久仁子の思いが届いた?
昨日もたくさんの方が来てくださいました。誠にありがとうございます。
病床でアキラはうれしく思う反面、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。入院してからというもの、カオル、久仁子、タカオ、奇跡は毎日病院に姿を見せている。カノンやクララ、アヤメ、チエリ、タモツ、5人組も毎日とはいかないものの頻繁にアキラの元を訪ねてきている。みんなが自分を心配してくれている。帰りを待っていてくれる。ぼっちだったころでは考えられない。そうした友人たちに感謝しつつも「僕のためにわざわざ来てもらって申し訳ないな」とも考える。
意識体のアキラは病院内を歩いて観察していた。重い病気に罹った子供や一人寂しく入院している老人。家族と仲良い人もいれば、誰も見舞いに来ない人もいる。「僕は本当に恵まれている」。そういう思いを抱きながら「早く良くならないとみんなに心配かけちゃうな」と考えていた。
そのころテシオンはアキラのいる病院へ向けて歩いていた。途中にある神社に見慣れた人影が見えたので歩みを止める。久仁子であった。
久仁子は母から聞いたお百度参りを実行していたのだ。もちろんそんなことは気休めにしかならないことは本人もわかっているのだが、何かしないではいられない。足に血を滲ませながら一生懸命神に祈る久仁子。それを遠くからテシオンは見つめて温かい気持ちになった。「アキラ、早く良くならないといけないぞ。久仁子ちゃんもみんなもまた君と笑いながら過ごす日が来るのを待ち望んでいるんだから」。そう思いながら踵を返したとき、眼前に途轍もない威圧感と圧倒的な包容力を持った男性が立っていた。「敵か? それにしては様子がおかしいな」。そう感じながらテシオンは自ら声をかける。
「誰だ、あんた?」
テシオンの言葉を聞くや男性はその場で土下座した。
「え! ちょっと……」
絶句するテシオン。男性は土下座のままテシオンに話しかけた。
「あなたが悪魔テシオンですね。この度は大変申し訳ないことをしました。アキラくんにあんな大怪我を負わせてしまうなんて」
そう言って頭を下げ続ける男性。「こいつがアキラに仕掛けたというわけではなさそうだが……」。そう考えながらも警戒を解かないテシオン。
「申し遅れました。私は天上界を預かっておりますゼウスという者です」
「ゼウスだって!」
驚きのあまり立ち尽くすテシオン。天上界のトップ、サタンと並び称されるあのゼウスが、いきなり目の前に現れたのだからそれも無理はなかった。
ゼウスによるとテシオンと出会ったのは偶然だったとのこと。あまりにも強い願いを抱いてお百度参りをする人間がいたので、興味を持って顕現したところテシオンがその場にいたのだ。
「私のところにも一部の跳ね返った大天使が魔界でトラブルを起こそうとしているという話は入っています」
「そっちも把握はしていたんだ。じゃあその大天使さんをどうにかしてくれないか?」
「もちろんこちらとしてもペナルティは考えております。しかし事は魔界で起こっているので、魔界内のことには手出しができない。奴が天上界に戻ってこないと何もできないのです」
「なんだか面倒くさい話だね。それで? その大天使の名前はなんていうの?」
「ツバラという者です。単独で行動しており、今回のことは天上界の意図することではありません」
「ということはそのツバラをどうしても、そっちは手出ししないと?」
「もちろんです」
嘘をついているようには見えない。だとしたらツバラをぶち殺しても天上界とは揉めないということになる。
「そいつは良かった。あたしは今回のことは絶対に許せないんだ。そのツバラという大天使は、この手でボコボコにするから。生きて天上界に戻るかどうかはわからないよ」
下級悪魔にすぎないテシオンが大天使をボコるという。常識的に考えれば、絶対に無理なはずだがこの悪魔からは何か底知れない異常な力を感じる。ゼウスは「お好きになさってください」と返した。
そして今回のお詫びとしてゼウスが提案する。
「上條アキラくんの回復を私の聖魔法で手伝いたいと思います」
「マジか!」
「アキラくんの病室まで私を連れて行ってください」
一介の人間に対して絶対神であるゼウスが手を施すという。テシオンは驚きのあまり、首を力なく縦に振った。
アキラの病室へ神と悪魔が向かいます。
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