友達はいるよね?
飲むと涙もろくなる。カオルはそんなタイプです。
「ふわぁ」
夜が深くなってきてアキラは大きなアクビをした。
「じゃあ僕、そろそろ寝るよ。父さんとアイちゃんもほどほどにね」
「は〜い、おやすみアキラ。ご飯もおつまみも美味しかったよ。ありがとう」
「父さんたちはもう少しだけ飲んでから寝るよ。おやすみアキラ。ありがとうな」
テシオンとカオルの礼を聞きながら、アキラは階段を登って部屋へと向かった。
残ったカオルとテシオンはそこから世間話や仕事の話をしながら飲み続けた。テシオンの失敗談、罰の話(当然魔界のことは伏せてアレンジを加えているが)にカオルはお腹が壊れるのではないかというくらい笑った。
「アイちゃん、その会社ヤバイね」
「でしょう? 減給とかならわかるけどさ。マジあり得ん」
そうやってひとしきり盛り上がっていたが、どこかカオルの表情が暗いことにテシオンは気づいた。
「カーくん、どうしたの? 何か悩みでもあるの?」
「うーん。アイちゃんになら話してもいいかな。アキラのことなんだけど」
「アキラがどうした?」
あれだけ優しい自慢の息子、聞けば学校の成績も優秀だという。何を不安に思うことがあるのかとテシオンは不思議に思った。
「中学校くらいからかな。アキラの友達が家に来たことがないんだ。あいつ、仲良しの友達っているのかな?と思ってさ」
「あれだけ優しい子だよ? そりゃ仲良しの1人や2人いるんじゃないの」
「だといいんだけど……」
カオルの心配は的中していた。アキラには友人と呼べる人間は1人もいなかった。かつてはヒデキがそうであったが……。
「もし友達がいないとしたら、それっていまの生活が関係しているんじゃないかと思ってさ。アキラは学校が終わるとすぐ家に帰って、家事、掃除、料理とやってくれているじゃない? 放課後遊びに誘われたとしてもアキラは行けない。それが続くと誰も声をかけなくなるだろう。そういうのが原因で友達ができないのだとしたら……。家のことを任せきりにして甘えている俺は父親失格だ」
そう言って涙を浮かべるカオル。酔いも手伝っているのだろう。テシオンはカオルのアキラに対する深い愛情に「親っていいもんだな」と思いながら答えた。
「カーくん、それは考えすぎだよ。アキラは本当にカーくんのことを大切に思っているのがあたしにもわかる。今日、アキラの家事なんかを見ていたんだけど、たぶんカーくんの顔を思い浮かべながらやってるんだよね。お父さんのために!って。決してイヤイヤやらされている感じではなかった。やるのが当たり前って感じ」
テシオンからそう聞いて、改めてカオルはアキラを愛しく思った。「俺にはもったいない息子だ」と。
「それにさ。あたしは思うんだけど、本当の友達ならそうやって家のことを頑張る人のことを思いやるもんじゃないのかな? 付き合いが悪いからといって交流しなくなるような奴は友達でもなんでもないよ。そんなの人生に必要かな? 少なくともあたしはそんなのと友達になるのはお断りだね! アキラにきちんと向き合って付き合ってくれる、そういう友達が1人でもいればいいんじゃない?」
「そうかな……」
テシオンの言葉に納得する部分を見つけたようでもあるが、それでもまだ不安そうなカオルを見てテシオンは言い切った。
「わかった! 明日あたしがアキラと話してみるよ」
「お願いできるかな?」
「任せておきな。厄介になるんだから、ちっとは役に立たないとね」
「念のため言っておくけど、アキラはああ見えて思春期だから質問の仕方には気をつけてね。さすがにデリケートな部分だからさ」
「あんたねぇ。あたしを何だと思っているのさ? ちゃんとその辺は気をつけるよ」
「そうか。ありがとう、アイちゃん」
「おう! 大船に乗ったつもりでいたまえ」
「沈まないよね?」
同じようなやりとりをアキラとしたことをテシオンは思い出して「あんたたち、やっぱり親子だねぇ」と笑った。
そこでお開きとしてそれぞれの寝室へと向かったのだった。
アキラの交友関係にどう切り込むのか? テシオンの秘策は?
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