噂の内容は?
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クラスの違和感にアヤメが気づいたのは、アキラに対してクラスメートが極端によそよそしくなってしばらく経ってからのことだった。「なぜ上條くんが挨拶しているのに返事をしないのだろう?」。ぼっちとは言え、これまで挨拶くらいは交わしていたのが、アキラが挨拶しても誰も返さない。返すのは自分と女子の陰キャ代表ともいえる春木チエリの2人だけ。あのアキラがクラスメートを不快にさせるようなことをするとは思えない。だとしたらなぜ? その答えはすぐに見つかった。
昼食の時間、アキラは相変わらず屋上でぼっち飯。アヤメはクラスで友人とお弁当を広げていた。そのときアヤメの友人である一ノ瀬カオリが重い口を開いたのだ。
「ねぇ上條くんへのみんなの態度、おかしくない? 何かあったの?」
アヤメの質問にカオリが答える。
「アヤメ、あの話聞いてないの?」
「あの話?」
詳しく聞いてみると、その内容は酷いものだった。アキラの父親はマルチ商法にハマっていて、クラスメートの保護者に会うと執拗に勧誘してくる。アキラが中学時代にぼっちになったキッカケは父親の影響だったとのこと。小学校のころに付き合いがあった友人たちが疎遠になったのも、友人たちの保護者にアキラの父親がマルチ商法をしつこく勧めたことが原因。上條家はこの辺りでは目立つ豪邸だが、それもそうやって保護者たちを勧誘したり騙したりして得たお金で建てたらしい。
「私もこの話を全部信じているわけじゃないよ。でももし本当だったらお父さんやお母さんに迷惑がかかる。だから上條くんとは距離を置いておきたいんだよね。もともと仲が良かったわけでもないし」
それに対しもう1人の友人・国友ミサも同調する。
「噂が本当じゃなかったとしてもだよ。火のないところに煙は立たずって言うじゃない? 上條くんの家、何かあるんじゃないかな」
つい先日上條家にお邪魔して母方の親戚・アイにも会ったことがあるアヤメからすると、バカバカしいただの嘘でしかないのだが、友人たちはアキラがどういう人間か知らないので噂に踊らされるのも仕方ないかもしれない。しかしそれでも我慢ならなかった。「明らかにこの噂は上條くんに悪意を持って流されている」。そう確信したからだ。
「何よそれ……。そんな噂を信じるなんてバカみたい」
そう言い残してアヤメは席を立ち屋上に向かった。後ろでカオリとミサが呼び止めているのはわかったが、もはやどうでもよかった。「そんなことで上條くんを無視するなんてどうかしてるよ!」。アヤメはどうにも我慢ならなかった。
「上條くん!」
「三橋さん。どうしたの? また料理のことで何か訊きたいことがあるの?」
いつもと変わらない笑顔でアヤメを迎えるアキラ。その優しい笑顔を見るとアヤメは噂が立っていることが悔しくて泣きそうになる。「こんな良い人を陥れようとするなんて!」。
アヤメは教室で聞いた上條家の噂をアキラに伝えた。
「こんなのおかしいよ! 上條くんのお父さんがそういうことする人じゃないことくらい、お父さんに会ったことがない私でもわかる。もしそんな人が父親だったら、上條くんが毎日お父さんのためにって家のことを頑張るはずがない!」
続けて「それに上條くんがこんなステキな人に育つわけがない」と言いかけて、思わず顔を赤らめてしまう。アキラは黙って話を聞いていたが、少し困ったような顔をして笑った。
「そうか。それでこの数日みんなの様子がおかしかったんだね」
「上條くん、ちゃんとその話は嘘だって訂正しようよ!」
興奮してそう言うアヤメを見てアキラは静かに答える。
「いや、いいよ」
「え?」
アキラの意外な答えにアヤメは戸惑う。
「三橋さん、ありがとうね。僕やお父さんのために怒ってくれて。でも結局、そういう噂話を信じてしまう人。面白おかしく言う人。そういうのはどうしようもないから。父さんのことを悪く言われるのは頭にくるけど、実害があるわけでもないし」
さらに続いたアキラの言葉にアヤメは絶句した。
「三橋さんも僕に話しかけたりしないほうがいいよ。巻き込まれて嫌な思いをしたら大変だから。大丈夫。僕、ぼっちには慣れてるからね」
この期に及んで、自分の立場を気遣ってくれるアキラにアヤメは唖然としたが、決意のもと大きな声を出した。
「決めた! 私、上條くんの友達なんだから。友達のことは守る!」
「え! ダメだよ。三橋さんまで何を言われるかわからないよ。嫌な思いをするのは僕だけでいいんだから。料理のレシピならメールでやりとりすればいいんだし、僕に学校で話しかけるのはやめておいたほうがいいよ」
「絶対ダメ! 上條くんほど良い人が理不尽な目に遭うなんて絶対におかしい。納得できない」
アヤメの決意はどうあっても変わりそうになかった。ダメ押しのようにアヤメが言う。
「じゃあそういうことで。私、こう見えてめっちゃ頑固だからね。私とアキラくんは友達だよね? 連絡先も交換しているし、料理もいっしょに作ったし。そうだよね? アキラくん。アキラくんもこれから私のことを名前で呼ぶこと! わかった?」
「うん……。ありがとう。アヤメちゃんは優しいね」
「アキラくんのほうが何百倍も優しいから!」
こうして怪我の功名的にアキラには学校でも友人と呼べる存在ができることとなった。しかしだからこそアキラは改めて強く思うのだった。「アヤメちゃんは僕を友達と言ってくれた。だから僕のことで絶対に嫌な思いをさせたくない」。
「帰ったらテシオンに相談してみよう。僕よりは何か良いアイデアを出してくれるかもしれない」。友人が新たにできた喜びよりも、守り抜く決意が勝るアキラであった。
平穏なぼっちライフから波乱の学校生活へ。
アキラとアヤメはどうするのか?
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