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2、烏

 ここに来てから数日で私は力を酷使しすぎてしまった。

 巫女の力をみんなに証明するためと、昨日の討伐作戦のために雨を降らせたからだ。

 そのせいか、だるさで朝起きれずにいた。


「おい。入るぞ」


 ジクロが部屋に入ってくる。


「大丈夫か? 朝飯に現れねぇから持ってきたが。食えそうか?」

「ありがとう。ちょっと疲れちゃっただけ」

「そうか」


 そう言うとジクロはベッドの横の椅子に座り、芋の皮を剥いてくれる。


 ジクロは目つきも口も悪いが、頼れるみんなの兄貴という感じのようだ。

 私が街に出る時の護衛も主に担当してくれることになっている。


「ジクロは食べたの?」

「あぁ。ほら、食え」

「んむぉ」


 ジクロは私の口に芋をつっこんだ。

 そのままもぐもぐと食べる。

 ジクロは子供を見るような優しい目をして笑っている。


 弱っているときにお世話されるとなんだか懐かしく温かい気持ちになる。


「お母さんみたい⋯⋯」

「あ?なんだ?ったくガキみてぇなやつばっかり増えていきやがる」


「ジクロは戦士になってから長いの?」

「そうだな。もう20年以上だな」

「そんなに小さい時からなんだね」


 戦士って早くても10代前半位に入団するイメージだった。


「あぁ。テオやカルバやニトロも年は近いが、俺の方が先にいた。まぁあいつらは俺のこと先輩なんて微塵も思っちゃいないようだがな」


 まだみんなとはそんなに付き合いは長くないけれど、何度か楽しそうに話しているのを見かけた。

 私もいつかみんなと仲良くできたらいいな。


 なんて考えながらふとジクロを見る。

 窓から入ってくる朝日にジクロの髪と羽根が照らされて輝いている。


「そういえば、黒い羽根の人ってジクロ以外に見かけないよね」


 私は素朴な疑問をぶつけてみた。


「あぁ。似たような色は居ても、ここまで黒いと珍しいのかもな」

「カラス⋯⋯」

「なんだ?」


「私の世界には鳥って言う生き物が居てね」

 

 私は紙に絵を描いて見せる。


「羽根が生えてて、足はこう、くちばしでご飯を食べて⋯⋯こんな感じ。で、カラスって言う鳥は羽根が真っ黒なの。頭が良くて⋯⋯鳴き声はカァカァ」


「俺がカラスに似てるってか?」


「カラスは神の使いとも不吉の象徴とも言われているんだけど、何より驚くのはもともとは色が白かったらしい」 


「あ? なんで途中で色が変わるんだ?」


「昔、フクロウの染め物屋さんが黒く塗ったみたい。フクロウというのはこういう感じの鳥で⋯⋯他の鳥は明るい色や模様を塗ってもらったんだけど、カラスは目立ちたいから他には無い色を頼んだんだって。黒は全部の色を混ぜた色だから特別な色」


「俺だってそれなりにこの色が気に入ってる。だが、たまに怖いとか言われるな。まぁ女は青とか緑とか明るい色が好きらしいな」


「そうなんだ。私はこの羽根の色が好きだけどな⋯⋯」


 私はそっと羽根に手を伸ばす。

 ちょっと温かくてふわふわしてて気持ちがいい。


「おい、勝手にいじくりまわすな」

「あっ、ごめんなさい」

「ったく。くすぐったいんだよ」


 そう言いながらジクロは私の手から逃れるように羽根をバサバサさせる。


「触られると感覚があるの? ねぇどんな感じなの?」

「感覚があるに決まってんだろう。何言ってんだ変態が」


 ジクロは顔を赤くしている。


「お前ももう食べ終わったんなら休んどけ。またすぐに働いてもらうからな」


 そう言うとジクロは食器を持って足早に部屋を出ていった。


 ジクロの羽根をなで回したときに抜けてしまったのか、床にはジクロの羽根が落ちている。


 朝日に透かして見るとキラキラ光っている。その光は色んな色が集まっているように見える。


 こんなにきれいなのにね。


 私はなんとなく羽根を読みかけの本に挟んだ。



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