禁忌?
マサトとタカオ、テシオンが話し合います。
「マサトくんは初めて会うね。あたしはアキラの母方の親戚、アイってんだ」
「はじめまして」
マサトと初対面のテシオンが挨拶してマサトもそれに答える。
「アイ姐、それで話ってなに?」
いまにも犯人捜索に乗り出したいと逸る気持ちを抑えてタカオがテシオンに訊く。
「2人が考えていることはわかってる。犯人を探しだして復讐しようっていうんだよな」
テシオンに図星をつかれたが、マサトもタカオもまったく動じない。
「アキラは俺の可愛い弟みたいなもんです。その弟をあんな目に遭わせた奴らをこのままにしておけないですよ」
「まさかアイ姐。今回のことは警察に任せるようにということじゃないよね? 俺も我慢できないんだ。俺と泉さんならどんな奴らが相手でも負けるわけない」
2人の怒りを目の当たりにしてテシオンは静かに言う。
「ありがとう。アキラのことでそんなに怒ってくれて」
そして憤怒の表情に変わって言葉を続ける。
「でもね。今回のことでいちばん怒っているのはあたしなんだよ。犯人たちはあたしが殺す。大げさな表現ではなく文字通り命を奪う。悪いけどここはあたしに譲ってくれ」
マサトも竹原やカオルがテシオンに負けたことは聞いていたが、どうにも信じることができていなかった。しかし眼前で怒りに震えるテシオンを見て「これは勝てるはずがないわ」と納得した。
「君たちの分まであたしがやる。悪いね、これは決定事項なんだ。マサトくんにとってアキラが弟なら、あたしにとってアキラは息子なんだよ。大事な息子を傷つけられて平気で暮らせるほど、あたしはのんびりできちゃいないんだ」
言葉を重ねるごとに怒りを増幅させていくテシオン。その様子を息を飲んで見つめるマサトとタカオ。あまりに圧倒的な力量差を感じさせる怒りの感情に当てられて、2人とも脚が震えている。
「君たちの思いはありがたく受け取る。でもこれはあたしがやらなきゃダメなんだ」
その言葉を拒否することはできなかった。2人とも「わかりました」と答えるが、タカオはひとつだけ付け加えた。
「アイ姐。さっき殺すって言ってたけど。それでアイ姐が捕まったりしたらアキラは悲しむよ。殺したい気持ちはわかるけど、絶対にダメだからね」
「わかってるよ。タカありがとう。久仁子ちゃんのフォロー、よろしくね」
その言葉を最後に3人は解散した。2人を見送ってからテシオンはアスモデに連絡を入れる。
「アスモデ部長、いまよろしいでしょうか?」
いつになく真面目なテシオンの言葉に何事かと驚くアスモデ。
「どうしましたか、テシオン?」
「アキラが事故に遭いました」
「!」
思わず絶句するアスモデだったが、どうにか言葉を絞りだす。
「それで彼は無事なのですか?」
「いま入院中ですがあまりよろしくない状態ですね」
アスモデは混乱しつつも事実確認をする。
「それで、アキラくんの事故に反対勢力の連中が絡んでいるのですか?」
「それはまだわかりません。これから調べます」
「お願いしますよ」
そしてテシオンはアスモデにとって驚愕の言葉を繋げた。
「部長、犯人たちは強制解魂します」
「テシオン、それは!」
アスモデが驚くのも無理はなかった。強制解魂は魔界において禁忌とされているからだ。生きている人間を殺すのではなく、無理やり魂だけを切り離す。その魂は永久に転生することはなくなる。あまりにも苛烈な手段であるため、実行すると天上界から目をつけられることは間違いない。テシオンが強制解魂を行った場合、ゼウスとサタンが結んだ不可侵条約は破棄されるだろう。そうなると戦争待ったなしになるのだ。
「さすがにそれは許可できません」
そうアスモデが発言する後ろで声が聞こえてきた。
「いいでしょう。テシオン、強制解魂を許可します」
「サタン様?」
声の主はサタン。その意外すぎる発言にアスモデは今日何度目かわからないくらい驚いた。
サタンの真意はどこに?
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