一縷の望み?
新年明けましておめでとうございます。昨年読みにきてくださった皆様、本当にありがとうございました。今年も少しずつ更新していきます。温かく見守ってくださると嬉しく思います。よろしくお願いいたします。
「お疲れ様でした!」
元気な声でスタッフに声をかけてステージから降りてくる悪ドルたち。そのなかに伝説の鍛冶屋の血を引いた悪ドル・ヤーサがいた。
「ヤーサ、お疲れ様」
モシハが話しかけるとヤーサが満面の笑みで答える。
「じいちゃん! 観ててくれたの? どうだった?」
「うんうん、今日も良いステージじゃったぞ。お客さんも喜んでおったな」
「途中ダンスのステップ間違っちゃったんだよね。まだまだ練習しないと」
今日のステージについて楽しそうに話す2人の横にパズズは暗い表情で佇んでいた。
「あれ? じいちゃん。その隣の悪魔は? 知り合いなの?」
「お前も名前くらいは聞いたことあるじゃろう。この地域から出た一番の出世頭、パズズだ。魔界の大幹部として活躍しておる」
「マジで! あのパズズさん? 初めまして地域悪ドルをやっていますヤーサです」
「あぁ、どうも……」
ヤーサが差し出した手を力なく握り返すパズズ。頭の中は絶望的になった伝説の防具でいっぱいだった。パズズの表情を見てヤーサがモシハに問いかける。
「じいちゃん。パズズさん元気ないね。何かあったの?」
その問いに対してモシハは言いづらそうにこれまであったことを伝えた。伝説の防具を探し求めてこの地までパズズが来たこと。防具が見つからなくても伝説の鍛冶屋の子孫が見つかればと望みを託していたが、その子孫が鍛冶屋とは縁遠い悪ドルであったこと。話を聞いてヤーサが頭を掻きながら申し訳なさそうに言う。
「あちゃ〜、それは悪かったね。確かに祖先は伝説の鍛冶屋と言われていたみたいだけど、うちの一族で誰も鍛冶をやってないんだよね。その伝説の防具というのも、まったく心当たりがないわ。蔵はあるけど、中はお鍋とか包丁。多分それは祖先が作ったやつだと思うけど。特別強かったり切れ味が良かったりとかはないし……」
ヤーサの言葉にパズズが返す。
「いやあんたたちのせいじゃなかよ。祖先が鍛冶屋やったからって鍛冶屋にならんといかんってわけでもなかしね。悪ドルとして地方ば盛り上げよるとやけん立派なもんたい」
大幹部といっても決して居丈高にならず、ヤーサの立場を慮って発言するパズズ。その姿にヤーサは感銘を受けた。「期待した結果にならず怒鳴りつけたり、理不尽に罰を与えたりしないんだ。幹部ってもっとワガママだと思っていたけど、きちんとしているんだな」、そう思うと同時に「なんとか役に立ちたい」とも思う。
「そうだ! パズズさん。確かに鍛冶屋はいないけど、一族でめちゃくちゃ手先が器用なのがいるよ。私の従兄弟にあたるんだけど。伝説の防具とまではいかなくても、もしかしたら何か役に立つものを作れるかもしれない」
ヤーサの言葉を聞いてパズズの表情が少しだけ明るくなる。
「本当ね? それやったらその人ば紹介してくれたら嬉しか」
「もちろん!」
そうしてモシハを含めた3人でヤーサの従兄弟・タックの元を訪れることとなった。道すがらヤーサに聞いた話によると、タックは手先が器用なものの魔力が圧倒的に足りず、小さいころから周りの悪魔たちにバカにされてきた。その影響もあって今では家から出ることもなく、部屋で物作りに励んでいるとのこと。悪ドルは好きなようでヤーサの活動を応援してくれており、ステージで使う小物などもよく作ってくれるとのこと。
「応援してくれているけど、推しが私じゃなくて他のメンバーというところはムカついているんですよね」
笑いながら話すヤーサ。今でも週に一度はご飯を食べたりゲームをしたりと遊んでいる仲だという。
「じゃあ今日のステージで腕にはめていたアクセサリーもタックさんが作ったと?」
パズズの問いにうなずくヤーサ。
「すごかね〜。あがん精巧なアクセサリーば作れるとか。才能の塊じゃなかね」
素直にタックを褒めるパズズにヤーサは嬉しくなった。「男のくせにアクセサリーを作るとか」「家から出ても来ない変わり者」、周囲はタックをバカにする悪魔しかいなかった。しかし魔界の大幹部であるパズズはタックの凄さを認めている。タックをバカにしない悪魔に自分とモシハ以外では初めて会ったのだから、それも当然であった。
そうしてついにタックの家に3人は到着する。そのとき、タックの家のガラスが何者かによって叩き割られたのであった。
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