ヒデキの本当の気持ちは?
外面だけ良い優等生。ヒデキの黒い部分です。
部活帰りにアキラと会った日、アキラの幼馴染・石井ヒデキはイラついていた。そもそもアキラを蔑む以前にヒデキは彼のことを嫌っていた。
まずアキラのルックスが良いところが気に入らない。ヒデキ自身、イケメンと呼ばれる部類である。しかし幼稚園のころからアキラは「さすがあのお父さんの息子だけあってイケメンだ」と評価されることが多かった。ヒデキも褒められることはあったがアキラほどではない。
さらにアキラはその優しい性格から小さな子たちの面倒見がいい。「優しくていい子だ」と評価されていた。ヒデキも大人から評価されたくて子供たちの相手をしたが、それを見抜くかのように子供たちは「アキラお兄ちゃんがいい」と言って、アキラの元へ向かう。それも気に入らない。
勉強はヒデキのほうができるのに「あれだけ家のことを頑張っていて、それで成績も優秀」とアキラが褒められる。やはり気に入らない。
要するに本来自分に来るはずの評価がアキラに流れているように感じて不愉快だったのだ。「アキラ、お前邪魔なんだよ」。これがヒデキの偽らざる思いだ。
そこでヒデキは一計を案じた。陰でアキラの評価が下がるように根も葉もない噂を流した。「俺は幼馴染だから、腐れ縁で仕方ないところはあるけど、アイツとは付き合わないほうがいいぞ」と前置きしながら、ありとあらゆる悪評を流していたのだ。それがイジメに繋がってしまうと、自分がやっていることも明るみに出るのでそこはじゅうぶん注意していた。5年生で道場を辞めてから付き合いがなくなっているようではあるが、空手の先輩だったという泉マサトが出てこないともかぎらない。そのため「イジメはよくないから、そういうのはやめてほしい。いちおう幼馴染だしさ。でも付き合うのはオススメしない」というような言い方をしていた。それによって「イヤな奴のことを庇うヒデキくんってすごいな」と自分の評価を高めることができたのは嬉しい誤算だった。
中学時代にぼっちが染み付いたのか、高校に入ってからもアキラはぼっちのままだった。前髪で顔を隠すようになり、イケメンであることにも気づかれていない。それもあって誰も積極的にアキラと交流しない。わざわざヒデキが噂を流さずともアキラは寂しい学生生活を送っている(アキラ自身は寂しいとは思っていないが、少なくともヒデキはそう考えている)。手を汚さずともアキラが孤立している状況に、ヒデキはほくそ笑んでいた。しかしその状況に暗雲が立ち込める事態が今日起こったのだ。
ヒデキと美和子がアキラのことを笑っているときに、アヤメがたしなめてきたのだ。
「家のことを頑張っている上條くんのことをそういう言い方するのはおかしいんじゃない? 私もお母さんが不在だったこの一週間家のことをやっていたけど本当に大変だったよ。上條くんはそれをずっとやっているってすごいことだと思う。私は尊敬するな」
大好きなアヤメの言葉にヒデキはショックを受けた。噂では両想いということになっているが、実際はヒデキの片思いでしかなかった。そのアヤメがアキラは評価している。「アキラ、またお前は俺の邪魔をするのか!」
このままではアヤメがアキラと話すようになるかもしれない。そうなると遠からずアキラがイケメンであることにも気づくだろう。アヤメは人を外見で評価するタイプではないが、内面を評価している男子がイケメンだったということであれば話が変わってくる。
「本当に目障りな奴だ」。これは中学時代と同じく自分が手を回すしかないとヒデキは考え始めた。学校内でのポジション的に自分はカーストのトップ。アキラは最底辺。万が一自分が噂を流していることがバレてもどうとでもなる。そう考えたのだ。
しかも中学時代に頭痛の種だった泉は同じ学校にいない。県外の大学に進学しているので、近所で会うこともそうそうないだろう。ただでさえ学校でぼっちのアキラをさらに追い込むには、どのような噂を流すか。そのことを考えながら、ヒデキは醜く歪んだ表情を浮かべていた。
ヒデキはどういうことを仕掛けてくるのか? アキラはどう対処するのか? そしてテシオンは?
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