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大したことなくない?

マモン死亡……。

「ごめんね」

 そう言ってヒデキが突き出した槍が深々とマモンに突き刺さる。マモンは最期の言葉を残すことなく、痛みから漏らす苦悶の声もなくその場に倒れる。

「よしよし。第一関門は突破だね。残るは3人。しかし手こずらせてくれたね〜」

 ツバラは喜色満面といった感じだが、ノヒローとタヤンに向き直って冷たく言い放つ。

「それにしてもノヒロー、タヤン。君たちの力ってこの程度なの? ハッキリ言って全然役に立ってなかったよ」

 悔しそうに俯くタヤンと違ってノヒローが反論する。

「確かに戦力にならなかったことは認めよう。しかしそもそもマモンにドリンクを飲ませてから闘うはずだったのに、飛び出していったのは貴様だろう? 想定外のことをやっておきながらその態度はないのではないか?」

 ツバラは深くため息をつきながらそれに答える。

「あのさぁ。この後、パズズ、ベルゼブブ、アスモデも狙うわけだけど、彼らのような大悪魔を相手に常に物事が想定の範囲内で収まると思っているの? どういうことが起こっても不思議ではないよ。今日の君たちを見ていると、予想外のことが起こったときに対応できるような気がしないんだけど……」

 確かにツバラの言うとおりであった。相手は魔界を代表する大悪魔たち。いつどのようなことが起こっても不思議ではない。今日もツバラの罠がうまく機能したから良かったようなものの、もしそれすらも不発であったらおそらくノヒローとタヤン、ヒデキは消されていただろう。

「終わったことだからグチグチ言いたくないけど、もう少し気合を入れてもらわないと。次はこのようなことがないように気をつけてよね」

 ツバラの言葉に「わかった」と力なくうなずくノヒロー。

「それで次のターゲットはどうする?」

 ツバラの問いに気を取り直してノヒローが答える。

「次はパズズだ。奴は幹部のなかでは思慮が足りないほうだ。盟友であるマモンが殺されたことを知ったら、たとえサタンに止められても確実に動く」

「次はパズズくんかぁ。どんな罠を用意しようかな」

 ノヒローの言葉を聞いて、ツバラが楽しそうに計画を練っている。その姿を見て一抹の不安を覚えるノヒロー。「俺はマモンにまったく歯が立たなかった。しかしこいつは違った。対等以上に渡り合っていた。余裕すら感じられるほどに。もしことがうまくいって、魔界を掌握した場合こいつにすべてを牛耳られるのではないか?」。天使が魔界を支配するなど常識的には考えられない。特にメリットがないからだ。しかしツバラの考えはどうにも常識外れなところがある。慎重なタイプかと思えば、真っ先に敵を攻撃する。言葉と行動が一致しない。いまは「君が魔界を支配すればいいじゃない」とノヒローに言っているが、それもどう変わるかわからない。「いまは味方だが油断はできない」と警戒を強めるノヒローだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 アスモデと話をしていたサタンが唐突に暗い表情で俯いた。

「どうされましたか、サタン様?」

「マモンが殺されたようです」

 サタンの言葉に驚きのあまり動きが止まるアスモデ。「あのマモン様を? サタン様に次いで魔界の実力者であるあの方を?」。何かの間違いではないかと思いたかったが、確かにマモンの気配が完全に魔界から消えている。

「敵の力はそうとうなものですね。正直な話、大天使と一部の幹部であればマモン一人で対処できると私は考えていました」

「俄かには信じられません。マモン様を倒せるとしたら、それこそサタン様か神くらいのものだと」

 2人のやり取り、斥候クモを通して見ていたツバラは余裕の表情で会話を聞いていた。

「ねぇノヒロー。マモンくんって本当に魔界で2番目に強いの?」

「あぁ。それは間違いない」

「サタン父さんたちの会話だと、サタン父さんか神様くらいしかマモンくんを倒せないとか言っているけどさぁ」

 ツバラは呆れつつ勝利を確信していた。確かにマモンはなかなかの強さであった。魔法を完全に封じられ、体力も限定されたなかであれだけの戦いを見せたのだから。しかしでは神しか倒せないというほど強いかというと、「絶対にそんなことはない」とツバラは思う。

「ナンバー2があれなら、他の幹部も大したことなさそう。サクッと殺して魔界をノヒローくんのものにしちゃおうよ」

 そう言って、ツバラを中心にパズズ殺害計画を練り始めるのであった。

次の標的はパズズ。映画『エクソシスト』の悪魔です。

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