大きさが変わった?
タック作の防具、完成です。
タックは頭を悩ませていた。美少女フィギアと同じ素材を使って防具を作る。きちんとした盾などの形でなくても攻撃を受け止めることができる形にすればいい。簡単にできると思っていたが、同じ材質にも関わらず形を変えると強度に大きな差が出たからだ。
何度も試行錯誤を繰り返すものの、なかなか理想的な強度が保てないのだ。「このままではパズズさんの期待に応えられない」。それだけは避けたいことであった。自分の生き方を否定せず、母親にも認めさせてくれた。その恩を返したいと強く願っていたのだ。そしてふと思いつく。「強度を保とうということばかりに意識が行っていたが、硬くしなくとも剣を防ぐことはできるのではないか? 柔らかい物のほうが斬りづらいという話を聞いたことがある」と。もちろんただ柔らかいだけではいけない。最低限の硬度は保ちながら、斬れない柔らかさ。それを実現できれば、伝説の防具とは違うものの変わらない効果は発揮できるのではないか。思考のベクトルを切り替えて、防具の作成を再開する。
「さすがに無理やろうかね」
パズズが小さな声でつぶやく。それにヤーサが反論する。
「パズズさん、そんなことないよ。タック、ああ見えてオタクだからとんでもないものを作ってくれるはず。期待して待ってくれてていいから」
ああ見えても何も、見たままのオタクだろうとパズズは考えるが、言葉にはしなかった。
「そうね。どっちにしても他にアテはなかし、頑張ってもらうしかなかよね」
そう言うとパズズは少しその場を離れてサタンに通信する。
「サタン様? 伝説の防具はやっぱりなかったばい」
パズズの発言は想定内のことであったから、サタンも特段驚かない。
「そうですか。仕方ありませんね。それで鍛冶屋の子孫は見つかったのですか?」
「うん、見つかったとは見つかったとやけど……」
パズズは子孫の一人が悪ドルであること、もう一人はアクセサリー職人で、いま防具の作成を依頼していることを話す。
「鍛冶屋ではなかったわけですね。それも仕方ありません。職業選択の自由は誰にでもありますから。そのタックさんが作ってくれる防具に期待するしかありませんね」
パズズから幹部用の剣が折れたことは聞かされたので、まったく期待できないというわけではなさそうだとサタンは考える。
「しかしさすがに美少女フィギアで剣を防ぐわけにはいきませんからね。どうか頑張って防具の形になるよう。待つしかありませんね」
その言葉を最後に通信を切ったパズズがタックの家まで戻ると、そこには疲れ果てたタックの姿があった。この1週間というもの不眠不休で防具作りに邁進していたのだから、それも当然であった。
「パズズさん、なんとか形になりました」
「本当ね! ありがとうね、タックさん。それで防具はどこにあると?」
「アレです」
タックの指し示した先には……先日見た美少女フィギアと同じものがあった。違うのはその大きさ。等身大とも言うべき、成人女性と変わらないサイズのフィギアが鎮座していた。
「え……」
絶句するパズズ。ヤーサも「これはないよ、タック」と呆れたような疲れたような顔をしている。モシハは無言を貫き、フッサは「うちの子、本当に大丈夫なのだろうか? やっぱり外に引きずり出したほうがいいんじゃないか」と不安げな表情だ。
「みんなの言いたいことはわかります。でもこの人形の機能を見たら、そのすごさがわかるはずです」
自信満々に告げるタック。
「自分でも信じられないものができたんです。同じものは二度と作れないと断言できます」
タックの言葉に「ただのデカい美少女フィギアじゃん」と思う4人だった。
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