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久仁子の責任? タカオの責任?

アキラ、生命のピンチです。

 病院へと急ぐテシオン。「どうか無事でいてくれ」。そう強く願いながら足を早める。アキラが事故に遭ったという知らせを受け、後悔を滲ませていた。「あたしがもっと警戒していたらこういうことには……」。どれだけ悔やんでも悔やみきれない。知らせによると、そうとう危ない状態らしい。「アキラにもしものことがあったら、あたしは!」。考えがグチャグチャになる。涙が頬をつたう。「アキラ、絶対に死ぬなよ」。何度もそう願いながら、やっとの思いで病院へたどり着いた。

 病室のロビーにはアキラと親しくしている人たちが集合していた。カオル、タカオ、奇跡、久仁子、ユキヒロ、アヤメ、チエリ、タモツ、カノン、クララ、そして5人組。そのなかに見慣れない顔が1人いた。県外の大学に通っているマサトだった。

「カーくん、なにがあった? アキラは? 無事なのか?」

「アイちゃん、来てくれてありがとう。いまアキラは集中治療室にいる。お医者さんの話だと、正直……かなり危ないらしい」

「そんな! なにが? なにがあったの?」

 テシオンの言葉を受けて、涙で顔が酷いことになっている久仁子が号泣する。

「私の……私のせいなんです」

 久仁子によると下校中に久仁子を拐おうとしてきた2人組の男たちがいたらしい。そこを通りがかったアキラが彼らを撃退したのだが、去り際にアキラを車で撥ねて逃げていった。ちょうどタカオが駆けつけてきたその目前で。

 タカオが怒りをにじませながら言う。

「アイ姐、アキラは自分が大怪我しているのに『久仁子ちゃん大丈夫だった? 怪我はない? 怖かったよね』って、ずっと久仁子の心配ばかりしていたんだ。もう少し俺が早く着いていたら、こういうことにはならなかった……。俺が遅かったから。俺のせいだ」

 タカオたちの言葉をカオルが否定する。

「タカオくんや久仁子ちゃんのせいではないよ。悪いのは撥ねた奴らだ。それにアキラは久仁子ちゃんが無事だっただけでうれしいはずだよ」

 カオルの言葉を受けて、久仁子がさらに涙を落とす。

「とにかくいまはアキラの頑張りにかけるしかない。みんな集まってくれてありがとう。僕も一度家に戻っていろいろ準備するから、みんなも今日は帰りなさい」

 カオルの言葉に久仁子が顔を横に振る。

「イヤです! アキラさんの側にいたい。私にはなにもできないけど、アキラさんを病院でひとりぼっちにしたくありません」

 そう決意する久仁子にカオルは笑顔で話しかける。

「久仁子ちゃん、本当にありがとう。アキラも喜ぶよ。でももしこれで久仁子ちゃんが体調を崩したら、アキラの意識が戻ったときにおじさん叱られちゃうよ」

 カオルの言葉を受けて、タカオが久仁子に「とりあえずいったん帰ろう」と優しく声をかける。久仁子は納得がいかない様子だったが、とりあえず首を縦に振る。

 全員が病院を出た際にマサトがカオルに声をかけた。

「師範代、久しぶりに会えたのにこういう形で……」

 そう不義理を詫びると、カオルは優しくそれを否定する。

「マサト、大きくなったな。わざわざアキラのために来てくれてありがとう」

 カオルが頭を下げる。「俺なんかに頭を下げないでいいのに」。マサトはそう思うが、歳下の人間にも礼儀を尽くす姿を見て「だから俺は師範代を尊敬しているんだよな」と考える。

「師範代、アキラには口止めされていましたが。覚えてますか? あいつが小学4年生のころ、冬に入る前にボロボロになって家に帰ったこと」

 記憶を辿っていくと「そういうこともあったな」とカオルは思い当たった。

「あいつのことだから竹やぶで遊んでいてこけたとか言ってませんでしたか?」

「そういえばそういうことがあったな」

「あれじつは違うんですよ」

 マサトによると、マサトの家で保護していた猫が姿を消したことがあったそうだ。まだ子猫ということもあり、カラスに襲われるかもしれない。これから冬に入るのだから凍えてしまうかもしれない。子猫の捜索をアキラも手伝ってくれたとのこと。竹やぶで子猫を発見したアキラは自分が斜面で転んで落ちながらも子猫をマサトの家まで連れてきてくれた。

「あのときも自分が怪我だらけなのに、『マサト兄ちゃん。猫ちゃん見つかったよ。早く暖かいお部屋に入れてあげて』って、猫のことばかり気にしていたんですよ。久仁子ちゃんの話を聞いて、あいつはあのころと変わらないんだなって……」

 マサトはそう言って涙ぐんでいた。そして「アキラをこういう目に遭わせた人間を絶対に許さない。この手で殺してやる!」と強く思っていた。それはタカオも同じであった。2人の様子に気づいたカオルが声をかける。

「マサト、タカオくん。バカなことを考えるんじゃないぞ。君たちが考えているようなことをやってもアキラは喜ばない。絶対に変なことをしないでくれ。お願いだから」

 焦燥しているカオルの願いを2人は「わかりました」と聞き入れる。しかしそれでも「探し出して殺してやる」と本気で思っていた。

 病院の前で解散して、みんなが帰ろうというときにテシオンがマサトとタカオに声をかけた。

「タカ、それとマサトくんだよな? ちょっといいか。話がある」

 そのまま3人は病院近くの公園へと移動した。

テシオンの話とは?

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