旦那と息子?
テシオン、人間界に来て初のガチギレです。
昼食を終え教室に戻ったアキラとアヤメ。クラスメートにとっては目を疑う光景が休み時間に繰り広げられることとなる。午後イチの授業後、アヤメがアキラに話しかけた。
「アキラくん、何読んでるの?」
「『悪魔が来たりてお父さん?』っていう小説」
「面白いの?」
「う〜ん、普通かな。いやあまり面白くないかも(笑)」
「そうなんだ。読み終わったら貸してくれない?」
「もちろん」
これまで挨拶以外でほとんど会話がなかった上條くんが学校の人気者・アヤメちゃんと話している。あんな良くない噂が立っている相手に平気で話しかけるなんて、アヤメちゃんどうしたの? クラスがざわついていたが、おかまいなしにアヤメは会話を続ける。
「そういえばこの間会ったタカくんとミラちゃんって、アキラくんの家にはよく遊びに来るの?」
「最近は毎週、週末に遊びに来てくれてるよ」
「そうなんだ。私、あの2人とまた話したいなと思っているんだよね。今度遊びに行ってもいい?」
「うん。タカくんとミラちゃんも喜ぶよ」
上條くんの家にアヤメちゃんが? 上條くんに友達がいる? さらにクラスはざわつくのであった。
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その日帰宅したアキラはテシオンに今日のことを相談した。テシオンは神妙な面持ちで聞いていたが、不快な表情を浮かべてアキラに言う。
「それって完全にアキラを陥れるための嘘だよな」
「やっぱりそうだよね」
悲しい目でそう呟くアキラ。
「アキラが誰かに恨みを買うとは思えないから、完全に逆恨みだろうな」
テシオンには噂の出所に心当たりがあった。以前少しだけ見かけた石井ヒデキ。アキラを見る目がおかしかった。アイツがいちばん怪しい。しかしアキラとは幼馴染だという。現時点では証拠もない。
「アキラは誰が噂を流したか、心当たりはあるのか?」
「疑いたくはないけどね。ある」
「誰なんだ?」
「たぶんヒデくん」
自分の予想とアキラの考えが一致していることにテシオンは驚いた。
「どうしてそう思うんだ?」
「昔から僕のことを嫌っているのはなんとなくわかっていたし、中学校でも同じような噂があったんだよね。あの中学からいまの高校に進学したのは僕とヒデくんだけだし」
テシオンは「まぁ間違いなくアイツだろうな」と思いながらアキラに訊き返す。
「で、アキラはどうしたい?」
「アヤメちゃんに害が及ばなければいい。父さんのことを悪く言われているのは腹がたつけど、僕に実害はないし」
「そうか。確かにカーくんのことを悪く言うのはムカつくな。じゃあアキラ、もしアヤメちゃんやアキラに害が及ぶようなら言ってくれ。あたしがどうにかするから」
「な、なにをする気なの?」
「忘れたのか? あたしは悪魔だぞ。魔力があるんだよ。どうとでもできる」
ニヤリと笑う姿を見て、アキラは久しぶりにテシオンに対して恐怖を覚えたが、テシオンの次の言葉でその恐怖は忘れてしまう。
「あたしの旦那と息子をコケにしてタダですむと思うなよ……」
ボソリと呟くテシオン。アキラはその言葉に驚いて聞き返した。
「え! いまなんて言ったの?」
「は? あたしなにか言ったか?」
テシオンは自然と「旦那と息子」と口にしていた。そのことに本人は気づいていない。アキラは「聞き間違いかな? いま旦那と息子って言ったような気がするけど」と少し気になったが、続くテシオンの言葉でその疑問は吹き飛ばされた。
「で、アキラくん。今日の夕飯はなにかね? そろそろリクエストしていたメンチカツだと嬉しいのだがねぇ」
「もう! そう言うと思って今日はメンチカツだよ」
「やったぜ父ちゃん。明日はホームランだ!」
小躍りしながら喜ぶテシオン。一気に場が明るくなる。やはりテシオンはテシオン。食い意地が張った揚げ物好きということを再認識して、思わず笑顔になるアキラ。
「じゃあ準備するから!」
そう言ってキッチンで下ごしらえを始めると、ワクワクした目でアキラを見つめるテシオン。「なにも悪いことが起こらなければ、テシオンがなにかすることもないよね」。そう願いながらメンチカツを作っている。
「マジでアキラとカーくんを傷つけるなら許さん!」。おちゃらけた様子を見せながらも改めてテシオンがそう強く思っていることにアキラは気づかなかった。
テシオンの考える報復はどのようなものか? とりあえずヒデキは酷い目に遭います。
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