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我慢しなくてもいい?

アキラ幽体離脱しています。

 深夜アキラは意識を取り戻す。「あれ? ここどこだろう」。不思議に思いながら視線を彷徨わせると、自分が宙に浮いていることに気づく。下を見るとベッドの上に横たわった自分の姿があった。体に何本もの管が繋がれ、顔には包帯が巻かれている。「え! あれ僕だよね?」。混乱するアキラにテシオンが声をかける。

「アキラ、とりあえず意識体の君は戻ったな」

「テシオン!」

「肉体としての君はまだ眠ったままだ。覚えてるか? 車に撥ねられたことを」

 テシオンの言葉に記憶が蘇るアキラ。

「そうだ! 久仁子ちゃんは? 久仁子ちゃんは無事なの?」

 こういう状態になっても自分のことではなく、他人のことを思いやるアキラ。それだけに改めて犯人への強い憎しみが増すテシオン。

「大丈夫。久仁子ちゃんは無事だよ。君が救ったんだ」

「そうか。よかった……」

 安心するアキラであったが、自分の状態がどうなっているのかという疑問をテシオンに投げかける。

「今の僕ってどうなってるの?」

「今アキラは俗に言う幽体離脱の状態だな。魂だけが肉体から抜け出していると言えばわかりやすいか」

 テシオンの答えに納得するアキラ。だから自分の体が見えたのかと。

「これってどうなるの?」

「正直なんとも言えない。アキラの肉体、損傷が激しいみたいで……」

 自分の状況がそうとう厳しいことがわかったアキラ。

「もし死んだら父さんに悲しい思いさせちゃうな、親不孝な息子だよね」

 そう呟くアキラを見て、テシオンの怒りはさらに増幅される。「犯人には死よりも恐ろしい罰を与えてやる!」。そう考えながらテシオンがアキラを落ち着かせる。

「確かにアキラの肉体は厳しい状況にはある。しかし助かる可能性はある。というか、助かる可能性のほうが大きいとあたしは考えている」

 テシオンによると、死を迎えた場合、人間の意識体、俗に言う魂は魔界や天国と人間界の中間にある世界で目覚めるという。臨死体験をした人が見る花畑が広がっているような世界。そこからの復帰はとても困難だとのこと。それからすると肉体の近くに意識体があるアキラは蘇生する可能性が高いそうだ。

「あたしも花畑で最初はアキラを探したけど、見つからなかったからちょっと安心したんだ。厳しい状況に変わりはないけど、きみは回復すると思う」

「そうなんだ。だったらよかった。でも絶対ではないから安心はできないよね」

 その言葉に首を縦に振るテシオン。

「大切なのは諦めないということだよ。意識体が諦めてしまうと、一気に向こうの世界が近づく。カーくん、タカ、ミラ、久仁子ちゃん……そのほかにもアキラの帰りを待っている人はたくさんいるんだ。絶対に諦めるなよ」

 テシオンの言葉に勇気づけられるアキラ。これまで伝えていなかった思いを口にする。

「テシオン、本当にありがとう」

「急にどうした?」

 いきなりお礼を言われて戸惑うテシオン。アキラは言葉を続ける。

「テシオンが来てくれてから、僕はぼっちじゃなくなったんだ。友達と呼べる人がたくさんできた。もしテシオンが来なかったら、僕は変わらずぼっちだったよ。テシオンがそれを変えてくれたんだ。だからありがとう」

 そう伝えられて赤面するテシオン。

「アキラはあたしの自慢の息子だからな! 血は繋がっていないかもしれないけど、息子みたいなもんだ」

 そういってアキラの意識体を優しく抱きしめるテシオン。

「テシオン……」

「お母さんと呼んでくれてもいいぞ」

 テシオンのその言葉に涙がこぼれるアキラ。

「甘えたかったよな? 弱音を吐きたいこともあったよな? それを堪えて、カーくんに心配をかけないよう一生懸命頑張っていたんだよな?」

 その言葉に泣きながらうなずくアキラ。

「もうさ、そこまで頑張らなくてもいいじゃないか。何もかも投げだすときがあってもいいじゃないか。アキラはそのままでいいんだ。カーくんにとっても、あたしにとっても自慢の息子なんだ!」

 テシオンの言葉を聞いて、アキラはもう何も話せなくなった。号泣して言葉にならなかったのだ。これまで我慢してきた涙が一気に溢れでた。母親と手を繋いで帰宅する子供を見て羨ましく思ったことは一度や二度ではない。しかしそれが父親に伝わると悲しませてしまう。アオイが亡くなって悲しいのも寂しいのも自分だけではない。父はもっと深く悲しんでいるはずだ。そう思うと自分の寂しさや悲しさから目を背けて、気づかれないようにするしかなかった。優しく朗らかに見えても、アキラはギリギリの線で頑張っていたのだ。それをテシオンは誰よりもわかっていた。

「アキラ。きちんと蘇生したら、みんなで楽しく笑顔で暮らそう。あたしやカーくんにもっとワガママを言わないとダメだぞ。甘えないとダメだぞ。そしてタカやミラ、友達にも甘えていいんだ。自分ばかり頑張らなくていいんだ」

 アキラの肩を優しく抱いてテシオンは語りかける。そしてアキラが泣き止んだとき、この日聞きたかった本題を切りだした。

テシオンが本当のお母さんのようになりました。ダメ悪魔だけど母性は豊かです。

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