食べさせませんよ?
久仁子、アキラと会えて喜んでいます。
揚げ物の下準備が終わり、サラダを作り始めたアキラ。そのときインターホンが鳴った。
「ごめんください」
「こんにちは」
タカオと奇跡、久仁子、ユキヒロが来たのだ。カオルが出迎えるために玄関に向かう。
「いらっしゃい。タカオくん、奇跡ちゃん。そちらの2人がタカオくんの妹さんと弟さんだね」
「久仁子です。本日はお招きいただきありがとうございます」
「ありがとうございます。ユキヒロです」
元気に挨拶する2人にカオルが笑顔になる。「うちと同じで片親だと聞いたけど、礼儀がしっかりしているな。お母さんが愛情を込めて育てた証だろうな」と感心するカオル。
「さぁ上がって。もういつでも始められるから」
カオルが4人をリビングへと招き入れる。リビングへ入ると、キッチンからアキラが顔を出して挨拶する。
「タカくん、ミラちゃんいらっしゃい。久仁子ちゃんとユキヒロくんは久しぶりだね。元気そうでよかった」
「上條さん!」
久仁子は久々の再会に感動して固まっている。その久仁子を見て集まった友人たちがざわつく。
「かわいすぎる」
「なに、この美少女」
「この人が兄貴の彼女さんか。お似合いだな」
口々にボソボソと呟いていると、テシオンがひときわ大きな声を上げた。
「あなたが久仁子ちゃんか! 話はタカから聞いていたけど、こりゃ本当にすごい美少女だな。まぁタカもイケメンだから当然っちゃ当然か。弟くんもまた美形だな。さぞかしお母さんも美人さんなんだろうな」
絶世の美女ともいえるテシオンに褒められて、思わず久仁子は「そんな美少女なんかじゃないです」と恥ずかしそうにしている。タカオやユキヒロも顔を赤く染めている。
「もう! アイちゃんはデリカシーがないんだから」
アキラが突っ込むと口を尖らせてテシオンが反論する。
「そんな腹の足しにもならんもんは要らん!」
久仁子は潤んだ瞳でアキラに話しかける。
「上條さん、やっと会えた。私ずっとまた会いたいと思い続けていたんです。こうして会えて本当に……」
言葉に詰まった久仁子だが、小さな声で「嬉しい」と絞り出すように言った。その姿は男性であれば思わず守りたくなるようなものであったために、カノンとクララは「こりゃ勝てないわ」と白旗を上げている。チエリは「次の漫画、ヒロインはこの子をモデルにしよう」と考えていた。タモツは「これも上條くんの人徳。これほどの美少女を夢中にさせるとは興味深い」とまたまた変な感想を漏らす。5人組は「兄貴の彼女さんなら姉御でいいのかな? でも俺たちより歳下だよな?」とこれまた変な方向で考えている。
「久仁子ちゃん、僕も会えて嬉しいよ。勉強を教えていっしょにハンバーグを食べたのが昨日のことみたいだね」
そうやって優しい笑顔を向けるアキラを見て久仁子は「私にはこの人しかいない! 絶対に上條さんのお嫁さんになる!」と改めて決意していた。
2人の初々しい様子を見て、テシオンとカオルはまたゲスな顔をしていた。
「カオルさん、あなたあの美少女の義父になるやもしれませんよ」
「ほう。それは僥倖。そうなるとアイさんにとっても親戚になりますな」
「ここは姑根性を発揮していびらないといけませんかのう」
大人気ない大人のくだらない会話にアキラが思わず突っ込む。
「だから2人ともそういうこと言わないの。もう! 久仁子ちゃん困っているじゃないか。いい大人が子供をからかうってどうなの?」
そう言われても2人の大人はニヤニヤしている。
「兄貴、結婚式には俺たちも呼んでもらえるんですか?」
「私、ブーケトス参加する!」
「ライスシャワーって炊きたてのお米でいいんだっけ?」
アキラと久仁子を無視するかのように盛り上がる友人たち。アキラが助けを求めるようにタカオと奇跡を見たが……。
「アキラが俺の義弟か。他の男はダメだが、アキラならこっちからお願いしたいくらいだ」
「私とタカが結婚したら、アキラっちが義弟かぁ。なんかいいよね、夢が広がる」
こちらもまったくアテになりそうになかった。
「もうそれくらいにして。いまから揚げ始めるからね。これ以上、いろいろ言う人には食べさせてあげません!」
アキラがそうハッキリ言うと、全員しおらしい態度に戻った。
「アキラ様。もう言いません。後生ですから他の連中はともかくあたしにだけでもコロッケを! メンチカツを! 唐揚げを!」
そう懇願するテシオン。みんなから白い目で見られていることはこの際考えていない。
「わかったから! みんな大人しく食べること」
全員が元気よく「は〜い」と返事したので、アキラは早速油に食材を投入するのだった。
ここから酒池肉林はありませんが、揚げ物パーティーがいよいよ始まります。
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