アキラファンクラブ結成?
最初の料理はエビフライ!
魔界の大幹部たちが期待に満ちた目で機械の前に待機している。誰も口には出さないが、この瞬間を待ち望んでいたのだ。
「来ましたね」
サタンがそう言うと、目の前の機械(転送装置)から料理が姿を現した。ご飯、味噌汁、お漬物、そしてメインディッシュはエビフライである。
「サタン様、これはどういう食べ物でしょうか?」
アスモデが問う。サタンは器が乗せられているトレーに添えられたアキラからのメモを見ながら回答する。
「まずメインは人間界のエビを使ったフライという料理です。名前はそのままですね。エビフライというそうです」
それを聞いてベルゼブブが眉をひそめる。
「エビ? エビってあのエビですか? それはちょっと怖いですね」
彼がそう言うのも仕方なかった。魔界でエビというと、すごく凶暴な生き物であり弱い悪魔が犠牲になることもある。危険生物として駆除の対象となっているのだが、身がほとんど取れないうえに微量の毒を含んでいる。駆除後、廃棄するしかない生き物だからだ。
「言いたいことはわかります。しかし人間界のエビは別物ですよ。心配しなくても大丈夫です」
その言葉を聞いてもまだベルゼブブは半信半疑といった気持ちが拭えない。続けてマモンが尋ねる。
「父上、この飲み物は……泥水に見えるのですが」
マモンの言葉にパズズが重ねる。
「これはあれやろう? うちらに泥水すすっても戦いに勝たんといかんという意思統一ば図るためのもんやろう」
その言葉に吹き出しながらサタンが言う。
「違います。これは味噌という人間界の食べ物を使用したスープです」
いきなり味噌と言われてもまったくイメージがつかない幹部たち。サタンは上条家を訪問した際に脳に念写した味噌の画像をテレパシーで共有した。
「父上、やはり泥じゃないですか!」
マモンが再確認したかのように言う。それに幹部たちも同意する。
「れっきとした食べ物です。あなたたちが要らないというのであれば、全部私が頂きますよ」
サタンの言葉に慌てて幹部たちが「要らないとは言っていません」と否定する。
「そしてこの白いのが稲という植物を使ったご飯という食べ物。人間界ではポピュラーな食べ物です。横の彩り豊かなのがお漬物というご飯を食べる際によくいっしょに出されるものです」
興味深くそれらの食べ物を見ている幹部たちにサタンが言う。
「とにかく食べてみないことにはわからないでしょう。しのごの言わずに食べましょう」
サタンの言葉に続けて、全員で「いただきます」と唱和する。まずは味噌汁に口をつける幹部たち。
「なんね、これ。ちょっとしょっぱかけど、後に旨味が残る。不思議な味やね〜」
パズズが驚きの感想を漏らす。「これやったら何杯でも飲めるばい」とつぶやいている。他のメンバーも奥深い味わいの味噌汁を堪能しているようだ。
次にご飯を食べてみるとベルゼブブが静かに感想を口にする。
「これはなんだか落ち着く食べ物ですね」
そう言いつつ漬物にも手を伸ばす。
「ご飯だけで食べるのもいいですが、この漬物といっしょに食べるとまた違った味わいになって美味しいです」
その感想を笑顔で聞きながら「そうでしょう。じつはアキラくんの食事で最初に驚いたのがこの漬物だったのですよ」とサタンが返す。
「ではメインのエビフライを食べてみましょう」
サタンがそう言うと、幹部たちは少し怖がりながらエビフライを口に運ぶ。「本当に食べられるのか?」、そういう疑念が残っていたからだ。しかしひと口食べて、その疑いは霧散する。
「美味い!」
いつも冷静なアスモデが大きな声を上げる。パズズは無口になったまま一心不乱に頬張っている。マモンもその美味さに言葉を失っているようで、動きが完全に止まっている。
「サタン様。これが人間界のエビですか? あまりにも魔界と違いすぎて……」
ベルゼブブがやっとの思いで口を開く。
「ですよね? すごく美味しいでしょう。私も最初にアキラくんの料理を食べたときには言葉を失いましたから」
笑顔で答えていたサタンだが、トレーにもう1枚のメモがあることに気づいた。その紙を手にとって目を通すサタン。思わず優しい表情を浮かべる。
「みなさん、アキラくんからメッセージがあります。『詳しいことは聞いていませんが、魔界で大変なことが起こっていると知りました。美味しく作れるように頑張るので、みなさんもお体には気をつけてください』だそうですよ」
自分たちに食事を作ってくれるだけではなく、細やかな心遣いをするアキラ。幹部たちは一発で彼の大ファンになった。
「テシオンが警戒していますが、敵がアキラくんに危害を加えないよう我々も注意しないといけませんね」
アスモデ言うと、全員が大きく頷く。
「彼の人間性、魂の高潔さはおそらく大天使クラス……いや下手をすると神に比肩するかもしれません。テシオンだけでなくアキラくんが私たちの味方にいるのも頼もしいことです」
サタンの言葉に全員が納得している。
「絶対に彼に被害が及んではいけません。もしそういうことが起こったら、我々大悪魔の名折れです。全力で守りましょう」
そう続けたサタンの言葉に異を唱える者はいなかった。
次回、アキラがトラブルに巻き込まれます。
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