自己紹介しませんか?
昨日も更新できませんでした。本日は数本アップする予定です。
「え! 上條くんは毎日それだけ家のことをやっているのか? それであの成績をキープできているのか。すごいな、きみは」
驚きのあまりタモツの箸が止まる。
「いまは役割分担しているから、僕の担当は料理だけなんだけどね」
笑いながらアキラが答える。
「いや、本当にアキラくんの料理はめっちゃ美味しいんだよ。いますぐレストランを開けるくらい」
アヤメがアキラの料理について熱っぽく語る。
「上條くん、すごい。私なんて取り柄がなにもないから羨ましいな」
チエリが小さな声でアキラを褒める。
4人は屋上でお弁当を広げて、お互いの話をしていた。アキラとアヤメはお互いのことを知っているが、タモツやチエリはアキラやアヤメと交流がほとんどなかったので昼食を摂りながら自己紹介をしていたのだった。
「三橋さんは絵がとても上手だし、浅井くんは勉強がとてもできるし。みんなに比べたら私は自慢できるようなことがないなぁ」
そう自己を卑下するチエリにアキラが反論する。
「でも春木さんも絵が上手じゃない。アヤメちゃんの絵と路線は違うけど、ノートに描いているイラストや漫画、とても上手だったよ」
以前、チエリが落としたノートをアキラが拾って渡す際にイラストを見たことがあったのだ。
「上條くん、覚えてたの? 恥ずかしいな」
「なんで恥ずかしいのさ? あれだけ上手に描けるということは、才能もあるんだろうけど、絵が好きで努力し続けたからじゃない? すごいことだと僕は思うな」
アキラは続けてタモツのことも褒める。
「浅井くんは決して体が丈夫じゃないから、勉強時間だってかぎられるだろうに毎回学年トップの成績だし。それもすごく努力している証しだよね。僕からしたら、アヤメちゃんも春木さんも浅井くんもすごいなぁと思うよ」
アキラの言葉を聞いて、タモツがすごく優しい顔になった。
「上條くん、きみって本当に……」
タモツがそう言いかけたときにアヤメが嬉しそうに大きな声を上げる。
「アキラくんは人の良いところを見つける天才!」
その言葉にタモツも大きくうなずく。その瞬間、チエリはポロポロと涙を落とし始めた。
「春木さん、どうしたの?」
心配するアキラにチエリは少しずつ話し始めた。
「私、これまで絵を見られて、『気持ち悪い』とか『変な絵』と言われたことはあるけど、上條くんみたいに褒めてくれる人はいなかったの。だから自分には才能がないんだと思ってた。褒められたのが本当に嬉しくて……」
そう言って下を向くチエリにアヤメが声をかける。
「チエリちゃん、よかったら絵を見せてくれない?」
「私の絵なんて。美術部のアヤメちゃんから見たら……」
「嫌ならいいけど、私はチエリちゃんの絵を見てみたいな」
そう言われて、おずおずとノートを差し出すチエリ。アヤメはノートを見た瞬間、完全に動きが止まった。心配そうにその様子を見守る3人。しばらくしてアヤメがチエリに問いかける。
「チエリちゃん、これまで絵を習ったこと、誰かに教えてもらったことは?」
「ない……。やっぱり変だよね」
いまにも泣きだしそうなチエリ。アキラとタモツは絵の専門的なことがわからないだけにオロオロするだけ。
「チエリちゃん、すごいよ! 天才かもしれない。誰にも習わずこのデッサン力。構図も陰影のつけ方も完璧だと思う」
アヤメの言葉にチエリは先ほど流しそうになったのとは違う涙を流した。
「本当に?」
「うん。悔しいけど私なんかより、はるかに絵の才能がある。美術部に入らない?」
「そんな、私なんて……」
躊躇うチエリにアキラが声をかける。
「私なんて……って、そんなこと言わないほうがいいよ。春木さん、才能あるんだから他の人からしたら嫌味に聞こえるよ」
アキラの言葉を聞いてアヤメが苦笑いする。
「アキラくんもよく『僕なんて』って言うじゃない」
「そうだっけ?」
それを聞いてチエリやタモツも笑ってしまう。タモツは改めて「上條くんはすごいな」と感心していた。
「そうだ! 今度うちで揚げ物パーティーをやるんだけど浅井くんと春木さんもよかったら来ない?」
アキラがそう言うとアヤメも「そうだよ。2人ともおいでよ!」と同意する。
「僕がお邪魔してもいいの?」
「うん。父さんもその日いるから。浅井くん、父さんとも話してみたいんじゃないの?」
「行きたい!」
タモツの参加はあっさり決まった。チエリは迷っているようだが、アヤメの「私、チエリちゃんともっともっとお話ししたいな」という言葉に後押しされて参加することとなった。
かくして上條家での揚げ物パーティーは当初の予定を上回る大人数で開催されることとなったのであった。
アキラ、たくさん揚げるしかない!
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