弱体化できているのか?
マモンVSワンちゃん
魔法を封じられ、体力も大きく制限されているマモン。それでもその体術は超のつく一流であった。噛みつこうと襲いかかってきた天界犬を受け流し、抜き手で頭を貫く。これで残りは3匹。間髪入れず蹴りを見舞い、さらに1匹を消滅させる。残り2匹は怯えており、マモンに向かっていけない。
「もう! 使えないなぁ」
ツバラは苛立ちながら残りの2匹を自らの手で消滅させる。
「ノヒローとタヤンはどこだ? まさか貴様、あいつらを手にかけたのか?」
そう問いかけるマモンにツバラは答えない。
「ほい! これはどう? グレードアップしたワンちゃんだよ」
そう言って指をパチンと鳴らすと、先ほどと同じく天界犬が5匹現れる。違ったのはそれぞれ頭が3つあるところだ。
「ケルベロス……のようなものか」
マモンがそう呟くのを楽しそうにツバラは眺めている。先ほどより単純に手数が3倍になっているだけでなく、こちらの犬は噛みつきだけでなく口から魔法を放ってくる。マモンはすぐに反撃できるように、最小限の動きで躱していく。
15の魔法弾がマモンに向かってさまざまな角度から迫るが、それを冷静に避ける。
「あ〜、魔法を防いでもこれだけやれるんだ。面倒だなぁ」
そう言ってツバラは何かを投げる。それがマモンの体を掠めた。たいした傷ではなかったはずだが、傷跡が大火傷を負ったように熱く痛む。
「へへへ、痛いでしょう? ロンギヌスの槍をコピーして僕が作った武器だよ。本物ほどの威力はないけど、君を殺すくらいなら問題ないからね」
マモンの体を傷つけた武器はツバラの手元に戻っている。彼はロンギヌスの槍と同じ効力を持ったブーメランを作っていたのだ。「犬の頭が15。さらにはロンギヌスの槍か。なかなか厄介だな」。マモンはそう考えたが、それでも「なに、問題ない」と思い直す。
そのときであった。マモンの右手を強力な縄が拘束した。
「強いのは知っていましたが、ここまでとはね。マモン、でももうおしまいですよ」
声の主はノヒロー。魔力を練りこんだ強力な縄でマモンの右手の自由を奪ったのだ。結界により魔力が使えないマモンにはそれを引きちぎる手立てはないというのがタヤンの見立てであった。
「ノヒロー! どういうことだ?」
マモンの叫びにノヒローが冷たく笑って答える。
「どういうことって、こういうことですよ。あなたたち幹部を順に始末して、魔界を頂くのです」
「貴様が不満分子、裏切り者だったのか!」
「私の企みにも気づかないなんて、次期魔界頭首が聞いて呆れますね」
その様子を陰から見ているヒデキがタヤンに尋ねる。
「なぁ。毒入りドリンクをマモンに飲ませてから襲うんじゃなかったのか?」
ヒデキの問いにタヤンは深いため息をついて答える。
「そうだよ、計画ではな。でもあの大天使様が飛び出して行ってしまった。計画変更だ」
「確かに結界でマモンの能力は制限されているようだが、毒を盛ることで弱体化さえたうえでの結界という計画だったよな? ということはマモンの能力は計画していたのよりも弱ってはいないということじゃないか?」
さらなるヒデキの問い。タヤンは「そうなんだよな。ドリンクを飲んでの結界ならば、マモンの能力を25%くらいまで低下させられた。しかしいまの状態は40%くらいまでしか弱らせることができていない」と考えながら、ヒデキを叱咤する。
「変わってしまったものは仕方ないだろう! とにかくお前はトドメ!というタイミングで出て行くんだ。いいな?」
タヤンの怒号を聞いて、ヒデキは「これ失敗したんじゃないか?」と心配になる。目の前のマモンは3つの頭を持つ犬5匹と大天使が手にした武器に対峙している。さらにはノヒローに右手を拘束もされている。どう見ても絶体絶命の状況なのに、まだどこか余裕があるように感じられた。
「ふむ。裏切り者だとわかった以上、貴様もそこの大天使と同じく粛清対象だ」
そう静かに言うと、マモンは縄を引きちぎった。驚くノヒロー。
「どういうことだ! なぜこの縄を引きちぎれるんだ!!」
「ん? ふつうに腕力でやっただけだが?」
マモンの言葉が信じられず、口を開いたままのノヒロー。
「貴様ら卑怯者にタイマンは無理だろう。いいから全員でかかってこい! そこの陰に隠れているタヤンと魔人もな」
その言葉にヒデキは絶望する。「バレてるじゃん……」。
これだけの敵を相手にマモンはどう立ち回るのか?
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