落ちこぼれ悪魔とブラック企業?
『週刊少年ジャンプ』で連載されていた光原伸先生の「アウターゾーン」から着想を得て書き始めました。毎回1,500文字程度で更新していこうと考えています。
拙い文章ではありますが、ご一読いただけたら嬉しく思います。
深紫に染まる空。時刻によって空模様が変わるわけではなく、魔界の空はいつもこんな感じだ。その空の下、足取り重く進む女性がいた。
「あぁ、また失敗しちゃったなぁ」
そう呟きながら鉛のように重い足を運んでいく。彼女の名前は“テシオン”。女性型の悪魔である。
悪魔の目的は1人でも多くの人間を魔界(人間世界でいうところの地獄)に引きずりこむこと。引きずりこむとはいっても、肉体のままではなく魂を連れてくるのだ。そのために「悪魔の契約」というものがある。
願い事を3つ叶える代償として魂を提供するという、ありがちといえばありがちな契約。願い事を2つだけにしておけば契約は完了とはならず、魂を取られることはないのだが人間の欲望には際限がないもの。頭では理解していても多くの人間が魔界に連行されているのが現状だ。
なぜ悪魔が多くの魂を魔界に連れてこようとしているのかテシオンはハッキリと理解しているわけではないが、来るべき天上界(人間の認識だと天国)との戦いに向けて雑兵を少しでも多く準備しておくためだと耳にしたことがあった。人間の魂はよほど高潔なものでないかぎり、悪魔や天使、神のように強いものではない。それに高潔な人間ほど天上界に招かれるので、魔界に来る魂は良くても兵隊長クラス。とても一線級の天使に比肩するものではない。ましてや神の前だと一瞬で消滅させられてしまう。それでも天使たちの足止めくらいには使えるということで、多くの愚かな人間たちが魔界に連れてこられている。
そんななか、まだ1人の魂も連れてくることができていないのがテシオン。要するに落ちこぼれ悪魔なのだ。これまで665人の人間と契約を結んだものの誰一人として連れ帰ることはできていなかった。悪魔であるにも関わらず人間に騙されたり、相手の境遇に同情して願い事だけ叶えて帰ってきたり……。とても悪魔とは思えない悪魔。狡猾さがまったく欠けている悪魔。それがテシオンであった。
そして悪魔の不文律として「悪魔の数字である666までに必ず成果を出さなければならない。成果が出なかった場合、苛烈な処罰が待っている」というものがある。1人目の失敗などは叱責されるだけですむのだが、失敗した人数が増えれば増えるほど厳しい罰を与えられる。
10人目の失敗では、魔界の名所でもある針富士(日本の富士山のような見た目だが、登山道は鋭い針でできている)の山頂まで10往復という罰を与えられた。靴禁止、足を強化する魔法禁止。そのため足の裏はズルむけ終わったころには酷い有様だった。
20人目の失敗では、魔界有数の湖であるチクトリア湖(汚れた血で満たされている)に20日沈められた。口いっぱいに血の味が染み込み、苦痛は少ないものの気持ち悪いことこのうえない処罰。
そうして迎えた650人目の失敗では、魔界の一番人気であるテーマパーク、アクマーランドで絶叫マシーンに乗せられた。これだけだと楽しそうに聞こえるが、安全装置なしでの搭乗である。「あのときはすごい勢いで魔界の最果てまで飛ばされたなぁ」とテシオンは思いだしていた。
「最初はなかなかのホワイト企業だと思ったのに、どんどんブラック企業の本性を表してくるんだよなぁ」。そんなことを考えていると「ん? ブラック企業ってなんだっけ?」と疑問が頭をもたげた。「どこかで聞いた気はするんだけどな。人間界のテレビとかいう箱から流れていたんだっけ?」
そんなどうでもいいことを考えているうちに、魔界の庁舎(悪魔の長であるサタンの居宅でもある)コージー城にテシオンは到着した。これから上司のアスモデ部長との面談が控えているのである。
これからテシオンの活躍(迷走?)が始まります!
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