家に?
アキラ、意外と有能説
「ハァハァ……」
「大丈夫、池森くん?」
「それはこっちのセリフだ。お前が3年生の教室に向かったと聞いたから、こうやって来たんだよ。なんでお前が3年生に話をしに行ってるんだ?」
「だって池森くんがまた怪我したら……」
そのときだった。池森に嫌らしい感じで声をかけてくる男がいた。
「池森じゃねえか。昨日あれだけやられたのに3年の教室に来るとか、頭おかしいんじゃねえのか? またぶっ飛ばされたいのかよ」
「藤田……」
「ふ・じ・た・さ・ん、だろう? マジぶっ飛ばすぞ」
池森と藤田という男のやりとりを見ていた泉が声をかけようとしたとき、アキラが口を開いた。
「あなたが池森くんに嫌がらせしているという3年生の先輩ですか?」
「誰だ、お前? 余計な口出しするといじめちゃうぞ」
泉は「これは面白いことになった」とその場を静観する。
「なぜ池森くんを標的にするんですか? 聞きました。あなたの好きな女の子が池森くんを好きだから嫌がらせしているんですよね。それでその女の子はあなたがそういうことをしていたら、あなたのことを好きになるんですか?」
「は? なんだテメェ」
そう言ってアキラに殴りかかる藤田。「危ない!」。そう池森が思ったときはもう遅かった。大振りのパンチを空手の外受けでいなしたアキラの拳が藤田のボディに深く突き刺さっていた。
「オエ……」
体をくの字にして情けない声をあげる藤田にアキラは冷静に言い放つ。
「僕のクラスメートにこれ以上かまわないでください」
「お前、3年に手を出してどうなるかわかっているんだろうな?」
悔しそうに呻く藤田に声をかけたのは泉だった。
「で? どうなるんだ? 惚れた女に相手にされないから下級生に嫌がらせをするような情けない奴の味方をする男、3年にはいないと思うけど?」
「泉……くん」
「しかもお前、この池森くんという子に殴られた腹いせに仲間引き連れて仕返しに行ったらしいじゃねえか。本当に情けないな。俺はアキラと池森くんに付くぞ。また仲間を連れてくればいいじゃん。俺とアキラが加勢して勝てるような仲間がお前にいるかは知らないけどな」
「そんな……」
事の次第を呆気にとられて見ていたのは当事者の池森であった。「なんだ? なぜ上條が泉先輩と仲良いんだ? そして上條、強いんだけど」。池森の疑問にも答えるような形で泉が藤田に言う。
「アキラはな、俺の弟みたいなもんなんだよ。それに昔、いっしょの道場に通っていたころは3本に1本は俺から取ってたくらいだ。こいつは強いぞ? さっきのいなしで俺も何度もやられたもんだ。お前やお前の仲間では歯が立たないぞ。それに万が一アキラが不覚を取るようであれば、俺が黙っちゃいない」
卑怯な手でも使わないと勝てないだろうがなと泉は付け足して言った。
泉の言葉に驚きながら落胆する藤田。その藤田にアキラは追い討ちをかけるように言った。
「藤田先輩。池森くんにはもうかまわないと約束してください」
「わかったよ。約束する」
力なく藤田が答えると「ありがとうございます」とアキラは返して池森のほうに向き直った。
「池森くん、教室に帰ろう」
「あ、あぁ」
そして二人は泉に頭を下げると自分たちの教室へと帰っていった。
「上條、お前体育の成績良くないよな? あれはわざと運動できないフリをしていたのか?」
「違う、違う! 僕、球技が絶望的に下手なんだよ。体育の授業って球技やることが多いじゃない? それにダンスのセンスもビックリするくらいないから」
そう言って笑うアキラ。「こいつは弱くてぼっちなのではなくて、ぼっちでも気にしない強さがあるんだな」と池森は思った。
「とにかく、ありがとうな。本当に昨日から助けられてばかりだな。この恩は一生忘れないよ」
「池森くん、大げさだよ」
そう照れたように笑うアキラ。ふつうならばここから仲良くなるはずだったのだが、それは池森が転校することで叶わなかった。
一週間後のこと。アキラは池森に声をかけられる。
「上條、じつは俺引っ越すことになったんだ」
「え! そうなの?」
「おふくろの実家がある田舎に行くことになってな。それでお前に恩返しできないままというのもアレだから……」
「そんなの気にしなくていいよ」
そうアキラは返したが、池森は言いにくそうにモジモジしながら言葉を続けた。
「それで! 大したことできないんだけど、俺の家に遊びに来ないか? 飯くらいご馳走させてくれよ」
「え! 池森くんの家に? 僕が? 行ってもいいの?」
初めてクラスメートから自宅に遊びに来るよう言われたアキラは嬉しい反面、「本当に行ってもいいのかな?」と思うのであった。
友達の家に初めて遊びに行くのってドキドキしますよね。
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