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子孫の職業は?

伝説の鍛冶屋一族に会えたパズズですが……。

 伝説の防具を作った鍛冶屋の血を引く人物。そういう者が果たして存在しているのか? まったくアテはなかったが、とりあえずパズズは魔界の東部に赴いた。「この辺に住んどったときもそういう話は聞かんかったもんね。どこにおるっちゃろうか」。そう呟きながら、まずは周辺の生き字引と称される老悪魔の元を訪れた。

「こんちは。じいちゃん、おる?」

「パズズか! ずいぶん久しぶりだな。お前も偉くなったもんだ」

 にこやかに老悪魔・モシハがパズズを迎えた。モシハは魔界誕生からその移り変わりを見てきた最古参の悪魔である。頭が切れ、魔力も膨大。本来であれば魔界の幹部にその名を連ねてもおかしくないのだが、いかんせん本人に出世欲が皆無。ずいぶん昔から隠遁生活を送っている。

「今日はちょっと頼みたかことがあって来たとさね」

 パズズがそう言うと、モシハの眼光が鋭くなる。

「まさかとは思うが、この私に戦争の加勢をしろと言うのではなかろうな?」

 モシハは悪魔のなかでは珍しく争いごとを嫌うタイプであった。正確に言うと、他者と関わりを持つのが嫌いなのだ。1対1ならばかまわないのだが、戦争のように複数の悪魔が集まって事を成すようなものは絶対に受け入れない。パズズは慌てて首を横に振る。

「違う、違う。ちょっと人探ししよるっちゃけど手がかりがなかけんが、じいちゃんならなんか知っとうかなと思って」

 魔界の大幹部ともなれば、ほとんどの情報は入手できるはずである。それにもかかわらず自分のところを訪ねてくるとは、一体誰を探しているのか? モシハは疑問をそのままぶつける。

「それで? 誰を探しているんだ」

「伝説の防具を作った鍛冶屋の子孫」

 パズズの答えを聞いてモシハが押し黙る。心当たりはある。しかしそれを教えてパズズが落胆するのは目に見えている。どうしたものか?と思案していた。

「じいちゃんでも知らんかな?」

「会うとガッカリするやもしれんぞ。それでも会ってみるか?」

 モシハの言葉に力強く頷くパズズ。「付いて来い」。そう言うと、モシハはパズズを近くの広場まで連れて行った。

 広場では悪魔界のアイドル(悪ドル)グループがキレのあるダンスを踊りながら歌っている。会場は大盛り上がりだ。

悪美アクビガールズ、最高だよな」

「もうたまらん! 可憐すぎる」

 ファンたちがうっとりした目でステージを応援していた。

「じいちゃん、なんねこれ?」

「ご当地悪ドルじゃ」

 なんだそりゃ?とパズズは不思議に思ったが、モシハが説明する。

「お前らがいる魔界の中心部は栄えているだろうが、この東部は寂れていくいっぽうでな。なんとか盛り上げようと役場の悪魔たちと地元の我々老悪魔会で考えたのが、アレじゃよ」

 このジイさん、こんな事やっていたのか? 誰かと何かをやるのは嫌いじゃなかったのか? そう思ったパズズだが、いまは伝説の鍛冶屋一族を探すのが最優先。

「それで? この会場のどこかに鍛冶屋の子孫がおるってこと?」

 その言葉に首を縦に振るモシハ。

「あの子じゃよ」

 そう言って指差した先には、ステージで元気に跳ね回る悪ドルが。

「は! まさかあの女の子が?」

 パズズの言葉を受けてモシハが静かに頷く。

「伝説の鍛冶屋一族を探しているということは、何からしの武具を作ってほしいのだろうが。あの子が鍛冶をやると思うか?」

 モシハの言葉に力なく首を横に振るパズズ。

「確かに血は引いておる。鍛冶屋の才能もあるやもしれん。でもあの子は生まれてこのかた、槌なぞ握ったことはない。少女のころから悪ドルとして活動しておるからの」

 パズズはあまりに意外な展開に膝から崩れ落ちる。会場にいるファンの男たち、そのなかに一族の者がいると思っていたからだ。「会うとガッカリ」というのは、てっきりニート的なアレだと考えていた。それならばブン殴ってでも鍛冶をやらせればいいと。しかしまさか悪ドルとは……。

 途方に暮れるパズズにモシハが「会うだけ会ってみるか?」と言ってくれたが、放心状態のパズズにその声は届いていなかった。

防具、どうやって手に入れましょうか?

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