飲むしかないよね?
昨日はたくさん更新したからでしょうか。とても多くの方が見にきてくださいました。本当にありがとうございます。これからもコンスタントに更新していきますので、もしよろしければ読んでくださると嬉しいです。
その日もカオルは遅くまで仕事であった。終電で家に帰り着くころには疲れがピークに達しており、あとはアキラが用意してくれている晩御飯を食べて寝るだけ。「もういいや、シャワーは明日の朝にしよう」。シャワーを浴びることさえできないくらいに疲れ果てていたのだ。
「ただいま」
そう言ってドアを開ける。当然アキラはもう寝ており「おかえりなさい」という返事は返ってこないのだが、この日は違った。
「カーくん、おかえり」
テシオンが満面の笑みで迎えたのだ。
「アイちゃん、まだ起きてたんだ」
「うん、カーくんに知らせたいことがあって。でも疲れてるみたいだね。明日にしようか?」
「知らせたいことってアキラのこと?」
テシオンがうなずく。
「わかった。そういうことであれば聞きたい。ちょっと待ってて。シャワー浴びてくるから」
そう言い残すとカオルは浴室へ向かう。どれほど疲れていてもアキラのことであれば聞かないといけない。「良い知らせだったらいいんだけどな」。少しの不安を抱えながら、温かいシャワーを浴びて疲れと汗を流していった。
リビングへ行くと、テシオンは料理を温めて待っていた。
「温めてくれたんだ、ありがとうアイちゃん」
「あたしは居候だからね。これくらいはしないと」
そう言ってイタズラっ子のように笑うテシオン。カオルはさっそく本題に切り込んだ。
「それでアキラには友達はいたのかな?」
「いなかった」
テシオンの答えにカオルは悲しくなる。「やっぱりそうか……」。一気に疲れが押し寄せる。このまま食事を摂らずに倒れてしまいたい気分だ。思わずうなだれてしまう。
「今日まではね」
そうテシオンが続けたので、カオルは顔を上げた。
「今日まで?」
「そう」
そこから今日何があったのか。アキラがどれだけ他人を助けていたのか。タカオのこと。久仁子のこと。奇跡のこと。それらをテシオンは一気に話した。
「タカオくんのこと、アキラが関係していたのか」
「知ってるの?」
テシオンが尋ねると、カオルは静かにうなずく。
池森タカオは近所でも有名な不良で、大人たちも手を焼いていた。誰彼かまわず喧嘩を売る。家族以外は敵とでも思っているかのようにトゲトゲしい男の子。朝早くから夜遅くまで仕事をしているカオルは直接会ったことはなかったが、タカオの悪評は耳にしていた。しかしそれがある日を境に人が変わった。他人に挨拶をするようになり、家のことも積極的にやるようになった。以前の悪評が消え去ってはいないものの「生まれ変わったように良い子になった」と評判であった。
「そうか、アキラがなぁ」。カオルはアキラが母・アオイと同じ優しい人間に育っていることが嬉しくてたまらなかった。そしてそのタカオと彼女の奇跡がアキラの友人になったという事実が喜びに拍車をかけた。
「アイちゃん、ありがとう。とても嬉しい報告だ。疲れも吹き飛んだよ」
「カーくん。今夜は祝杯といこうじゃないか!って疲れてるんだよね」
「いや、飲もう!」
そう盛り上がっていると、トイレのために起きてきたアキラが2階から降りてきた。
「父さん、おかえりなさい」
「アキラ、ただいま」
「え? いまから飲むの?」
「あぁ。なんか嬉しくてな」
「良いことあったんだね」
「とても良いことがな」
アキラは仕方ないなぁと言いながら、笑顔でキッチンに向かった。
「おつまみないとダメでしょう? すぐ用意するから待ってて」
当たり前のようにカオルとテシオンのためにおつまみを作り始めるアキラ。
「そういうとこ! そういうとこなんだよ、アキラ。それが久仁子ちゃんが惚れるところなんだよ」。テシオンはそう叫びたかったが、さすがに控えておいた。「あたしもそこまで野暮じゃないからね」。
カオルに久仁子のことを教えている時点でじゅうぶん野暮なのだが、そういう都合が悪い部分には目を向けないのがテシオン。「今日は何が出てくるかな?」。アキラのおつまみを楽しみにしながら、カオルの安堵した表情を見て嬉しくなるテシオンなのであった。
これでカオルもひと安心! テシオンは安心している場合ではありませんが(契約取らないと)。
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