教え上手?
連休中に書き溜めた分を投稿します
「そういえばそんなこともあったね」
昔のことを思い出してアキラが言った。
「でもアレはマサト兄ちゃんがいたからできたことで、僕が役立ったわけじゃないよ」
「何言ってんだよ、上條! どれだけ助けられたと思ってるんだ」
さらに池森は続ける。アキラが助けてくれたのはそれだけではないというのだ。
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池森家に遊びに行く当日、アキラは緊張していた。「どんな格好していけばいいのかな?」。まるで一般家庭にドレスコードが存在するかのように頭を悩ませていた。「失礼にあたってはいけないよね。あと手土産はどうしよう? 父さんに相談しておけばよかった」。
なにしろクラスメートの家に行くのは初めてのこと。アキラは真剣に悩んでいた。「うん、とりあえず学生服で行こう。それならば少なくとも失礼ではないよね」。そう決断して家を出る。道すがら見つけたケーキ屋で焼き菓子を買って、池森の家に向かった。
「おぉ、上條。よく来てくれたな。散らかっているけど、上がってくれよ」
笑顔で池森が出迎えると、アキラは焼き菓子を渡した。「お前は出世する見込みたっぷりのサラリーマンか!」とツッコミつつ「これ弟たちが好きなんだよ」と嬉しそうに受け取ってくれた。
「それでな上條。先に謝らないといけないことがあるんだ。これまでのことをおふくろに話したら、ぜひ上條にお礼したいと言っていたんだ。それでおふくろが手料理を作ることになっていたんだけど、急な仕事が入っていまいないんだ。申し訳ないけど出前でも頼もう」
「そんな気を使わなくてもいいってば」
「そういうわけにはいかねえよ」
2人でそういう話をしていると、池森の弟たちが声をかけてきた。
「ねえ、この人がタカ兄の話していた上條さん?」
そう話しかけてきたのは池森の弟・ユキヒロだった。
「おう! 上條はな勉強もできるし、喧嘩もムチャクチャ強いんだぞ」
「すげえ!」
「ちょっと池森くん、やめてよ」
顔を真っ赤にしてアキラが答えていると、池森の妹・久仁子も声をかけてきた。
「へえ、タカ兄と違って勉強もできるんだね。頭良さそうな顔してる」
「上條と比べられたら、ほとんどの奴は勉強できねえよ!」
そうしたやりとりを「兄弟っていいなぁ」とアキラは微笑ましく見ていた。
「ねえ、久仁子わからないところがあるから勉強、教えてほしい!」
「おい、久仁子。今日は上條にお礼をするために呼んだんだぞ。お前の相手をしにきたわけじゃないんだ」
「え〜」
久仁子が不満そうな顔をしたところで、アキラが口を挟む。
「いいよ池森くん。久仁子ちゃん、僕でよかったら勉強見てみるよ」
「やったー!」
「上條、すまん。助かる。俺には教えられないからさ」
「いいよ」
笑顔でそう答えると、さっそく久仁子の宿題を手伝うアキラ。しばらくすると久仁子が歓声を上げた。
「タカ兄! 上條さん、めちゃくちゃ教えるの上手だよ。これまで全然わからなかった問題、解けるようになっちゃった」
「さすがは上條だな」
「久仁子ちゃんの理解力がすごいんだよ」
「上條さん、僕にも教えて」
「はいはい。2人ともどれがわからないの?」
そうして池森の兄弟に勉強を教えていたのだが、気づけば数時間が経過していた。弟、妹が口を揃えて空腹を訴え始める。
「タカ兄、お腹空いた」
「タカ兄、私たち勉強頑張ったから美味しいもの食べさせて」
仕方ないなと笑いながら池森はアキラに尋ねた。
「上條、出前ラーメンでいいか?」
「うん。なんでもいいよ」
そのとき、テーブルの上に出された食材にアキラの目が止まった。
「あぁ、これか。おふくろが上條に出すはずだった料理の材料だよ」
そう池森が教えると、久仁子がほっぺを膨らませて言う。
「あ〜あ、今日はハンバーグ食べられるはずだったのに」
「仕方ないだろう。おふくろ仕事なんだから」
「だって〜」
あまりにも久仁子が残念そうなので、思わずアキラは言ってしまう。
「ハンバーグ。僕、作ろうか?」
「「「え?」」」
兄弟3人の見事なハーモニーが部屋に響いた。
教え上手で料理上手。アキラは池森家の胃袋を鷲掴み?
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