恩人って。何かしましたかね?
アキラ、恩人編
「アキラ遅いな」。かぼちゃの里を食べながら、アキラの帰りを待つテシオン。自分の仕事はすっかり忘れている様子だ。「無理に作らせるものではないけど、カーくんのことを考えると友達問題にどう落としどころを見つけたものか……」。テシオンがそう考えていると、玄関から人の気配がした。「帰ってきたか」。アキラを出迎えに行くテシオン。
「おかえり、アキラ……ってその子たちは?」
「ただいまアイちゃん。中学時代のクラスメート、池森くんと彼女の奇跡さんだよ」
テシオンは驚きを隠せなかったが同時に嬉しかった。
「なんだよアキラ、友達いるんじゃん!」
しかしアキラはどこか困ったような感じであった。すると池森が口を開く。
「上條が友達だなんてとんでもないですよ」
アキラはそりゃそうだよなと思う。「僕と友達だなんて池森くんはイヤだよね」。しかし次に池森が口にしたのはアキラの考えとは大きく違うものだった。
「上條は俺の恩人です。どんなに感謝しても足りないくらいの大恩人です!」
「え?」
池森の言葉にアキラは驚くと同時に疑問が頭に浮かぶ。「僕、何かしたっけ?」。
「そうか、恩人か。友達ではないんだな」
テシオンがそう言うと、池森はさらにアキラが驚く言葉を口にする。
「俺なんかが友達だなんて、上條に失礼ですよ」
いつも自分が他人に対して考えているようなことを池森が言ったので、アキラは心底驚いた。テシオンはなぜか嬉しそうだ。驚きで固まっているアキラに池森が耳元で小さな声を出した。
「なぁ、上條。この姉さんは誰なんだ?」
テシオン、中身を知らなければ超絶美人だから気になるんだろうな。でも奇跡さんの目の前で他の女性を気にして大丈夫なのかな?とアキラは心配したが、池森はまったく違う見方をしていた。
「威圧感、半端ないんだけど。俺、喧嘩でビビったことは一度もないけど、この姉さんは怖いわ」
腐っても悪魔ということであろうか。あまりのアホっぷりを散々見てきたアキラは恐怖を感じていなかったが、知らない人にとってテシオンは恐怖の対象のようだ。
「お母さんの親戚でアイちゃん。仕事の都合でしばらく家に住むことになったんだ。そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」
「そうか……」
池森はそれでも恐怖感があるようだが、奇跡は「キレイな女性だねぇ」と呑気に見惚れている。「そのうち慣れるでしょう」。そう思いながらアキラは池森に疑問をぶつけた。
「池森くん、さっき僕を恩人と言っていたけど。僕、何かしたかな?」
「上條! あれだけのことをしてくれたのに忘れたのか?」
恩を着せるでもなく、本当に不思議そうに尋ねてくるアキラに池森はビックリした様子を隠せなかった。
二人の関係はアキラと池森が中学2年生だった3年前に遡る。
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その日もアキラは夕飯の献立を考えながら家路を急いでいた。すると路地裏からうめき声が聞こえてきた。「なんだろう?」。気になったアキラはその場所へ足を向ける。
「え! 池森くん?」
そこにはクラスメートの池森が怪我をしてうずくまっていた。
「大変だ! ちょっと待ってね」
「お前……クラスの上條か?」
「僕のこと覚えていてくれたんだね」
「クラスメートだから当たり前だろう」
「いったい何があったの?」
「たいしたことじゃねぇよ」
なんでも3年生の女子で池森のことを好きな子がいるらしい。その子に惚れている3年生のヤンキーが池森に何かと嫌がらせをしてきていた。最初は「先輩に逆らうのは……」と大人しくしていたのだが、今日ついに爆発してその3年生を殴ってしまった。これが学校であったこと。
その後、その3年生は仲間を引き連れて5人がかりで池森をこの路地裏で痛めつけたとのこと。みっともない男の嫉妬で池森は標的にされたのだ。
「複数で襲いかかるなんて酷い。とにかく怪我の手当てをするからちょっと待ってて」
アキラの申し出を池森は断る。
「俺に関わらないほうがいいぞ。気持ちだけありがたく貰っておくよ。お前までそいつらに目をつけられたらどうする? それに先公たちも俺と付き合いがあることを知ったら良い顔しねぇだろう」
そう断る池森をアキラは一喝したのだった。
男の嫉妬は本当に見ていられないものです。
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