ワンちゃん、登場?
ワンちゃんたちの見た目はドーベルマンをゴツくしたような感じです。
「待ってくれアキラ。肉体にはすぐに戻らないというのか?」
アキラの意外な発言にテシオンは驚いていた。アキラは真剣な眼差しでテシオンに話しかける。
「うん。いまの僕は人間が言う魂、意識体ということだよね? だとしたらテシオンが元々いた魔界にも行けるんじゃないかな?」
アキラの問いにテシオンは答えるが、意図するところがわからない。
「そりゃ行けることは行けるけども……」
なぜアキラが魔界に来たがるのだろうか? どうしてもわからずテシオンは困った顔でアキラに尋ねる。
「アキラ、魔界に来てどうしようっていうんだ?」
その問いにアキラは怒りの形相で答える。
「今回のことを仕組んだ悪魔がいるんでしょう? 久仁子ちゃんとても怖い思いをしたはずだ。僕は黒幕を絶対に許せない。この手で一発殴ってやらないと気がすまないんだ」
これまで見たこともないアキラの怒りの感情。テシオンはうれしかった。「そうだよ、アキラ。もっと自分の感情のままに発言したり行動してもいいんだ」。そう思ってクスクスと笑う。
「アキラもやるときはやるってことだね。いいよ。いっしょに今回の黒幕をぶっ飛ばしに行こう!」
そのやりとりを見ていたゼウスは「怒るときも人のためなのか。本当に大した少年だ」と感心していた。そしてある提案をする。
「アキラくんの気持ち、テシオンさんの気持ちよくわかりました。それではアキラくんの肉体と意識体が途切れないよう、そこは私が全力で守ります。少々魔界に行ったくらいでは問題ありません。バカな悪魔と大天使をぶっ飛ばしてきてください!」
「マジか! それだけは気がかりだったんだよ。ゼウスさんありがとうね」
テシオンが深々と頭を下げる。そしてアキラの方へ向くと「いっちょやったるか!」と気合を入れて叫ぶのだった。
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マモンはノヒローからの呼び出しに応じて、魔界の最果てまで来ていた。以前、会合に使用したダンジョンの側である。ノヒローから「くれぐれも内密に」という伝言が届いたので、サタンはおろか幹部たちにも行き先を告げずにやってきていた。
「おい、ノヒロー。待たせたな。どこにいるんだ?」
そう問いかけるマモンの頬を何かが掠めた。すごい勢いで迫る物体を紙一重で避けたのだ。「これは……矢か?」。そうマモンが考えた瞬間、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「ハッハー、さすがにこれは躱すかぁ。この一発で死んでくれたら楽だったんだけどね」
声の主は大天使ツバラ。見た目はヨーロッパの合唱団にいそうな無邪気で可愛らしい男の子のようだが、中身はまったく可愛くなかった。
「お前が魔界をかき乱している大天使か……。この場で倒してやる!」
「おっと。マモンくんの相手は僕じゃないよ」
そう言ってツバラが召喚魔法を唱える。すると呼び出しに応えた5体の大きな犬型の獣が出てくる。
「このワンちゃんは軍用犬なんだ。その牙は君たち悪魔の泣き所、聖属性の魔法を帯びている。噛まれたら大変だよ〜」
なかなか強力な魔力量の獣が5体。しかし「問題ない」とマモンは考える。
「舐めるなよ。これでも魔界の次期頭首だ。これくらいの獣にやられる私ではないぞ」
マモンが魔力の出力をアップさせる。圧倒的な力が溢れてくる、その様を見て獣たちが一瞬躊躇している。
「血筋だけで後継者に指名されるほど、魔界は甘くないんだよ。私が父上の後継者になっているのは、父の次に魔界で強いからだ!」
そう言いながら手前にいた獣をひと蹴りで消滅させるマモン。
「へ〜、やっぱり強いねぇ。じゃあこうしましょう!」
ツバラがいたずらっ子のような笑顔を浮かべて指をパチンと鳴らす。途端に強力な聖属性結界が張られて、マモンの能力が大きく制限される。
「天使の結界か……」
「正解! マモンくんの能力は大幅に制限されちゃうよ。当然魔法は使えない。そしてワンちゃんたちの能力は大きくブーストされるんだ。さぁどうする?」
険しいマモンの表情を見ながらキャッキャッと笑うツバラ。つい先日まで石橋を叩いても渡りそうにないような慎重派であったが、戦いが始まると途端に様子が変わっている。
ツバラは大天使の中で出世欲と戦闘欲が異常に強かった。要は戦闘狂なのだ。始まるまでは慎重すぎるほど用意をするし、なかなか実行に踏み出さない。しかしいざ戦いが始まると、誰よりも先陣を切って敵に突っ込む。そういうタイプなのだ。
「ふむ。魔法は封じられたか。しかしそれでこのマモンが殺せると思うのであれば、大間違いだぞ!」
マモンは肉弾戦に備えて、ゆったりとした構えで犬たちのほうを向き呼吸を整えるのであった。
マモンの戦闘力がいかんなく発揮されます!
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