってアキラがここにいるのに料理がないなんて残念だって、サタン様が言うんだもん。だからあたしが人間界から食材を調達してきたってわけ。調理器具に関しては人間界も魔界も大差ないからね」

 テシオンの言葉を受けてアキラが笑いながら話す。

「意識体でも料理ができるとは思いませんでしたけどね」

 アキラの料理を食べたことがあるパズズは思わず顔をほころばせるが、タックはなんとも言えない表情をしていた。

「あの……人間界の料理が出てくるということでしょうか?」

 なにかとんでもないものを食べさせられるのではないかと不安に思うタックにパズズが言う。

「そうよ。これがね本当に美味しかとばい。魔界の料理とは全然違うと。心配せんでもよかよ。というか、アキラくんの料理ば食べたら魔界の料理が食べられんようになるくらい美味しか」

 パズズの言葉を聞いても不安が隠せないタックにアキラが声をかける。

「タックさん、頑張って美味しく作りましたが、もしお口に合わなければ無理に食べる必要はありませんからね。美味しくなければ美味しくないと正直に言っていただいて大丈夫ですよ」

 アキラの言葉を受けてタックは「優しい子だな。これは残すわけにはいかない。どんなに不味くても完食するぞ」と決意する。その様子を見てテシオンが不敵な笑みを浮かべる。

「タックちゃん、だいたい考えていることはわかるよ。でもねアキラの料理をひと口食べたら……」

 たっぷり溜めてから「飛ぶぞ!」と大きな声を発するテシオン。それを見てサタンやアスモデ、ベルゼブブが思わず笑ってしまう。

「それでアキラくん、今日はどのような料理なのですか?」

 サタンが待ちきれない様子で尋ねる。

「今日は、テシオンが大好きなカツ丼です」

 アキラの答えにテシオンが小躍りして喜ぶ。人数分の丼と汁物のお椀、漬物を並べ終えると、凄まじい速さでテシオンが席に着く。同じくらいの速さでサタン、アスモデ、ベルゼブブ、パズズも着席。それを見て思わず笑顔がこぼれるアキラ。「僕の料理をこんなに楽しみにしてくれるなんて嬉しいな」。率直にそう思う。

 タックが恐る恐る席に着くと、全員が声を合わせて「いただきます」と唱和する。サタンたちにとっては初めてのカツ丼である。

「この黄色いのはなんですか?」

「それは卵です。人間界の鶏という鳥の卵を使っています」

 アスモデの問いにアキラが答える。それを皮切りに全員がカツ丼を口に運ぶ。

「美味しい」

「これがカツ丼……これは魔界を制圧できる美味さですね」

「エビフライも良かったけど、これも美味しいですね」

「アキラくん天才じゃなかね。これは反則ばい。美味すぎる」

 幹部たちが思い思いに感想を言うなか、タックは固まっていた。「なんだこれ? こんなに美味しいものが存在したのか!」

 その様子を見てテシオンが笑いながら「どうだい? 飛んだだろう」と言う。タックはなにも言わず、ひたすらカツ丼をかきこんだ。

「アキラさん、これは美味しすぎます。こんな料理があるなんて思いもしませんでした」

「お口に合ったなら良かったです」

 アキラが笑顔で返している間も幹部たちの箸は止まらない。何度もアキラ作のカツ丼を食べているテシオンもタックの様子を気にしながらも箸を止めない。

「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」

 ぴったり息があった声を至福の表情で発する悪魔たち。全員が満足しきっていた。タックが困った顔でアキラに話しかける。

「アキラさん、こんなに美味しいものを食べさせられたら、もう魔界の食事が貧相でどうしようもないものに思えてしまいます。この料理はダメです。悪魔の人生を壊します」

 その言葉にテシオンと幹部たち、アキラが明るく笑って食事会は終了したのであった。

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