敵と覚悟?
揚げ物パーティー開催です
「こんにちは」
アヤメ、タモツ、チエリが上條家にやってきた。今日は待ちに待った揚げ物パーティーの日。アヤメからアキラの料理がとても美味しいことを聞いていたので、タモツもチエリも期待に胸を膨らませていた(タモツはカオルと話すことができることもあって、さらにワクワクしていた)。
「いらっしゃい。よく来たね。アヤメちゃん、チエリちゃん、タモツくんだね。アキラはいまキッチンで準備中なんだ。遠慮なく上がって」
カオルが笑顔で3人を出迎える。
「アヤメちゃん、いらっしゃい。オムライスどうだった? 弟くんたちは喜んでくれた?」
アキラの料理教室で作ったアヤメのオムライスを絶賛したテシオンが話しかける。
「アイさん! あのときはお世話になりました。弟たち『これ本当に姉ちゃんが作ったの?』と疑ったんですよ。それだけ美味しかったんだと思います」
苦笑しながらアヤメが答える。横でチエリが「オムライスかぁ。いいなぁ」と小さな声で呟く。
「タカくん、ミラちゃんはまだですか?」
そう問いかけるアヤメにテシオンが含みのある笑いで答える。
「アヤメちゃんも聞いてるだろう? 例の久仁子ちゃん。なかなか着ていく服が決まらなかったらしくて、やっといま家を出たってさ。そりゃ兄貴とその彼女からすれば心配だろうから、ずっと側にいるよな」
「恋する乙女ですね〜」
久仁子のことを知らないタモツとチエリもこの会話でなんとなく察した。今日はどうやらアキラを好きな女の子が来るらしいということを。
「こんにちは」
また玄関で声がする。姿を現したのはカノンとクララ。
「いらっしゃい」
カオルが再度玄関で出迎える。
「カノンちゃんとクララちゃんだよね? さぁ上がって、上がって」
「お邪魔します」
初めてカオルと会った2人はカオルが想像以上のイケオジだったことでテンションが上がる。
「アキラくんからして、父親もイケオジだとは思っていたけど」
「予想をはるかに超えてきたね」
ヒソヒソ話す2人がまさか自分のことを話しているとは夢にも思わず、カオルはリビングに案内する。
そしてまた玄関から声がした。
「こんにちは、兄貴いますか?」
「お招きいただきありがとうございます!」
アキラを襲撃した5人の男たちがやってきたのだ。あの一件以来、5人はアキラを「兄貴」、テシオンを「師匠」と呼んで慕っている。
「お! 来たな、ロクデナシども」
「師匠、お久しぶりです!」
不思議なやり取りにカオルが怪訝な顔をする。
「アイちゃん、この子たちは?」
「あぁ。アキラを襲った連中だよ。アキラとあたしでボコボコにしたけど」
「!」
驚いたカオルを見て5人はその場に土下座する。
「兄貴の親父さんですよね? 俺たち本当にバカでした。申し訳ございません。親父さんにぶっ飛ばされても仕方ないことだと思ってます」
「本当にごめんなさい」
口々に謝罪をする5人。そんな彼らにカオルは優しい顔を向ける。
「君たちじゅうぶんに反省したんだよね? それにアキラが呼んだということは、いまでは仲良くしているんだろう? だったらおじさんがどうこう言うことではないよ」
カオルの器が大きいことに5人は感動していた。
「さすがは兄貴の親父さんだ」
「こんな親父さんだから、兄貴が寛大な人に育ったんだな」
そのときアキラがキッチンから顔を出した。
「みんないらっしゃい。もう仕込みはすんでるから、タカくん、ミラちゃん、久仁子ちゃんが来たら揚げ始めるね」
アキラの姿を見て全員が期待のこもったキラキラした目をしている。5人組(カズキ、ミツオ、ジュン、リョウジ、マサキ)もテシオンから散々アキラの料理が絶品であることを聞かされていたので、今日を楽しみにしていたのだ。
「兄貴、自分たちにも何か手伝えることはありませんか?」
そうカズキが声を上げる。
「その呼び方変えてくれないんだね」
苦笑いしながら、特に何もないからお茶でも飲んで待っているようにアキラは伝えた。
「兄貴って、アキラくん何したんですか? 襲われたのはさっき聞いたけど……」
アヤメが不思議そうにテシオンに尋ねた。タモツやチエリも不思議顔だ。そこでテシオンは先日アキラが襲撃された後に5人を治療したことを話したのだが、3人の反応はさまざま。
「アキラくんらしいといえばらしいけど。本当にもう……」
アヤメは襲撃とアキラの強さに驚きつつもアキラの人柄に半ば呆れた様子。「さすがに人が良すぎるでしょう」とボソッと呟く。
「襲いかかってきた人間を懐柔する能力。いまでは兄貴と慕われている。やはり上條くんは興味深いな」
タモツは妙な感心をしている。
「リアルヒーローだわ。次の漫画、主人公はアキラくんをモデルにしよう」
チエリは自分の漫画にアキラを登場させる気満々だ。話を聞いていたカノンとクララも改めてアキラを評価している様子。
5人は居心地の悪さを少し感じながらも声を上げた。「でも俺たち、いまでは兄貴のために命を捨てる覚悟をしてますから! どんな敵が来ても兄貴には指一本触れさせません!」
力強く言い切る5人に「敵なんて来ないし、そういう覚悟いらないから!」とアキラがキッチンで叫んで、リビングは笑いに包まれるのであった。
次回、久仁子とアキラが久々に再会します




